一方、土壌調査陣の学生たちは、塩ビ管を土に打ち込み、ストップウォッチ片手に水を注ぐ
【2】。水が土に染み込み見えなくなるまでに何秒かかるか計測するのだ。一般に、適度に間伐された森林では、浸透が速い。
それを終えると、研究室に持ち帰るための通称「土の缶詰」作り
【3】。土壌を地面にある状態のまま抜き取る。サンプリング用の缶を地面に打ち込み、それをシャベルでそっと掘り出し、ふたをしてテープで密閉する。ねらい定めた場所に樹木の根があって缶が打ち込めず、何度もやり直しになる。ひじから先がどろどろだ。
控えめにメンバーの様子を見ていたコースガイドの男性が、やがて巻尺を手に取って一緒にヒノキの直径を測り始めた。一人が傘をさしかけているものの、記録係の用紙はびしょびしょになっている。雨が冷たく感じられるようになってきた。そろそろ暖まりたい、と思ったころ、1カ所目の調査が終了。ここでの木の理想の密度を、鋸谷(おがや)式と呼ばれる林業の方法と、島崎洋路元信州大学教授の理論に基づいてリーダーが説明した後、車の中でのお弁当タイムとなった。
午後からもう1カ所調査し、15時半に拠点の中部大学に帰還。すでに多くの班が戻ってきており、閉会式を兼ねた感想発表会で熱気ムンムンに盛り上がっていた。地元の市会議員を中心に用意された郷土料理の「ごへた」と豚汁が、学生たちのさわやかな給仕で配られた。
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学生たちが土壌の浸透能を調査 |
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300ccの水を注ぎ、浸透するまでの時間を計る。 |
【2】土壌の浸透能調査
土壌の保水力については、水がその土壌にとどまる能力(保水力)と、水が土壌に染み込む能力(浸透能)の二面を考えなければならない。「森の健康診断」でも両方の調査ができれば理想だが、保水力の調査は複雑でこのような行事の中では難しいことと、人工林では浸透能がきわめて低い場所も多く、まずは浸透能があることが重要であることから、浸透能調査のみを行うこととなった。
今回の調査では、調査プロットの中で、塩ビ管を深さ10cmまで打ち込み、そこに300ccの水をすばやく流し入れ、水が見えなくなるまでの時間を計る。これを3分おきに3回繰り返す。当然、この調査を行うまではその周辺を踏み固めないようにする。このような行事で容易にできる方法として名古屋大学と中部大学の教授が考案し、塩ビ管に目盛りをつけたり、地面に打ち込みやすいようにエッジを削ったりという作業は教授と学生が事前に行った。当日、現地まで、学生たちが1人4リットルの水を背負って行った。
【3】「土の缶詰」づくり
現地での調査は、そのときその場の環境によって結果がまちまちで不安定になる。後日、研究室の一定した環境において追試できるように、土壌を持ち帰るのが、「土の缶詰」づくりだ。
土壌を入れる容器(缶)は測定機器に付属のもので、直径5cm、深さ5cm。塩ビ管での浸透能調査をした後、その至近の地面に缶を打ち込み、土壌がその場にある状態で「缶詰」を作る。塩ビ管の深さ10cmと統一するため、1個目の缶を作った後、その真下の土壌を2個目の缶に採取した。
1個目がうまく取れても、2個目が木の根にぶつかって打ち込めないことがよくあり、何度も場所をずらしてやり直すなど、作業が難航した。 |
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