環境を巡る最新の動きや特定のテーマを取り上げ(ピックアップ)て、取材を行い記事としてわかりやすくご紹介しています。
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アメリカ横断ボランティア紀行【導入編】
2005年環境重大ニュース
COP/MOP1 モントリオール会議から(後編)
COP/MOP1 モントリオール会議から(前編)
上下流が手を結び人工林を応援する
〜土岐川・庄内川源流 森の健康診断〜
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No. 2005年環境重大ニュース
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Issued: 2005.12.28
2005年環境重大ニュース(海外編)
 目次
第1位:京都議定書発効、第一回締約国会合開催
第2位:EU 温室効果ガス排出量取引スキームがスタート
第3位:EU 新化学物質規制REACH 年内合意にリーチ
第4位:G8グレンイーグルズ・サミット 気候変動等に関する宣言を採択
第5位:国連 ミレニアム生態系アセスメント報告書公表
第6位:大型ハリケーン アメリカを襲撃
第7位:フランス 環境憲章を公布
第8位:北京再生可能エネルギー国際会議
第9位:ドイツ 環境機器輸出で世界一に
第10位:イラク南部湿地 回復へ向かう
 今年も残すところ、あと僅かになって参りました。2005年は、皆様にとって、どのような1年間でしたか?
 1年を通してみると、異常気象や事故など、悲しいニュースもありましたが、ジーコ・ジャパンのサッカー・ワールドカップ出場決定など、元気の出る、明るいニュースもありました。環境関係でも、いろいろな出来事がありましたね。
 そこで、今回は、1年間を振り返り、日頃、EICネットで海外ニュースを担当しているスタッフが、2005年の海外環境重大ニュース・10選をお送りします。若干、独断と偏見も入っていますが、やはり第一位は...。
第1位:京都議定書発効、第一回締約国会合開催
 2月16日、先進国の温室効果ガス排出削減目標などを定める京都議定書が発効しました。1997年のCOP3(京都会議)で採択されてから、8年間の長い道のりでした。この間、COP6【1】での交渉の決裂、世界最大のCO2排出国アメリカの離脱など、何度も、存続の危機に瀕してきた京都議定書。ロシアの批准により、やっと発効の日を迎えることができました。
 そして年末には、Pick Up!の前号でも緊急報告【2】のあった、COP11&(COP/MOP1)が開催【3】。議定書の運用ルールが正式に採択され、また、同議定書に基づき、2012年以降の先進国の目標の検討を開始することが合意されました。なお、アメリカや京都議定書上の削減目標を負っていない途上国も交え、気候変動枠組条約の下、地球規模の長期的な取り組みについて対話を始めることに合意したことも大きな成果となりました。

COP11・COP/MOP1開幕 議長国カナダ ディオン環境大臣の開会挨拶
COP11・COP/MOP1開幕 議長国カナダ ディオン環境大臣の開会挨拶(写真:(c)Government of CANADA)




【1】 第6回気候変動枠組条約締約国会議(2000年11月 オランダ・ハーグ)
環境省>気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)について
環境省>気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)再会会合について
UNFCCC>COP6
JCCCA>COP6情報
【2】 Pick Up!『COP/MOP1 モントリオール会議から』(前・後編)
【3】 COP11&COP/MOP1
 第11回気候変動枠組条約締約国会議(COP11)・京都議定書締約国会議第1回会合(COP/MOP1)。
 会期は2005年11月28日〜12月9日、カナダ・モントリオールにて開催
第2位:EU 温室効果ガス排出量取引スキームがスタート
 京都議定書の温室効果ガス排出削減目標を達成する手段のひとつとして、EU温室効果ガス排出量取引スキーム(EU-ETS)が、今年1月1日からスタートしました。
 これは、世界で最初の国際的なCO2排出量取引制度! EU25カ国にある、発電所、製鉄所などのエネルギー多消費施設、1万1,400カ所以上が参加しています。
 加盟国が15カ国から25カ国に増えても、着実に制度を実現し、実行に移していくEUに脱帽。



第3位:EU 新化学物質規制REACH 年内合意にリーチ
 REACHは、化学物質の登録、評価、許可をひとつに統合する、EUの新しい化学物質規制です。現行の化学物質審査制度が導入される以前(1981年)から流通していた化学物質を含め、3万もの化学物質をカバー。1トン以上の化学物質を製造・輸入する企業は、安全性等を示すデータを欧州化学物質庁に登録することになります。
 化学産業などからコストがかかるとして強い反対を受け、一時は先行きが危ぶまれたREACHですが、妥協案が提示され、欧州議会(11月17日)、欧州競争政策閣僚理事会(12月13日)の第一読会で、なんとか合意に至りました。最終的な正式決定は、2006年秋の見込み。

EU本部(ベルギー・ブリュッセル)
EU本部(ベルギー・ブリュッセル)




第4位:G8グレンイーグルズ・サミット 気候変動等に関する宣言を採択
 今年、G8議長国とEU議長国(2005年後半期)をダブルで務めたイギリスは、気候変動問題を重点の一つに掲げ、果敢に取り組みました。7月のG8グレンイーグルズ・サミットでも、気候変動問題とアフリカ問題が2大テーマに。サミット準備のため、ブレア首相自ら、気候変動について、ブッシュ大統領と差しで会談した場面もありました。ただ、ブッシュ大統領の反応はいまいちで...。
 とは言え、サミットで、アメリカも含め、先進国と途上国との間で、気候変動やエネルギーに関する新たな対話を開始することに合意したのは、なかなかの成果。また、再生可能エネルギーの促進、途上国のクリーンエネルギーへの移行支援などを盛り込んだ「グレンイーグルズ行動計画」【4】も打ち出されました。



【4】 グレンイーグルズ行動計画
G8グレンイーグルズサミットの結果概要(環境省HP)
「気候変動、クリーン・エネルギー、持続可能な開発」仮訳(外務省HP)
議長総括(外務省HP)
第5位:国連 ミレニアム生態系アセスメント報告書公表
 国連の呼びかけで2001年にスタートした、ミレニアム生態系アセスメントの総合報告書が、3月30日に公表されました【5】。95カ国から1,300人以上の専門家が参加した大規模なプロジェクトで、報告書は、人類が過去50年間、かつて無いほど急速に生態系を変えてきたことを指摘。水供給、大気質や水質の管理、自然災害の防止など、生態系が提供してきた多様なサービスのうち、約60%近くが悪化しており、今後、さらに深刻になるおそれがあると警鐘を鳴らしました。

豊かな生態系は、「地球の生命維持装置」(UNEP テプファー事務局長)
豊かな生態系は、「地球の生命維持装置」(UNEP テプファー事務局長)




【5】 ミレニアム生態系アセスメント
Millennium Ecosystem Assessment(ミレニアム生態系アセスメント)
ミレニアム生態系評価概要(国連大学高等研究所仮訳の日本語訳も入手可能)
第6位:大型ハリケーン アメリカを襲撃
 大規模な自然災害の続いた今年、アメリカも、大型のハリケーンに相次いで襲われました。特に、ハリケーン・カトリーナは、全米史上最悪の被害をもたらしたとされ、EPA(米国環境保護庁)も、捜索・復旧活動の支援、氾濫水の水質調査、有害廃棄物の回収など対応に追われました。
 ハリケーンを契機に、ブッシュ大統領も、不要不急の場合には、自動車の運転を控えるなど、国民に省エネを訴える異例のスピーチを行いました(石油精製施設が破壊され、石油価格の高騰に拍車がかかった)。相次ぐ異常気象の背景として、地球温暖化の影響も指摘されていますが、ついに、ブッシュ大統領を動かしたか?



第7位:フランス 環境憲章を公布
 フランスでは、環境に対する権利と義務を憲法上位置づける、環境憲章に関する憲法法案が議会で承認され、3月1日に公布されました。これは、2002年の大統領選挙でのシラク大統領の公約を実現したものですが、基本的人権、社会権と並んで、環境権を位置づける歴史的な改正となりました。環境憲章では、環境に関する権利と義務に加え、予防原則や持続可能な開発など、政策上の基本原則も示されています。
 さすが、人権宣言の国、フランス、まずは原則から明確に。



第8位:北京再生可能エネルギー国際会議
 風力、ソーラー、バイオマスといった再生可能エネルギーの利用拡大を呼びかける「北京再生可能エネルギー国際会議(BIREC2005)」が、11月7日・8日、中国の北京で開催されました。最終日には、再生可能エネルギーの拡大状況を審査・評価するための国際的な組織の設置、国際協力の推進などを盛り込んだ「北京宣言」が採択されました。  ちなみに、中国政府は、2010年までに、電力の10%を再生可能エネルギーで賄い、この割合を2020年までに20%にするという積極的な目標を掲げています。今後の取り組みに期待したいです。

膨らむ再生可能エネルギーへの期待
膨らむ再生可能エネルギーへの期待




第9位:ドイツ 環境機器輸出で世界一に
 ドイツ連邦環境省が9月に発表したデータにより、ドイツが、アメリカや日本を抜いて、世界一の環境機器輸出国になったことが明らかになりました。トリッティン前環境大臣(緑の党)は、野心的な環境政策がなければ、このような結果は生まれなかったと評価しています。
 総選挙後、1998年から続いてきた赤緑連合(社会民主党+緑の党)に代わり、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党の大連立政権が発足したドイツですが、引き続き、環境先進国としてリーダーシップを発揮できるかが注目されます。



第10位:イラク南部湿地 回復へ向かう
 2005年環境重大ニュースの締めくくりは、戦禍に苦しんできたイラクで、湿原が回復しつつあるという、少し明るいニュースです。イラク南部湿原(メソポタミア湿原、聖書の「エデンの園」があった場所とも言われる)は、旧政権下の大規模な灌漑などで、ほぼ壊滅的に失われていました。しかし、日本の復興支援等【6】により、約4割近くまで回復したことが、UNEPが8月に開催した国際シンポジウムで明らかになりました。また、水の浄化事業、戦争で破壊された工場の跡地などの汚染地域の浄化事業も始まっています。
 こうした平和的な環境貢献が、今後は増えることを祈りつつ。



【6】 日本政府による国連イラク復興信託基金への助成を活用して行われている。
イラク人道復興支援関連情報(首相官邸)
国連環境計画(UNEP)はイラク湿原復元プロジェクトに着手
イラク南部湿原環境管理支援プロジェクト
 以上、2005年の海外環境ニュースを足早に振り返ってみました。
 上位には、やはり(!?)、気候変動関係のニュースが並びました。中でも、今年は、COP11&COP/MOP1の議長国として、広範な議論をまとめ、将来の枠組みづくりにつなげたカナダ、また、G8議長国&EU議長国として、アメリカや途上国を対話の場に引っ張り出し、協力可能な分野を見出そうと奔走したイギリスの活躍が光っていました。もちろん、排出量取引スキームをスタートさせたEUも。今後の国際交渉では、京都議定書の第一約束期間が終了する2012年以降の取り組み、アメリカや途上国の参加のあり方について、どれだけ具体的な議論ができるかが(知恵が絞れるかが)焦点になります。リーダーシップを発揮するのは、どこでしょう。
 なお、10件を選んでみましたが、他にも、国連改革や国連ミレニアム開発目標の進捗状況の評価について話し合われた国連首脳会合(9月)【7】、アメリカ議会のエネルギー法案可決(7月)【8】、イギリスの森林認証制度や違法伐採木材対策の進展(8月)【9】、トリノ・オリンピックがカーボンニュートラルを目指す(11月)【10】等々、話題になったニュースがいくつもありました。来年も、示唆に富んだ、有意義な海外環境ニュースをお伝えしていきたいと思います。
 2006年が、皆様にとっても、環境にとっても、素晴らしい年となりますように。
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【7】 国連首脳会合開催
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=11331&oversea=1
【8】 アメリカ議会 エネルギー法案を可決
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=11017&oversea=1
【9】 森林認証スキームの改革が進む
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=11133&oversea=1
【10】 第6回スポーツと環境世界会議開催
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=11783&oversea=1
(文章・写真)源氏田尚子  協力:海外ニュース ワーキンググループ
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