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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
SDGs(持続可能な開発目標)の一番の特徴は「誰も取り残さない」こと
質と量の両面を考えた効率的な水資源管理を
水資源のコントロールと使い分けを進める
【1】】国際水協会(IWA)世界会議・展示会
 隔年で開催され、100を超える国々から5,000人以上の参加者、200以上の出展企業が参加する、水に関する世界最大級のイベント。世界中から、研究者・事業体・企業等、水の専門家が一堂に集まる。
平成30(2018)年は初めて日本での開催となり、9月16日から21日まで、東京ビッグサイトで行われる。
http://worldwatercongress.org/
【2】排水の適正処理が行われているのは世界の2割
 2017年の国連世界水発展報告書(World Water Development Report)によると、全世界の80%の排水は適正処理されておらず、途上国では95%が処理されずに排水されている。 http://www.unesco.org/new/en/natural-sciences/environment/water/wwap/wwdr/2017-wastewater-the-untapped-resource/
【3】点滴灌漑
 穴の空いた配水管やホースから作物にゆっくりと水や液体肥料を点滴のように与えることで、水や肥料の使用を最小限にする灌漑方式。トリクル灌漑やマイクロ灌漑とも言われる。
【4】カスケード利用
 1度使った資源やエネルギーを、使い道を変えて段階的に別の用途に使い、資源を有効利用すること。例えば、発電で生じた排熱を冷暖房に利用し、さらにその排熱で給湯することなど。水資源は、台所や風呂場で利用した水を庭の水まきやトイレに使用することができる。

No.080

Issued: 2018.08.20

第80回 2018年国際水協会世界会議実行委員長の古米弘明さんに、水をめぐる未来のかたちを聞く[1]

実施日時:平成30年7月19日(木)
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

SDGs(持続可能な開発目標)の一番の特徴は「誰も取り残さない」こと

古米 弘明(ふるまい ひろあき)さん
古米 弘明(ふるまい ひろあき)さん
東京大学大学院工学系研究科、水環境制御研究センター 教授

昭和31年倉敷生まれ、広島育ち。
東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了。工学博士。専門は都市工学、水環境学。
東北大学、九州大学等を経て現職。アメリカスタンフォード大学、イリノイ大学、オレゴン州立大学、スイスEAWAG客員研究員も務めた。
編著に『森林の窒素飽和と流域管理』(共著)(技報堂出版、2012年)、『日本の水環境行政 改訂版』(編集代表)(ぎょうせい、2009年)など。
平成30年度、環境保全功労者環境大臣表彰を受賞。

大塚理事長(以下、大塚)― 本日は、長年にわたり水をはじめとする都市環境工学の教育・研究に取り組んでこられた、東京大学大学院工学系研究科教授の古米弘明さんにお出ましいただきました。古米さんは、今年9月に東京で開かれる国際水協会(IWA)世界会議【1】の実行委員長を務められますので、世界の水環境問題に、研究者・行政・企業などがどのように取り組もうとされているのか、会議の狙いと絡めてお伺いしたいと思います。
さて、水は最も基本的な環境要素の1つで、国連のSDGs(持続可能な開発目標)でも大変重視されています。特に目標6では「すべての人々の水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」と謳っています。私たちにとって特に大事な点は何でしょうか。

古米さん― 2030年を目標年としたSDGs(持続可能な開発目標)は、2000年に採択されたMDGs(ミレニアム開発目標)と同じく世界の共通目標として設定されたものですが、今回は「Leave no one behind=誰も取り残さない」というのがポイントです。ビジョンや目標の多くに「すべての」という言葉が使われています。例えば、「安全な水へのアクセス」について、MDGsでは「安全な飲料水を利用できない人々の割合を半減する」という表現でしたが、SDGsでは削減目標ではなく「すべての人に安全な水へのアクセスを確保」という目標になっています。

大塚― 「世界に生きるすべての人のための目標」という言い方をしているところもありますね。

古米さん― MDGsは、先進国が途上国の問題に対してどうアプローチし手助けをするか、また途上国もそれに対して努力することが重視されていました。SDGsの17の目標は、中進国や先進国自身もやるべきことがあるという前提に立っているのが特徴です。例えば日本ではあたりまえに思われている排水の処理は、世界全体の2割でしか行われていません【2】。2030年までに、この未処理排水の半分は処理できるようにするという目標があり、途上国はもちろん、中進国も努力が必要です。この他、再生水利用や回収再利用などを通じ水資源を確保し、生態系を保全することは先進国の私たちの大きな役割なので、着目いただきたいです。

SDGsの17の目標
SDGsの17の目標


質と量の両面を考えた効率的な水資源管理を

アメリカ・フーバーダムのミード湖にて2017年2月撮影。水位が低下した状態で、陸の上と下の色の違いがわかる。(古米弘明提供)
アメリカ・フーバーダムのミード湖にて2017年2月撮影。水位が低下した状態で、陸の上と下の色の違いがわかる。(古米弘明提供)

大塚― 水資源といっても処理や再利用など、非常に多くのことを考えていく必要があるのですね。もう一点、気候変動も水と非常に関係が深いわけですが、水不足や渇水の視点から世界を見渡して、どんなリスクがあるのかお話しいただけますでしょうか。

古米さん― 今後の気候変動、あるいは温暖化に伴って気象が極端化し、一層、渇水や水不足の深刻度が増すとともに頻度も上がります。水の量が減るということは、もちろん生活用水、産業用水などにも影響がありますが、排水処理等が不十分ですと質への影響が出てきます。水資源としての「質」が劣化することによるリスクは、水が不十分であることによる衛生問題、農業や工業への影響など、途上国、中進国、先進国のそれぞれで大きな課題になると思います。

大塚― 過去20〜30年という単位で見た時、水を巡る状況は深刻になっているのでしょうか。

古米さん― 日本は比較的水資源開発が進み、循環水利用や節水も導入しているので、流域水資源管理はできていると思います。先進国でも、アメリカのカルフォルニア州やオーストラリアは渇水時に非常に困っていて、再生水利用のプロジェクトを進めている段階です。一方で、アジア、アフリカは人口増にともなって水需要が増え、水資源の確保と排水処理の両面から生活の安全性が確保できない、或いは、経済活動が停滞するリスクが、どんどん高まってきていると思います。


水資源のコントロールと使い分けを進める

点滴灌漑を導入したキャベツ畑。(JICA提供)
点滴灌漑を導入したキャベツ畑。(JICA提供)

大塚― 水資源をめぐるリスクは原因が多様なので単純ではないと思うのですが、具体的な対処法としてどのようなことがあるのでしょうか。

古米さん― 広い意味では、温暖化の影響を軽減するとか温暖化に適応するという視点が重視されていると思いますが、「水」に特化すると、水需要をコントロールすること、水資源の使い分けがポイントです。適正な配置、バランスを取ることがとても大事で、水が少ないところでは水をあまり使わなくてもすむ農作物を作るように作付けを変えていくことなどです。もう1つは、効率的な水利用の管理をすることです。例えば、水のない砂漠地帯では根のところに1滴ずつ水を落とす点滴灌漑【3】など、有効な手段を考えるべきです。

大塚― 東南アジアをはじめとした雨の多い地域は、洪水対策と水資源管理のバランスをとることも必要ですね。

古米さん― 気象予測の精度があがってくれば、雨の予報に基づいて洪水防止と同時に灌漑の水を確保するダム運用を行うなど、トレードオフとなっている両方の対策を実施することができます。今までの経験に基づくより、もう少し科学的な技術・知見が増えることによって、水の資源管理の運用レベルが上がるのではないかと思います。
都市では節水が重要です。単に使用量を減らすだけではなく、水を循環利用し、カスケード利用【4】を進めることもあります。お風呂の水を洗濯に使ったり、庭にまいたり、1人あたりの直接的な水道水の利用量を減らす賢い水の使い方、節水をすることを一人ひとりが徹底できればよいのです。オフィスビルのトイレ用水は再生水と雨水を使うなど、都市にある水資源と水需要との適正配置を進めていきたいです。そして、それを支える処理技術を途上国でも活かせるよう、エネルギーやコストがかからない形で発展させていく必要があるでしょう。

大塚― 「すべての人に安全な水へのアクセスを確保」するというSDGsの目標に向けて、やるべきことはいくつもあると思いますが、都市と農村、先進国と途上国の特性を考えた対策はいかがでしょうか。

古米さん― 水の問題は水需要が増大する一方、地球全体の温暖化現象の影響にともない起きていることです。しかし、水問題は国や地域レベルから、もう少しブレイクダウンした流域単位で考える必要があります。そこにどんな産業があり、どんな水文化・文明があるか考慮し、地域の特性に根ざした対策を立てないと、先進国の技術をそのまま持って行ってもうまくいきません。ただ、途上国の大都市は、東京をはじめ欧州・アメリカの大都市が使っている効率的水利用の技術を最初から導入した方が、中途半端に段階的にレベルアップするよりは良いと思っています。一般的には、先進国の技術を途上国に導入する時に、いきなり先進国の技術をそのまま取り入れるのではなく、その国に合った適正な技術(appropriate technology)が必要だと言われますが、大都市に関しては先端的な技術を入れた方が結果として効率的なことがあります。もちろん、コストやエネルギー消費を考える必要はありますが。

大塚― まさに、ご専門の都市工学の分野の発想ですね。


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