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イベント情報米国のエネルギー×ブロックチェーン最前線

米国のエネルギー×ブロックチェーン最前線

【カテゴリ】 エネルギー 省エネルギー

【開催日】2018.10.18

【開催地】東京都


【講師】
クリーンエネルギー研究所 代表
阪口 幸雄(さかぐち ゆきお) 氏

【重点講義内容】
9月6日に北海道を襲った地震の直後に、道内全域がブラックアウトに襲われた。複合要因があったと思われるが、一番の原因は北海道電力が大規模集中型発電に頼りすぎたためと思われる。大規模集中型の電力網は効率の良さと反面にこのよう脆弱性のリスクを包含しており、そのバランスが問われるようになってきている。米国でも、ハリケーンや冬季のブリザード時の電力網の分断が大きな問題になっており、商業施設のマイクログリッド化と、家庭におけるエネルギー貯蔵装置の設置が急速に進展している。個人の生活・民間企業の活動・自治体を含む公共サービス全体での「安全・安心の維持」のための電力網の強靭性(レジリエンシー)が強く望まれるのは米国でも日本でも同じである。
同時に、米国にとって「エネルギー政策」は「国家安全保障上の問題」であり、また「雇用創出」でもある。中近東を含む国外の一次エネルギーへの依存を減らすことは米国にとっての大きな命題である。大統領がトランプになり、「パリ協定からの離脱」等で、クリーンエネルギーには逆風が吹いているような報道が日本では散見されるが、実際問題としては、「エネルギー政策は連邦政府よりも州政府が主導」しており、またエネルギーリソースの多様性は依然として連邦政府の大きな課題であり、大きな後退は感じられない。
例えば、ハワイ州は、2045年までに再生可能エネルギー発電を100%にする法案を2015年に州法化した。また、カリフォルニア州も同じく2045年までにGHGを排出しないクリーンなエネルギー発電を100%にする法案が今年8月に州議会を通り、9月になって州知事が署名し州法化された。
両州のように、州法で定める再エネ比率(RPS)の段階的な引き上げが「飴と鞭」となり、電力会社の再エネ化を過去10年間にわたりドライブしてきたが、近年では「再エネの方が安いから」という経済的理由による採用も増えてきている。ここ数年で、「大規模集中型」による再エネ電力卸値が1kWhあたり5セントと、ガス火力と同程度に下がってきている。
「太陽光発電パネルへの報復関税」が決まったり、「ITC(Investment Tax Credit)が2022年に10%に下がる」等、太陽光発電ビジネスに不安要素があるのも事実であるが、先進10州のクリーンエネルギー化への取り組みは、より加速されている。
問題は「再生可能エネルギー発電」と言っても、「大規模集中型」と「分散型」に大きく分かれ、これらはその性格や利点・欠点が異なり、同一で論じるわけにはいかないが、これらがごっちゃに語られることが多いことである。
始めに述べたように、電力網の強靭性(レジリエンシー)を維持するためにはどちらかだけではダメで、バランスが大事になってくるが、分散電源管理は思った以上に難しい。「ブロックチェーン」も結局は分散帳簿技術であり、夢のツールではない。これらをビジネスのタネにすべく、米国では目まぐるしくマーケットが変転し、「雨後の筍」状態の「エネルギー関連ブロックチェーンスタートアップ」が名乗りを上げるが、はたして数年後にはどういう状況になっているのであろうか。
また儲かるかどうかは別問題であるが、アグリゲーター育成の方向性も定まってきた。アグリゲーションビジネスは、その「技術開発とビジネスモデル」がキーであるが、同時に投資と収益性が問われる。ブロックチェーンをアグリゲーションビジネスに使う会社も現れ、カリフォルニア州のデマンドレスポンスオークションで大規模に採用された。アグリゲーションビジネスは、今後伸びるのは確実としても、良い面ばかりではなく、ビジネスの収益性という点で苦労している会社も多い。
残念ながら日本企業は周回遅れの様相を呈しており、これらの施策の意義やビジネスインパクトはおろか、そもそも米国のエネルギー事情がどういう方向に進もうとしているかさえ把握できていない。
このセミナーでは、上記の再生可能エネルギー増加に伴う問題の解決策としてここ数年大きな注目を集めている「DERを統合するアグリゲーションビジネスとデマンドレスポンス」、「エネルギーのデジタル化」、「コネクテッドデバイスの動向」、「勘違いされているブロックチェーン」、「ブロックチェーンのエネルギーマネージメントへの適用」に焦点を当て、実例を交えながら、細かく解説する。4時間という短い時間であるが、上記の内容について質疑応答を入れながら内容の濃いセミナーにしたい。

1.米国におけるエネルギー政策
 (1)再生可能エネルギーの動向
 (2)容量マーケットと、
  アンシラリーサービスマーケットの動向
 (3)カリフォルニア州とハワイ州の再エネ発電の動向
 (4)バランシングマネージメント
  (アンシラリーサービスの動向)
 (5)いろいろなレベルでのエネルギー貯蔵
 (6)温暖化ガス削減シナリオ
2.「大規模集中型」と「分散型」の再エネ発電
 (1)そのメリットとデメリット
 (2)そのバランスはどうあるべきか
 (3)「分散型」は今後どのように進化するか
3.デマンドレスポンス
 (1)デマンドレスポンスとは
 (2)米国におけるデマンドレスポンスの状況
  (PJM、カリフォルニア州、ハワイ州)
 (3)伝統的なデマンドレスポンスと近年注目を集める
  先進デマンドレスポンス
 (4)デマンドレスポンスアグリゲーションビジネスの状況
 (5)デマンドレスポンスに
  ブロックチェーンを用いるスタートアップ
4.コネクテッドデバイスの状況
 (1)スマートサーモスタットは着実に伸びている
 (2)AIスピーカーは家庭内ハブになるのか
 (3)家庭内のエネルギーの約半分を占める
  熱関連機器をどう制御するか
 (4)電力網につながる家電デバイス
 (5)サービスビジネスをどう推進するか
  (ハードの商売は厳しい)
5.エネルギーマネージメント
 (1)家庭内エネルギーマネージメント(HEMS)の動向
 (2)需要家の期待はどこに
 (3)大手のIT会社による囲い込み
 (4)エネルギーのデジタル化とエネルギーマネージメント
 (5)エネルギーはゼロサム
6.ブロックチェーンとは
 (1)そもそもなぜブロックチェーンなのか
 (2)4つの階層を分けて考える
 (3)仮想通貨とエネルギーマネージメントは違う
7.ブロックチェーンとエネルギー
 (1)エネルギー向けブロックチェーンを目指す数多の会社
 (2)ブロックチェーンのエネルギーマネージメントへの適用
 (3)エネルギー向けブロックチェーンの4つのコンソーシアム
 (4)ブロックチェーンはハイプ(過度の期待)か
8.ブロックチェーンのエネルギーへの適用具体例と今後の動向
 (1)米国における電力会社とブロックチェーンスタートアップとの提携例
 (2)4つのUse Case
 (3)まずはアカウンタント(会計処理)から
 (4)ブロックチェーンをPeer to Peerで使のはまだだいぶ先
 (5)ブロックチェーンの米国における実証実験例
9.ブロックチェーンの考え方は
 (1)BAAS(Block Chain As A Service)とは
 (2)仮想通貨とエネルギー
 (3)何をトークン化するのかがキー(kWhを超えて)
10.まとめ
 (1)電力システムの将来像はどうあるべきか(Utility 4.0)
 (2)日本はこれらの流れから何を学び、どうビジネスに結びつけるか
11.質疑応答・名刺交換

【講師プロフィール】
阪口 幸雄(さかぐち ゆきお) 氏
シリコンバレー在住の著名コンサルタント。米国のクリーンエネルギーと、日本のビジネスへの影響にフォーカスしたコンサルタント会社の代表をつとめる。シリコンバレーを中心に、エネルギー問題の定点観測を長期間行い、今後の動向と日本企業の対応についてのきわめて明解なビジョンを持つ。
専門分野は、ブロックチェーン、エネルギー貯蔵、発送電分離、デマンドレスポンス、分散電源管理、太陽光発電、等。日本の大手エネルギー企業、日本政府機関、大学等のアドバイザーを多数務める。
日立(日本と米国)にて17年間最先端の半導体の開発に携わった後、そのビジネス経験や物性の知識を活用すべくエネルギー分野に。シリコンバレーに20年以上在住。最近はカリフォルニア・ハワイ・日本の3拠点生活を送る。
ホームページ http://www.technology4terra.org
「日経エネルギーNext」に「シリコンバレー発、電力Biz」を連載中
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/112900154/113000002/

【登録日】2018.09.14

登録者情報

【登録日】 2018.09.14

【登録者】新社会システム総合研究所

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