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No.212

Issued: 2012.10.19

動物愛護管理法の改正(環境省自然環境局総務課動物愛護管理室)

目次
犬猫等販売業に関する規制の新設
現物確認・対面説明の義務付け
第2種動物取扱業の創設
多頭飼育の適正化
犬及び猫の引取りについて
災害対応
罰則の強化
今後の動物愛護管理

【図1】動物愛護管理法の仕組み
[拡大図]

 平成24年9月5日に、改正動物愛護管理法が公布されました。この法律は、昭和48年に制定され、今回で3回目の改正となります。
 改正にあたり、環境省では、平成22年8月から現行制度の見直しを行うため、中央環境審議会動物愛護部会の下に「動物愛護管理のあり方検討小委員会」を設置し、25回の議論と17万件におよぶパブリックコメントを踏まえて、平成23年12月に「動物愛護管理のあり方検討報告書」が取りまとめられました。実際の改正法は、この報告書を踏まえ、民主党をはじめとする与野党各党において検討が行われ、平成24年8月改正法案が国会に提出され、8/29の参議院本会議において、全会一致で可決成立しました。
 主な改正点としては、従来の動物取扱業者のうち、犬猫等販売業者について、幼齢な犬猫の販売規制、犬猫等健康安全計画の提出義務が追加されたことや、動物の販売時の現物確認、対面説明の義務化、飼養施設を有する非営利の動物取扱いに係る届出制度の創設、所有者責務に終生飼養の徹底等が挙げられます。


犬猫等販売業に関する規制の新設

 これまで動物取扱業として登録されてきた事業者は、今回の改正により、第一種動物取扱業者という名称に変更となります。そのうち、特に犬猫を繁殖する業者に対して、生後一定の日数を経た犬猫でなければ、販売や販売のための引き渡し又は展示行為が禁止されることになりました。具体的には、法律の施行から3年間は生後45日、その後別に法律で定める日までの間は生後49日を経過しない犬猫について、販売、展示等が禁止されます。これは、生まれたばかりの幼齢の犬猫は、親兄弟とのふれあいを通じて社会化が促進されるため、その期間をきちんと確保しようというものです。この期間を生後56日までにする時期については、法施行後5年以内に、科学的知見等を収集検討し、速やかに定めることとなっています。
 また、犬猫等の販売業者に対して、幼齢な犬猫の健康や安全を守るための体制整備や、販売が困難となった犬猫等の扱いを記した「犬猫等健康安全計画」の提出が義務づけられた他、所有している犬猫等の個体毎の状況について帳簿に記載して保存することや、所有状況について都道府県へ定期的に報告することなどが義務づけられました。

現物確認・対面説明の義務付け

 インターネット等による生体の通信販売では、現物を確認しないことやしっかりした説明を受けないことにより、購入後にトラブルとなるケースが散見されることから、今回の改正法では、犬猫等の動物を販売する場合には、あらかじめ、購入しようとする者に販売する動物の現状を直接見せるとともに、対面で、その動物の特性や状態に関する情報等を説明しなければならないこととされました。規制される動物は、「犬、猫その他の環境省令で定める動物」となっており、環境省令で定める動物については、今後検討を行い、省令で定めることとなっています。
 なお、インターネット等の通信販売そのものが規制されるわけではなく、そうした売買であっても、契約前に現物確認、対面説明が求められることになったものです。

第2種動物取扱業の創設

【図2】動物取扱業の主な改正点
[拡大図]

 営利性のない動物の取扱いのうち、飼養施設を有して、一定数以上の動物を飼養する場合については、第二種動物取扱業として都道府県への届出が必要になりました。対象としては主にシェルターを有して譲渡活動等を行う愛護団体や、公園等における動物展示等を想定しています。
 届出の対象となる施設や飼養頭数については、今後検討を行い、省令で定めることとなっています。


多頭飼育の適正化

 今回の改正では、都道府県知事は犬猫等を多数飼育している一般飼養者に対して、条例によりその飼養状況等について届出させることができることが明記されました。
 また、生活環境が損なわれている事態について、「騒音又は悪臭の発生」「動物の毛の飛散」「多数の昆虫の発生」といった記述を追加し、勧告や命令の判断をより明確化できるよう配慮されています。
 さらに、多数の動物の不適切な飼養によって、動物が衰弱する等の虐待につながるおそれがある場合にも、都道府県知事はその飼養者に対して改善勧告や命令をすることができることとされました。

犬及び猫の引取りについて

 現行法では、都道府県等は犬や猫の引取りを求められたとき、引き取らなければならないこととされていますが、今回の改正では、動物取扱業者から引取りを求められた場合等、終生飼養の趣旨に反する場合には引取りを拒否できることとされました。
 また、自治体は引き取った犬猫をできるだけ返還したり、譲渡するよう努めることが明文化されました。

災害対応

 東日本大震災により、被災地域の住民のみならずペット等の動物も大きな被害を受けました。こうした状況を受け、今回の改正にあたっては災害時の対応についても、主に2つの規定が盛り込まれました。
 ひとつには、都道府県が定める「動物愛護管理推進計画」に災害時の動物の適正な飼養及び保管に関する施策を盛り込むこととされました。また、動物愛護推進員の活動として、災害時における国や都道府県が実施する動物の避難、保護活動への協力が付け加えられました。
 動物愛護推進員は、平成11年の改正法により設けられた制度です。ひろく動物の適正飼養を推進するためには、民間の専門家や有識者が、行政と連携しながら活動することが重要なことから設置されたものです。

罰則の強化

 今回の改正法では、愛護動物の殺傷や虐待、無登録での動物取扱業の営業、無許可での特定動物の飼養に対するものなど、従来の罰則が全体的に強化されました。
 また、これまで罰則の対象となる虐待について、「みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる」という記述でしたが、虐待の定義の明確化が求められていたことから、改正法では、酷使、拘束、疾病の放置、不衛生な環境での飼養等の具体的な事例が明記されました。

今後の動物愛護管理

【図3】全国の犬・猫の殺処分数の推移
[拡大図]

 改正法の施行は公布後1年以内とされています。
 動物愛護管理法に基づき国が策定している基本指針において、「犬及びねこの引取り数の半減」と「殺処分率の減少」が謳われており、改正法の下でもそうした取組をさらに推進していくことが求められています。


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記事・図版提供:環境省 自然環境局 総務課 動物愛護管理室

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