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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
エネルギーの安定供給やそのコストは重要ですが、エネルギー計画には社会を持続させる観点も非常に重要
技術としては既にある。ないのは、技術を活用するインフラ
再生可能エネルギーを将来の基盤エネルギーにするというビジョンが肝心
【1】二酸化炭素回収貯留(CCS)
 化石燃料の燃焼で発生する二酸化炭素を大気から分離・回収し、地中がもつ炭素貯留能や海中がもつ炭素吸収能を活用し封じ込める技術。英語の頭文字をとり「CCS」、あるいは「炭素回収貯留」とも呼ばれる。
【2】コンバインドサイクル発電
 ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせる発電方式。ガスタービンを回し終えた排ガスの余熱で水を沸騰させ、蒸気タービンにより発電する。
【3】コージェネ
 「コージェネレーションシステム」とは、熱源より電力と熱を生産し供給するシステムの総称で、一般に「コージェネ」と呼ばれる。内燃機関を用いる方法、蒸気ボイラーおよび蒸気タービンを用いる方法、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて用いる方法に大別される。
【4】解列
 電力会社の電力系統において、発電・変電・送電・配電から発電設備を切り離すこと。

No.033

Issued: 2014.11.11

第35回 倉阪秀史千葉大学大学院人文社会科学研究科教授に聞く、エネルギー政策の現状と今後の課題・展望[1]

実施日時:平成26年10月15日(水)10:30〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

エネルギーの安定供給やそのコストは重要ですが、エネルギー計画には社会を持続させる観点も非常に重要

倉阪 秀史(くらさか ひでふみ)さん
倉阪 秀史(くらさか ひでふみ)さん
環境経済学者。三重県伊賀市出身。東京大学経済学部卒業。
現在、千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。環境マネジメントシステム実習、環境経済論、環境政策論、政策・合意形成入門などを担当。
1987年から1997年まで環境庁(当時、現環境省)に勤務。環境基本法、環境影響評価法などの施策に関わる。1994年から1995年まで、米国メリーランド大学客員研究員。1998年から千葉大学法経学部経済学科助教授、法経学部総合政策学科教授を歴任、2011年より現職。

大塚理事長(以下、大塚)―  本日は、EICネットのエコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。倉阪さんは、長年環境問題に携わり、とくに環境経済学の視点からさまざまな政策提言をなされておられます。福島の原子力発電所事故以来、再生可能エネルギーの活用をはじめ、エネルギー政策が日本はもちろん世界でも最重要課題になっています。本日は、エネルギー政策の現状と今後の課題や展望についてお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、本年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画第四次計画を、倉阪さんはどのように捉えておられますか。

倉阪さん―  第四次計画は、原発を重要なベース電源として位置づけることで議論を呼びましたが、私が問題と思うのは、経済性が色濃く出されたことです。エネルギーの安定供給は重要ですし、供給するコストも重要なのはそのとおりですが、エネルギー計画には社会を持続させる観点も非常に重要なのです。安定供給とコストだけを考えると、石炭をたくさん燃やせばいいという結論に傾いてしまいます。実際、日本で石炭火力の計画が目白押しの状況が生まれています。これは、おそらく誤りです。温暖化対策という世界全体の流れに逆行しています。

大塚―  石炭火力発電を減らそうと、アメリカのオバマ大統領も主張していますね。

倉阪さん―  IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書でさまざまな知見が提供されています。火力発電に対してはかなり否定的で、もし入れるのであれば二酸化炭素回収貯留(CCS)【1】を同時に行う必要性を強調しています。二酸化炭素回収貯留で目標を達成しようとするとコストが高くなる上に、日本には、苫小牧で実証実験をはじめてはいるものの、実用化できるほど地下に貯留できる場所がないのです。

大塚―  原子力についてはいかがでしょう。

倉阪さん―  原子力発電については、基本的に「つなぎの技術」であることをまず押えないといけないと思います。

技術としては既にある。ないのは、技術を活用するインフラ

大塚― 持続性という観点を踏まえ、今後の見通しを伺いたいと思います。

倉阪さん―  第四次計画では、エネルギーミックスをどう具体化するかがまだみえていませんが、私は持続可能なエネルギー政策は可能と考えています。3つの方策をあげることができます。
第1は省エネで、経済的な効果もある選択肢です。省エネを進め、少なくとも2030年には電力消費量を4分の3くらいまで減らすることは十分可能なはずです。
第2は化石燃料の有効利用です。化石燃料を使うなら、熱としても使うことです。現状はエネルギー投入量の3分の1くらいしか使っておらず、あとは排熱されているのですよ。火力発電でも、天然ガスのコンバインドサイクル発電【2】による発電所をつくれば、発電効率を従来型の40%から60%くらいまで引き上げることができます。コージェネ【3】も化石燃料の有効利用の一環で、需要地に近いところで発電し、電力とともに熱を活用するのです。大事なのは、「つなぎの技術」として、化石燃料を有効利用する社会インフラを今の段階でつくることです。
第3が再生可能エネルギーの活用です。再生可能エネルギーの安定供給には、送電線の敷設や、エネルギーを水素として貯める蓄熱などの技術開発が必要です。20年後くらいには再生可能エネルギーに頼ることになるのですから、今からそのためのインフラつくりを進めながら、再生可能エネルギーを最大限に入れる必要があります。

大塚―  再生可能エネルギーの有効利用のための技術開発は、どの程度進んでいるのでしょうか。

倉阪さん―  技術としては既にあります。何がないかというと、技術を活用するインフラなのです。社会インフラが欠けているのです。熱の有効利用についていえば、日本の都市には熱導管が敷設されていません。ヨーロッパでは街をつくるときにエネルギーセンターをつくり、熱導管で結び、温水を供給して冬の暖房に使うようにしています。また、日本の送電系統は電力会社により、狭い国土なのに沖縄を除き9つに分割されているのです。ようやく電力自由化を前に、電気供給のシステムの統一化が議論されはじめた段階です。

北海道寿都町の風力発電
北海道寿都町の風力発電

新潟県松之山温泉の温泉発電
新潟県松之山温泉の温泉発電


再生可能エネルギーを将来の基盤エネルギーにするというビジョンが肝心

長野県飯田市の太陽光発電
長野県飯田市の太陽光発電

大塚― 社会インフラの整備とそのための政策が問題ということでしょうか。

倉阪さん―  そうですね。今注目されている、再生可能エネルギーの買い取り制度に上限を設けようとする九州電力や東北電力の主張について、送電網と関連づけてお話ししましょう。現在、地域間連系送電網は九州と北海道で十分ではありません。東北については、東北電力が現在の送電網を東京電力と一体運用すれば問題ないはずです。九州電力はこの点で不利で、今計画されているメガソーラーでつくられる電力をすべて買い取ると域内での送電容量を超えるのは分かるのですが、買い取りの上限を設けるとか一律に停止するというのは適切ではありません。「送電網の整備が終わるまで、電力が余るときには解列【4】をしますので若干利益率が下がりますが、送電網を今後整備し、○○年先には解列をなくすようにします」と説明し、再生可能エネルギーをできる限り入れてもらうようにすべきなのです。
メガソーラーを増やすには、再生可能エネルギーを将来の基盤エネルギーにするというビジョンが肝心で、電力会社も政府も変わらなければならないと思います。

大塚―  政策を変えていくビジョンが大事ということですね。

倉阪さん―  どのエネルギーに依存するかですが、原子力発電に夢を描いている人たちが政治家の中にまだいるようで、不思議でもあり、変わらなければいけないところです。世界的にみて、途上国も含め、原子力だけに頼れるわけはないのです。原子力発電の原料のウランが枯渇性だからです。将来を見据えれば、再生可能エネルギーに頼らざるをえません。このことは同時に、再生可能エネルギーの世界市場が開けることを意味します。日本経済を活性化するためにも、日本の技術を活用する再生可能エネルギー開発のビジョンをもつことが、政治に求められているのです。


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