一般財団法人環境イノベーション情報機構
首長に聞く!自治体首長に、地域の特徴や環境保全について語っていただきます。

No.008

Issued: 2020.04.20

第8回 檜原村長の坂本義次さんに聞く、豊かな自然を生かし未来に誇れる活力ある村をめざす取り組み

川崎市長 福田紀彦(ふくだ のりひこ)さん

聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎
ゲスト:檜原村長 坂本義次(さかもと よしじ)さん

  • 昭和20年2月2日、檜原村生まれ。
  • 檜原村消防団長、檜原村村議会議員(1期)を経て、2003年5月より現職(5期目)。
  • 趣味・特技は、ゴルフと剣道(二段)。
  • 座右の銘は、「チャンスは二度ない」「首尾一貫」。
目次
職員も村民も、「檜原村」ということを胸張って言える村にしたいというのが原点
村にこれだけ森があるから、地元のエネルギーとして使わない手はない
小学校跡地にこれから建てる、おもちゃ美術館
冬は凍ったきれいな滝が見られ、春は新緑、秋は紅葉、夏には水遊びができる、そんな四季折々の変化が、もう崩れてきている
人工的な観光地ではなく、自然のままをみんなで楽しんでもらう、健康回復の基地にしたい
次世代の若者が檜原村に住みたいという村にすることが、私の最後の仕事

職員も村民も、「檜原村」ということを胸張って言える村にしたいというのが原点

大塚理事長(以下、大塚)― EICネットの「首長に聞く!」にご登場いただきありがとうございます。
「首長に聞く!」インタビューの目的は、これからの日本にとって極めて大事になる、環境を大切にしながら、安全・安心で住みやすい地域社会づくりに貢献することだと考えています。ご登場いただく首長の皆さまから、さまざまなお考えや経験に基づくお話を伺って、EICネットの読者の皆さまとともに考えるきっかけになることをめざしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さっそくですが、檜原村の紹介からお願いしたいと思います。首都・東京にありながら、島嶼部以外では唯一の村であり、村の面積の9割を森林が占め、その大半が秩父多摩甲斐国立公園に含まれています。そんな豊かな自然環境を生かして、村の将来像として「森と清流を蘇らせ、未来に誇れる活力のある村」を掲げていらっしゃいますが、村の特徴とめざされていることなど、坂本村長の目から見た檜原村をご紹介いただければと思います。

坂本村長― 檜原村は、こんな山間地にありますが、だからこそ他の地域と比べて、環境のよさが誇れます。環境がいいからこそ、環境でリードしようと、村長に就任して以来、職員とずっと取り組んできました。
例えば、この部屋の電気もとっくにLED化していますし、村道の街灯をすべてLED化したのはもう何年も前のことです。当時、棒型の蛍光灯は日本の大手メーカーは作っていませんでしたから、外国製のものを入れています。そんな時代から環境に取り組んできたわけです。
生活環境の面でも、ここから南の谷の一番奥まで18kmありますが、そこまで下水道をほぼ完備しました。それによって川がきれいになり、全国の河川の鮎の味を競う「清流めぐり利き鮎会」で2度も準グランプリを受賞しています。

大塚― 村役場に来るまでに見た川の水もきれいでした。取り組みの成果ですね。

坂本村長― もう一つは、いかに地場産材の自然エネルギーを使って環境整備をするかです。今、山の木が大きく育ちすぎていますから、これを伐ることが日陰対策にもなり、結果として住民の冬の省エネにもなるわけです。村では、新エネルギービジョンや木質バイオマスタウン構想を作って山の整備を進めてきました。役場の1階の入り口脇の喫茶店にも、ペレットストーブを入れています。小学校や教育の森という村の施設にもペレットストーブを設置しています。
平成24年には、村で薪燃料を使おうと、村のシルバー人材センターに依頼して木材を集め薪にし、パレット積みして薪として売る仕組みを作りました。また、薪の製造装置を導入し、「数馬の湯」という村の温泉センターに薪ボイラーを2台設置しました。
実は、このときに職員を東京都町村会による海外視察に派遣し、村の翌年度の予算に組み込めるようにしたのがきっかけでした。

大塚― 村の施策の話を続けていただく前に、坂本村長にぜひお聞きしたいと思っていたのは、いろいろなアイデアの源についてです。ご自身の経験談などとも関係づけてお願いします。

坂本村長― 「村」というと、「市町村」という言い方をしますから、「市」が一番進んでいて村が一番遅れていると、そういう意識が村民にも職員にもあったのです。ですから、劣等感の塊みたいな村だったのです。これではダメだということで、まず市町村は横並びで、何をやったかで価値が決まる、だから「村」といっても市に劣っていることは何もないという、その意識づけを最初にしたのですよ。そうしないと、この村はなくなってしまう。誇りを持てない村民だと、自分のふるさとを捨てちゃうじゃないですか。とにかく、職員も村民も「檜原村」ということを胸張って言える村にしたいというのが原点です。

大塚― 村長になられる前に、村議会議員を1期務めておられますが、その頃から今おっしゃったようなことを感じられていたのでしょうか。

坂本村長― ちょうど1年前に、森林環境税及び森林環境譲与税が創設されましたね【1】。その内容は、私が20年前に議員になった時に提案したものに似ていますよ。ところが、その時に議員を4年間したのですが、感じたことは何も実現できないということでした。いくら提案しても、当時の村は一切取り上げてくれなかったのです。
住宅を作ってほしいといっても、そんなもの作ったところで誰も入らないと言われました。狭い道にデマンドバス【2】を入れてほしい、下水道整備を進めるべき、などといろいろなことを言いましたが、ことごとく却下されました。本当に、こんな村でいいのかという思いでした。
私は村長になって最初の2年間に、不便な地域に福祉モノレール【3】を5本敷設しました。これも、議員当時に提案したのですが、10年も経てば人がいなくなるから必要ないと言われたものです。

大塚― 福祉モノレールとはどのようなものですか。

坂本村長― レール1本で敷設できる、よくミカン畑などにある農業用モノレールと同じようなものです。実は、私自身もこうしたモノレールがあることは知っていましたが、人を乗せて運行できることは知りませんでした。
議員になって自分で調べたところ、四国に扱っている会社がありました。メールを送ったら、3日後にカタログを3冊送ってきてくれました。自分が村長になって、すぐに敷設しました。それから17年が経ちましたが、5本敷設したうちの2本は今でも稼働しています。
バスについても、当時、群馬県の赤城山麓に住民を乗せる10人乗りワゴン車が走っているのを知りました。檜原村でもこのワゴン車をデマンドバスとして幹線道路から外れ大型バスが入れない狭い枝線に入れました。今では、4路線が運行しています。
このように、住民のために何をするのが大事かを考えてきました。

檜原村薪製造施設

檜原村薪製造施設

不便地域に敷設したモノレール。17年経った現在でも2本が現役で稼働している。

不便地域に敷設したモノレール。17年経った現在でも2本が現役で稼働している。


村にこれだけ森があるから、地元のエネルギーとして使わない手はない

大塚― モノレールやデマンドバスの話ももっとお聞きしたいのですが、先ほどお話しいただきかけた檜原村のエネルギービジョンについて、村長ご自身の経験も含めお聞かせいただければと思います。

坂本村長― 村にこれだけ森がありますから、地元のエネルギーとして使わない手はないだろうと、まず薪の活用を始めました。CO2を排出しない、環境にやさしいエネルギーとして、木質バイオマスが効果的なのです。
最初のきっかけは、私が東京都町村会によるドイツへの視察に参加した時、ドイツのアパートの家賃が部屋の温度によって違うことでした。冬の寒い時に温度を高く設定する部屋では、その分、家賃が高くなっていたのです。それだけ省エネにシビアということです。
この村でも、こうした視点を含めてエネルギー政策を考えていかないとダメだということで、職員を派遣して勉強してもらい、今に至っているわけです。
薪を作る仕組みについても、山で伐った間伐材が活用されずに腐らせていたのを改善しようと、村が伐採にも搬出にも補助金を出し、村で薪を活用することに取り組んだのですよ。

大塚― 村長になられてすぐということですね。

坂本村長― そうです。村長になって1〜2年経った頃に、木材の搬出に補助金を出しました。それまでは、間伐しても山の中で切捨て間伐といって置き捨てていたんですよ。せっかくCO2を貯め込んだ木材を腐らせてしまっていたわけです。この時から、薪に使ったり、建物に使ったりし始めたわけです。そして、小中学校の木質化もすべて行いました。室内に木を張ることによって、保温性が高まり湿度調整もできて、健康管理につながります。
村の中学校では、木質化してから12年間、インフルエンザによる学校閉鎖がないんですよ。これは村の大きな自慢です。結露になる時期でも、教室に木を張ったことでカラカラです。そのくらい吸湿性があるわけです。逆に冬になって空気が乾燥してくると湿度を吐き出しますから、一定の湿度が保たれて、インフルエンザウイルスの活性も落ち、病気の罹患率が低下するのです。
保育園もオール木造にしています。今、50人くらいの子どもが通っていますが、今年3月までにインフルエンザに罹った園児はわずか2人です。

大塚― いいですね。保育園は村で運営されているのですか。

坂本村長― 独立した社会福祉法人が運営しています。ちょうど建物の建替え時期がきた時に、軽量鉄骨で建てるという計画だったので、村で差額は出すから木造にしようと提案し、オール木造の保育園にしたのですよ。図書館もオール木造です。また、村営住宅も木造の一戸建てがもう40棟くらいになりました。

大塚― 地元の木を使う取り組みの原点になるのでしょうか、檜原村木質バイオマス及び再生可能エネルギー整備計画が2016年3月に策定されていると伺っています。

坂本村長― そうです。薪ボイラーの場合、薪をくべたりメンテナンスしたりと、結構大変じゃないですか。それで、多くの地域に視察に行った結果、木質チップボイラーを設置することにしたのです。
檜原村やすらぎの里という総合福祉施設があります。お医者さん2人が常駐し、社会福祉協議会も同居してデイサービスをしています。その施設の冷暖房のエネルギーに、以前は化石燃料を使っていましたが、2017年度から木質チップボイラーに切り替えて稼働するようになりました。
環境にやさしくするのは、コストが掛かりますよ。でも、それは豊かな環境に恵まれた檜原村が率先してやることだと思うのです。村の資源を生かして、それで環境を守れればと頑張っています。

やすらぎの里の木質チップボイラー

やすらぎの里の木質チップボイラー

木造住宅

木造住宅


小学校跡地にこれから建てる、おもちゃ美術館

大塚― 今のお話とも関連しますが、別の話題です。EICネットにはエコチャレンジャーというインタビューをするコーナーがあり、2年ほど前に東京おもちゃ美術館の多田千尋さんにお出ましいただきインタビューしたことがあります。そのときにウッドスタート宣言の話になり、檜原村も取り組まれているとお聞きしました【4】

坂本村長― ウッドスタートというのは、村で赤ちゃんがおぎゃーと生まれた時に、木のおもちゃを持っていくのですよ。
2014年12月にウッドスタート宣言をして以来、トイビレッジ構想に基づいて検討を進めてきましたが、このたび、昨年(2019年)11月に木造2階建てのおもちゃ工房が開設しました。現在、工房では地域おこし協力隊として飛騨から来た男性が、地元出身の2人と一緒に働いています。
工房の横の小学校跡地に、おもちゃ美術館を建てる計画です。2020年度予算が議会を通りましたから、これから1年半かけて造ります。木材には、村の木を使います。村内の木材産業協同組合に準備してもらい、村が搬出代も出して買い取り、製材・乾燥もして、建設業者には材料を支給して造ってもらいます。実は、古い校舎を改築しようという案もあったのですが、100年もつ建物にしようということで現在の案になりました。すべて村の木を使った建物になるわけで、もちろんお金は掛かりますが、伐採地もわからないような外材が入る心配はありません。

大塚― 小学校の跡地ですと、結構広いですね。

坂本村長― 約1,000m2です。小学校の建物とほぼ同じ規模の建物になります。柱や床も村産の木材を使って、土足禁止の建物になります。子どもたちにも危なくない糸鋸5台くらい入れて直接ものづくりを楽しんでもらえるスペースを用意しますし、喫茶店やおもちゃの販売コーナーもつくります。
おもちゃ美術館ですから、親子で来ることが多いと思います。子どもには1日を木のおもちゃで遊んでもらい、親には「こういう建物もいいよね」と言っていただけるよう提案するというわけです。

大塚― 村営の施設になるのですか。

坂本村長― 村で造った後、運営は地元に任せます。村が直接運営には手を出さず、地元にNPOを立ち上げてもらいます。それによって地域に雇用も生まれて、村の活性化にもなるではないですか。すでに、運営するための委員会も立ち上がり、詳細な検討をしてもらっています。

大塚― ぜひ、素晴らしいおもちゃ美術館をぜひつくっていただきたいと思います。

坂本村長 ありがとうございます。みなさんに喜んでもらえると思いますよ。

2019年11月にオープンした、おもちゃ工房

2019年11月にオープンした、おもちゃ工房

檜原村のウッドスタートでプレゼントしている木製おもちゃ

檜原村のウッドスタートでプレゼントしている木製おもちゃ

ひのはら森のおもちゃ美術館(仮称)のパース

ひのはら森のおもちゃ美術館(仮称)のパース


冬は凍ったきれいな滝が見られ、春は新緑、秋は紅葉、夏には水遊びができる、そんな四季折々の変化が、もう崩れてきている

大塚― 村のホームページを見させていただくと、日本の滝100選として都内で唯一選ばれている「払沢の滝」のことで、私がはっと思ったのが、近年は滝がなかなか凍結しなくなり、2年前に18年ぶりの全面凍結があったという記事でした。坂本村長から、今日の地球環境の変化について感じておられることをお聞かせいただけますか。

坂本村長― 地球温暖化に危機感を持っていますよ。だって、私が子どもの頃には川が凍っていたのが、今はもう一切凍ることはありません。私が30代の頃、この辺ではディーゼル車の燃料にする軽油が凍ったのですよ。軽油はマイナス12℃か15℃にならないと凍らないのですよ。もうそんなことは一切ありませんね。
払沢の滝も、今年は最大で15%の凍結でした。今年の冬は、マイナス5℃以下にならなかったのではないですか。例年ですと、マイナス8℃くらいまで下がる日が3〜4日続いて滝が凍っていたのです。いかに温暖化が進んでいるかがわかります。
冬は凍ったきれいな滝が見られ、春は新緑、秋は紅葉、夏には水遊びができる、そんな四季折々の変化が、もう崩れてきていますよ。

大塚― 檜原村は、それでも都心部よりは気温が低いのでしょうか。

坂本村長― この役場の周辺では、気温が都内とは6℃くらい違います。この辺は標高が250mで、少し上の方は300m以上あるので、村の中でも高低差の影響があります。それと、V字谷なので日照時間が短いことも影響しています。全体的には、気温が低いのはまちがいないでしょう。

2年前に全面凍結した「払沢の滝」と今年の状況
2年前に全面凍結した「払沢の滝」と今年の状況

2年前に全面凍結した「払沢の滝」と今年の状況


人工的な観光地ではなく、自然のままをみんなで楽しんでもらう、健康回復の基地にしたい

大塚― もう一つ伺おうと思っていたのが、エコツーリズムのことです。檜原村のエコツーリズム推進全体構想は、2年前に、環境省から全国で13番目の認定を受けておられます。いろいろな計画と期待をお持ちと思いますが、村民の方、それから訪れてこられるであろう村外からの方々へのメッセージをお願いできればと思います。

坂本村長― 檜原村の武器は、清流と自然ですよ。今、大都会の過密の中で生活し、心を病んでいる人が多くおられると思われます。そういった人たちが、檜原村に来て1日過ごしてもらうだけで元気を取り戻して帰れるようにできればと思うわけです。実は、檜原村をその基地にしようと考え、もう10年以上前にセラピーロード【5】の認定をとったのです。東京では最初の認定でした。
その時も、新たな観光資源として健康を売り物にしたのです。ただ、このことを地元の旅館業の人たちはなかなか理解してくれませんでした。ところが、最近になってバスツアーで大勢の方々がいらっしゃるようになり、それでびっくりして、ようやくセラピーに対する認識が地元の観光業の中でも注目されるようになったのです。
そうした中で、エコツーリズムの取り組みを始めた大きな理由は、作った観光地ではない村全体のいろいろなところを、少人数のそれぞれのグループにガイドがついて散策してもらい、そうして訪れた人たちが発見したことを写真に撮るなりして発信してもらうことで、新たなお客さんにも来てもらえる仕組みを作ろうというわけです。これまでにも、よく知られている、例えば払沢の滝や浅間嶺、三頭山などの観光地とは違うところに目を向けてもらいたいと考えています。エコツーリズムをスタートさせ、村の食文化や四季折々の動植物などの自然の中から、いろいろな宝物を掘り起こすことを始めました。もう3〜4年になります。2020年度に、そのまとめの段階に入ろうと考えているところです。

大塚― 本来のエコツーリズムの発想を、ぜひ広めていただきたいと思います。

坂本村長― 実は最近、村内に家を買ったお医者さんがいます。何を始めたかというと、都内の人を呼んで1泊してもらい、元気に健康になって帰るという仕組みを立ち上げたのですよ。
はじめて聞いたときにはびっくりしましたね。私らが自然を売り物にしているところに、同じことを考えている人がいたのです。

大塚― アイデアが素晴らしいですね。先ほど、作った観光地ではなくとおっしゃいましたが、そのような自然体の魅力が大事なのでしょうね。

坂本村長― そうなんですよ。だから、私は、ここを人工的な観光地ではなく、自然のままをみんなで楽しんでもらう、健康回復の基地になってほしいと考えています。檜原村は東京都心から50kmの距離ですから、日帰りコースですよね。この地の利を生かしていきたいと思っています。

セラピーロード

セラピーロード

エコツーリズムの取り組み事例

エコツーリズムの取り組み事例


次世代の若者が檜原村に住みたいという村にすることが、私の最後の仕事

大塚― いろいろなお話をいただいてきましたが、最初に申し上げた「首長に聞く!」が目指している地域社会の重要性という点から、改めて坂本村長からのメッセージをいただきたいと思います。

坂本村長― 檜原村では、ここ数年、若い世代の流入が増えています。近年、日本では合計特殊出生率が注目されており、全国平均は1.42、東京都は1.20という数値になっています。檜原村では、2015年が1.76、2016年には1.70、さらに2017年には1.71と推移してきました。そして、2018年には3.07になったのです。

大塚― 3を超すというのは、ちょっと信じられないですね。

坂本村長― 22年ぶりの出産ラッシュですよ。22年前は、今より人口が3割も多かった。ところが、3割人口が減ったのに、22年前と同じ数の子どもが生まれたのですよ。私も、まさか3.07という数値は想像していませんでした。
その前の2017年にも1.71で、島嶼部を除く東京都では檜原村がトップですよ。
この村の村長になり、最初にも申し上げたように、今は「村」をブランド化する時代だろうということを皆さんに話しています。ですから、以前は名刺にも「東京・檜原村」と書いていましたが、今は「檜原村 in 東京」と書いています。檜原村という大事な村があるのは、東京なんですよというメッセージです。おもしろいでしょう。
小さい村ですから、小回りも利きますし、他の地域と差別化して進めてきました。住民サービスもきめ細やかにしていますが、それも村だからこそなんだという話をいつもしています。

大塚― 実行に移されたことが非常に素晴らしいですね。

坂本村長― 例えば、高齢者が自動ブレーキなどを搭載した自動車に買い換えるのに対して、国もようやく10万円の補助金を出すようになりましたけれど、65歳以上の人口が5割近くにもなる檜原村では、もう3年も前から50万円の補助金を出しています。村民にとって自動車は生活必需品ですし、免許の自主返納だけでは高齢化に対応できないのです。
子どもの奨学金も、条件付きではありますが、返却しなくてよい奨学金制度を作っています。親が檜原村に住んでいれば、ほかの地域の大学に通っていても構いません。大学を卒業したら檜原村に帰ってきて、檜原村から就職先の職場に通えば、返済は1年先送りになります。19年間先送りして、その翌年に村を出ることになったら全部返済してもらいます。でも、20年間村に住み続けたら、返済しなくてもよいという制度です。
このようにして、次世代の若者が檜原村に住みたいという村にすることが、私の最後の仕事だと思っています。そのためには、やはりこの村の自然環境にほれてもらうことが大事ですし、住み続けてもらうためには、上下水道など、生活インフラを整備することが大事です。上下水道ともほぼ完備しています。光ファイバーも、2004年に導入しました。生活環境のどの面でも、周囲の自治体に負けないくらいに整備できていると、勝手に自慢しています。

大塚― 本日は、長時間にわたり本当にありがとうございました。ますますご活躍いただきたいと思います。


檜原村長の坂本義次さん(左)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(右)

檜原村長の坂本義次さん(左)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(右)


注釈

【1】森林環境税及び森林環境譲与税
パリ協定の目標達成や災害防止を図る観点から適切な森林の整備等を進めることを目的として、2019年度税制改正で創設された。個人住民税とともに年額1000円を賦課徴収する「森林環境税」と、森林環境税の収入額に相当する額を所定の使途及び基準に基づき、国から市町村又は都道府県に譲与する「森林環境譲与税」の2種類から成る。
課税(徴税)は東日本大震災復興支援の上乗せ税が終了する平成36(2024)年度からとして設定されているが、譲与税の配分は2019年度から総務省所管の特別会計からの借り入れによって前倒しで対応するとしている。
【2】デマンドバス
村が村内交通事業者へ運行委託し、通学・通院・買物に出かける時間帯などの住民の方のニーズに基づいて運行するワゴンバスを用いた公共交通機関。地域(村内の交通空白地域)と路線バスをつなぎ、路線バスの発車・到着の時刻に合わせて運行している。
デマンドバスやまびこ
【3】福祉モノレール
単軌条運搬機(モノレール)は、みかんなどの運搬のために開発・普及したもの。その後、乗用型のモノレールが開発され、林業現場への通勤や木材運搬、山間地や急傾斜地の工事現場への通勤や資材搬入にも使われるようになった。
 檜原村では、尾根道沿いの自動車が入れる道路がない家の交通を確保するために整備した。
檜原村福祉モノレール
【4】東京おもちゃ美術館の多田千尋さん
エコチャレンジャー(第63回)「認定NPO法人日本グッド・トイ委員会理事長・多田千尋さんに聞く、暮らしに木を取り入れる取り組み」(2017年3月21日)
第63回 認定NPO法人日本グッド・トイ委員会理事長・多田千尋さんに聞く、暮らしに木を取り入れる取り組み
【5】セラピーロード
登山でもハイキングでもない、健康のために森に入るための散策路。2007年3月に認定された檜原村のセラピーロードは、檜原都民の森内に片道約1km「大滝の路」で、きつい勾配もなく、ウッドチップが敷かれた安心設計。