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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
ブリヂストンが持つ技術を説明しようとしたとき、自分達の専門用語ではまったく通じなかった
「どれかを良くするために他のどれかを犠牲にしない」を前提に、技術開発を目指してきた
タイヤの設計は接地面の摩擦力の設計 ──どのような状態においても徹底的に見る技術「アルティメットアイ」
「自然と共生する」「資源を大切に使う」「CO2を減らす」の3つの取り組みを重視
【1】ESG
 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。今日、企業の長期的な成長のためには、ESGの3つの観点、すなわち「環境重視」「社会的責任」「企業統治」が必要とする考え方で、世界的に広く認められてきている。
【2】ブタジエンラバー(Butadiene Rubber; BR)
 自動車・航空機用タイヤ・履物・防振ゴム・ベルト・ホース・プラスチック改質材などとして最も多く使用されている合成ゴムで、天然ゴムより弾性・耐摩耗性・耐老化性に優れている。
【3】せん断力(剪断力)
 物体のある断面に平行した逆向きの力を作用させると、この断面に沿って切られるような作用を受ける。この一対の逆向きの力がせん断力とよばれる。
【4】水ストレス
 水供給が逼迫している程度を表す指標。その1つが、年利用量を河川等の潜在的な年利用可能量で除した値で、それが40%以上になるとストレス状態とみなされる。
【5】資源生産性
 産業や人間生活が資源をいかに有効に利用しているかを示す指標。特定の「製品」を製造する際に用いられる場合、「生産性が高いほど効率的に資源を利用している」ことになる。

No.070

Issued: 2017.10.20

第70回 株式会社ブリヂストン技術スポークスパーソンの原秀男さんに聞く、タイヤに関わる安全や環境の問題、交通システムを含む持続可能な社会つくりへの関わり[1]

実施日時:平成29年9月27日(水)10:00〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

ブリヂストンが持つ技術を説明しようとしたとき、自分達の専門用語ではまったく通じなかった

原秀男(はら ひでお)さん
原秀男(はら ひでお)さん
 学生時代は物理学を専攻。
 1977年4月、株式会社ブリヂストン入社。東京都小平市の技術センターで、タイヤ材料設計、構造設計を担当。1992年4月、米国の事業会社に開発者として派遣。場所は、オハイオ州アクロン市、クリーブランドの南30マイル、人口約20万人。かつて米国のタイヤ産業は全てこのアクロン市にあった。1988年ブリヂストンはファイアストン社を買収し、買収後の第2陣として現地へ派遣。
 全部で3回、都合16年間、米国の事業会社、ブリヂストン・アメリカズへ派遣。3回目は、現地会社のCTOを担当。また、日本では、直需販売と商品戦略の役員を担当し、技術以外の運営を担当したことで、様々な経験と、特に社外の色々な人脈を作ることが出来た。
 2015年3月、米国より帰任、それ以降「技術スポークスパーソン」を担当し、現在に至る。

大塚理事長(以下、大塚)―  本日は、株式会社ブリヂストン技術スポークスパーソンの原秀男さんにお出ましいただきました。ブリヂストングループは、エコ・ファースト認定企業として多くの先進的な取り組みを進めておられます。本日は、私たちに馴染み深いタイヤに関わる安全や環境の問題とともに、交通システムを含む持続可能な社会つくりに企業がどう関わるかなどについて、お話を伺いたいと思います。
早速ですが、原さんがなさっておられる株式会社ブリヂストンの技術スポークスパーソンという仕事について、自己紹介をまじえてご紹介いただけますでしょうか。

原さん―  私は2015年3月に、技術スポークスパーソンという職に就きました。その背景にあったのは、ブリヂストンが持つ技術は非常に高いけれども、ステークホルダーの方々に分かりにくいということでした。できるだけ分かりやすく、我々がもつ技術を理解していただくのが私の役目ということになります。

大塚―  ある意味では、大変難しい仕事かと思いますが、原さんのそれまでの経験が関係していたのでしょうか。

原さん―  そうですね。私の入社時のバックグラウンドというか、大学での専門分野は物理学です。入社して材料開発に携わり、その後、設計分野の仕事をし、それからアメリカの事業会社に長く勤務いたしました。アメリカ時代に、ブリヂストンが持つ技術を説明しようとしたとき、自分達の専門用語ではまったく通じなかったのです。それで、できるだけ分かりやすく説明するよう努力したところ、アメリカのメディアからも受け入れられるようになりました。この活動が認められたのだと思います。

大塚―  日本では一昔前、難解な説明の方が受けるような雰囲気もありましたね。
伺いたいことはたくさんありますが、まずは本来業務のタイヤ生産に関わる安全性、環境配慮、経済性について、ブリヂストンの考え方からお願いします。

「どれかを良くするために他のどれかを犠牲にしない」を前提に、技術開発を目指してきた

原さん―  私どものブリヂストングループが最も大事にしているモットーは、企業が企業として良い仕事をするだけでなく、社会に良い貢献をすることです。それが企業として生き残る条件だと考えています。ESG【1】と表現されるものです。文字どおり、Environment「環境」、Social「社会」、Governance 「ガバナンス」の重視です。
タイヤについては、何と言っても、安全・安心が保証されなければはじまりません。それは絶対ですね。それとともに、乗り心地を良くしたい、走行性能を良くしたい、燃費を良くしたいなど、多くのことがあります。ブリヂストンは、「どれかを良くするために他のどれかを犠牲にしない」を前提に、技術開発を目指してきました。背反するかのような性能を、時間をかけて両立させてきたことが、ブリヂストンの技術だと思っています。

大塚―  タイヤの製造は、技術開発の連続だったのでしょうね。

原さん―  ブリヂストンが創業時から特に取り組んできたのは、ゴムの配合に関わる技術開発です。現在、世界中のタイヤで最も多く使われているのは、合成ゴムでBRと略称されるブタジエンラバー【2】ですが、BRを発明したのはブリヂストンの技術者なのです。

大塚―  タイヤの材料としてのゴムの技術開発は、まさに基本中の基本ですね。

原さん―  タイヤの原材料の天然ゴムについてもお話ししましょう。天然ゴムは農作物です。ゴムの収量を増やすために単に熱帯雨林を潰しゴム園を作ろうとすると、CO2の排出量を増やすことになるでしょう。このような状況に対するブリヂストンの考え方について、まだ実現していないことを含めお話しさせていただきます。
私たちがまず目指すのは、ゴム園の面積当たりの収量を飛躍的に高める方法の探索でした。また、ゴムの木は根に付く細菌で枯れることがよくあるので、その細菌による害を根絶する技術開発を目指します。ゴム園の面白い話もあるので紹介させていただきます。実は、生産性の高いゴムの木と低いゴムの木があるのですが、生産性の高い木だけを植えたゴム園より、生産性の低い木を混ぜて植えたゴム園の方が全体としての収量が多くなるのです。私たちは、このような自然界の不思議さの解明にも関心を持っています。

タイヤの設計は接地面の摩擦力の設計 ――どのような状態においても徹底的に見る技術「アルティメットアイ」

大塚―  材料のゴムの木をめぐっても奥の深いことが分かりましたが、ブリヂストンが強調されている「アルティメットアイ」についてご紹介ください。

原さん―  「アルティメットアイ」を説明する前に、乗用車のタイヤの基本的な特性をお話ししたいと思います。
乗用車のタイヤの接地面積はどのくらいと思いますか。だいたいハガキ1枚分くらい、手のひらくらいです。タイヤが4つですから、合わせてハガキ4枚分くらいです。乗用車の部品は全部で2万点を超えるのですが、すべての部品の中で、路面と接するのはタイヤだけです。車が動く力というのは、手のひらを上から押して、横に動かしたとき、手のひらに感じる力と同じです。この大事な力は摩擦力です。実は、車が「走る」「曲がる」「止まる」のは、すべて摩擦力に関係しており、車の運動は接地面における摩擦力で記述できるのです。極端に言うと、タイヤの設計は接地面の摩擦力の設計なのです。
接地面で何が起きているかを徹底的に見る目という意味で、私たちは「アルティメットアイ」と名づけ、たとえば接地面の圧力分布を見るのです。圧力分布といっても、路面が乾いている場合、雨の日や雪の日など、状況によって大きく変わりますが、どのような状態においても徹底的に見る技術を「アルティメットアイ」と称しています。

大塚―  タイヤの接地圧を示す図で、説明をお願いします。

タイヤのトレッドパタンの接地力分布。色や形が摩擦力と圧力を表し、最適な状態を見える化する。
タイヤのトレッドパタンの接地力分布。色や形が摩擦力と圧力を表し、最適な状態を見える化する。

原さん―  圧力の高い方から順に、色が赤系から青系になります。ここに示すタイヤの例では、横に細い帯が中央部に何本もありますが、帯が均等に分布しています。この状態が理想的なのです。どこかに偏っていると、その部分が摩耗し、ブレーキ力が低下することになります。
これは「アルティメットアイ」のほんの一例で、車種によってもタイヤの設計によっても、圧力の分布は大きく異なります。それぞれの結果を丁寧にチェックし、圧力が最も均一になるよう設計するのです。
「アルティメットアイ」の基になる測定は、室内の実験室で、タイヤと大きな鉄のドラムを回し、ドラムにつけた圧力とせん断力【3】を測る数多くの5ミリメートルくらいのセンサーから得られます。大量の測定データをとることができるので、「アルティメットアイ」のデータはいわゆるビッグデータとしてコンピュータ解析されます。

大塚―  「アルティメットアイ」のデータが、先ほど言われた摩擦力を反映するのですね。

原さん―  はい、そのとおりです。

アルティメットアイは、圧力や摩擦力をコンピューターで予測するシミュレーションと、実際にタイヤが走っているときの圧力や摩擦力を精密機械によって計測する2つの技術の融合によって解析の精度を向上させ、より高性能なタイヤの開発に貢献している。
アルティメットアイは、圧力や摩擦力をコンピューターで予測するシミュレーションと、実際にタイヤが走っているときの圧力や摩擦力を精密機械によって計測する2つの技術の融合によって解析の精度を向上させ、より高性能なタイヤの開発に貢献している。

「自然と共生する」「資源を大切に使う」「CO2を減らす」の3つの取り組みを重視

大塚―  話題を変え、ブリヂストングループが力を入れている環境保全活動について伺いたいと思います。
株式会社ブリヂストンは、平成23(2011)年に環境省のエコ・ファースト企業に認定され、CO2削減など多くの課題に取り組まれていますね。

原さん―  ブリヂストンの環境保全を分かりやすく説明したものに、今年6月に出したサステナビリティレポートがあります。このレポートは、企業の活動全体にかかわるのですが、最初のテーマとして掲げているのが環境です。
エコ・ファースト企業として、「自然と共生する」「資源を大切に使う」「CO2を減らす」の3つの取り組みを重視しています。これらの方針を、津谷正明CEOの名前で毎年公表するとともに、グローバルな企業活動にも適用しています。

大塚―  グローバルな視点という意味で、具体例の紹介もお願いします。

原さん―  いろいろありますが、その1つの水についてお話ししましょう。というのも、ブリヂストンのようなタイヤを製造する企業は、工場で水をたくさん使うからです。ご承知の通り、世界では水不足が懸念されています。水ストレス【4】という指標もあり、その基準の1つによれば、水の実際の供給量が供給可能量の40%を超えると危険といわれます。たとえば、2025年には西アジアから北アフリカにかけて28億人もが水の供給不足に陥るとの予測もあります。
ブリヂストンは、水ストレスの緩和に貢献するよう、まずは2020年までに水の使用量を35%減らす方針を立てています。2016年の実績をみると、28〜29%減らすことに成功しています。

大塚―  水は大切な資源であり、自然との共生にとっても重要ですね。

原さん―  資源を大切に使うという点では、水ではないのですが、タイヤの材料になる資源に対する資源生産性【5】という指標が分かり易いと思います。簡単に言うと、ブリヂストン全体の売上額を、ブリヂストンが使ったすべての材料の重量で割った値です。2016年の資源生産性を2005年と比べると、30%上昇させることに成功しており、とくに天然ゴムの使用量を大きく減らしました。

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