ガーリックマスタードは、ニンニク臭のあるアブラナ科の草本性の植物だ。食用もしくは薬草としてヨーロッパからもたらされた。1868年にニューヨーク州で初めて記録され、1991年までには中西部から北東部にかけての28州に分布している【3】。この地域に持ち込まれた外来種である。繁殖力の強い植物で、5月末から6月にかけて種子をつける。いろいろと忙しい時期だが、種子が成熟する前に除去作業を完了しなければならない。
久々にわれらがブライスさんの担当するプロジェクトに参加することになった。
「みんな、今日はこの一帯にあるガーリックマスタードを一本残らずやっつけるぞー!」
大勢のボランティアを前にブライスさんも張り切っている。
このところ、学生さんの「ボス」に仕えて作業することが多くなっていたが、準備や安全管理の万全な公園職員担当のプロジェクトは本当に安心して参加できる。抜き取った植物を入れる袋が十分に用意され、作業工程がしっかりしている。そんなごくごく当り前のことすらありがたく感じられた。
長くインタープリテーション部門にいたブライスさんだけに、産まれたばかりの仔ジカ(ホワイトテイル・ディアー)が息をひそめてうずくまっていたりすると、その場で即座にインタープリテーションが始まる。何の変哲もないオークの森にも、数え切れない生き物の物語が息づいていることを実感する。
ブライスさんは、ボランティアプログラムの特徴をうまく生かしてプロジェクトを動かしていた。このプロジェクトがしっかりとしていた、もうひとつの理由だ。ボランティアには様々な人がいる。1日しか参加できない人、10名単位で動員が可能なグループ参加者、数は少ないが高い専門的技能を持つSCA奨学生など。
私たちが、練習を兼ねてバターナッツの予備調査をしていた5月、ブライスさんはGISの知識のある大学生ボランティアを連れて、ガーリックマスタードの分布調査をしていた。分布面積と密度から、大まかなの作業計画をつくり、ボランティア・コーディネーターのメアリーアンさんに伝える。必要なボランティアをホームページで募集したり、事前に研修目的でボランティア活動の申し込みをしていた団体に打診したりすると、案外簡単に必要な人員を集めることができる。もちろん、ビジターが少ない平日には、手が空いているインタープリテーション部門や環境教育部門のボランティアも動員される。こうしてかき集められたボランティアで一斉に除去作業をするため、最近ようやく数も減ってきたそうだ。
除去作業が行われた区域はGIS上に記録され、翌年以降の除去作業の資料となる。