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2006年環境重大ニュース
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No. 2006年環境重大ニュース
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Issued: 2006.12.28
2006年環境重大ニュース(海外編)
 今年もあっという間に1年が過ぎました。
 トリノ冬季オリンピックで幕を開けた2006年、皆様にとってはどのような年でしたでしょうか?
 EICネットでは、今年も1年間を振り返り、海外環境ニュースの担当一同で、重大ニュース(十大ニュース?)を選んでみました。2006年、「画面」を賑わしたニュースは…?!
第1位:イギリス スターン・レビュー報告書 直ちに気候変動対策をとるよう強調
 11月の気候変動枠組条約締約国会議・京都議定書締約国会合(COP12・COP/MOP2)の直前に、イギリスが公表したスターン・レビュー報告書。世界銀行の元チーフ・エコノミストという大御所、スターン博士が、「気候変動対策を対策に必要なコストは世界のGDPの1%。しかし、何もしなければ被害額はGDPの20%に及ぶおそれもある」という分析を示し、直ちに対策を講じるよう呼びかけました。COP12・COP/MOP2では、国連のアナン事務総長も演説の中でこの報告書を取り上げ、大きな話題となりました。
 異常気象の頻発など、気候変動の影響への適応対策も重要な議題となった今回の会議。迫り来る地球温暖化の脅威を目前に、後戻りできない時点に到達する前に、思い切った対策をとることができるか、決断が迫られています。


第2位:「不都合な真実」各国でセンセーション
 「不都合な真実」は、アメリカのゴア元副大統領が、気候変動の脅威を訴え、行動を呼びかける姿を追ったドキュメンタリー映画。今年度のアカデミー賞(ドキュメンタリー部門)の呼び声も高いようです。
 欧州各国の環境省も絶賛。イギリスやドイツでは、環境省主催の上映会が行われました。フランスでもエコロジー・持続可能な開発省が映画への協賛を行っています。
 日本での公開は年明けからだそうですが、今から楽しみです。

「不都合な真実」 1月20日(土)からTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー 配給:UIP映画
「不都合な真実」
 1月20日(土)からTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー
 配給:UIP映画



第3位:アメリカ議会 民主党の躍進により 温暖化対策の強化に期待
 アメリカでは、11月に行われた中間選挙の結果、民主党が勝利を収め、議会上下院で多数派となりました。
 中でも、カリフォルニア州選出で、温暖化対策にも熱心なバーバラ・ボクサー議員が、上院の環境・公共事業委員会委員長に就任(年明けから)。ボクサー議員は早速、他の民主党議員とともに、ブッシュ大統領に対して、温室効果ガス排出規制法案を速やかに通過させるよう求める書簡を送っています。
 国内の温暖化対策や国際交渉でのアメリカの態度にも、今後、変化の兆しが現れるでしょうか?!


第4位:ドイツ 2006年FIFAワールドカップ グリーンゴール見事に決まる!
 ドイツでは、サッカーワールドカップ開催に向け、3年前から、ワールドカップの環境コンセプト「グリーンゴール」を準備し、様々な環境対策を実施してきました。
 その甲斐あって、世界初の「カーボン・ニュートラル」なワールドカップを実現! ワールドカップの開催に伴って排出されるCO2(スタジアムの照明や観客の輸送などに伴って発生)を、国内外の様々な取り組みで完全に相殺する見込みです。
 観客の7割が、公共交通機関を利用したことも、目標を上回る成果でした(当初の目標では5割)。

グリーンゴール対策チーム(後列左から3人目がドイツのガブリエル環境大臣)
グリーンゴール対策チーム(後列左から3人目がドイツのガブリエル環境大臣) (C)Öko-Instituts



第5位:トリノ冬季オリンピック 環境でもゴールドメダル
 トリノ冬季オリンピックも、環境にやさしいスポーツイベントとして高い評価を得ました。
 同大会では、環境マネジメントの国際規格「ISO14001」やEUの環境管理・監査制度(EMAS)に適合した環境管理システムを導入。会場周辺のホテルに、EUのエコラベルを取得するよう奨励するなど、様々な取り組みを行いました。
 また、オリンピックをカーボン・ニュートラルとすることを目指す「HECTORプロジェクト」を展開。国内外のエネルギー効率化事業、再生可能エネルギー事業を通じて、オリンピックの開催に伴って排出されるCO2の約7割を相殺することに成功しました。


第6位:レバノン沖で重油流出 環境影響への懸念広がる
 混迷の度合いを増す中東情勢ですが、7月には、イスラエルが隣国レバノンを攻撃。火力発電所が破壊され、大量の重油がレバノン沖に流出しました。油は沿岸150キロに及び、住民の生活や海洋環境への影響が心配されています。
 戦争は最大の環境破壊、こうした事態がなくなることを願ってやみません。

ベイルート北部 重油で汚染された海岸
ベイルート北部 重油で汚染された海岸 (C)2006, Ministry of Environment, Republic of Lebanon



第7位:コートジボワール 有害廃棄物汚染で住民が死亡
 アフリカ西部コートジボワール(象牙海岸)の都市アビジャンでは、8月、欧州を出航した船舶が投棄した有害廃棄物により、住民に深刻な健康被害が生じる事件が起こりました。有毒ガスを吸い込み、最終的には10人以上の住民が死亡、数千人が病院で手当てを受ける事態となりました。
 有害廃棄物の処理や汚染された土地の回復には約3000万ドルが必要とされ、コートジボワール政府は国際的な支援を求めています。
 途上国が先進国のゴミ処分場となっている現状を突きつけ、国際的にも大きな問題となった事件でした。


第8位:EU RoHS指令がスタート WEEE指令の実施も進む
 EUでは、7月1日から、RoHS指令(電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する指令)に基づき、電気・電子機器について、鉛、カドミウム、水銀などの有害物質を使用することが禁止されました。EUにパソコンやテレビなどを輸出している日本の企業も対応に追われたようです。
 また、電気・電子機器のリサイクルなどを進めるWEEE指令(廃電気・電子機器指令)も、今年から、ドイツやフランスなどで実施に移され、電子・電気機器の無料回収【1】がスタートしました。


【1】 WEEE指令上、無料での回収が義務付けられている。ただし、事業者は、製品の購入時に、回収やリサイクル等にかかるコストを上乗せすることができる。
第9位:アメリカ 超低硫黄ディーゼル燃料を導入へ
 超低硫黄ディーゼル燃料(ULSD)は、大気汚染対策の期待の星。最新の排出低減技術と組み合わせて、粒子状物質(PM)やNOxなどの大気汚染物質を大幅に削減することができます。
 EUでは2005年から段階的に導入されていますが、アメリカでも今年から導入され、燃料中の硫黄分を97%削減(500ppm→15ppm)。10月半ばにはディーゼル燃料の85%がULSDに変わりました【2】
 ぜん息や気管支炎などの呼吸器系疾患を予防するのに役立つと大いに期待されています。

排気ガスのクリーン化は急務
排気ガスのクリーン化は急務



【2】 EUでは、2005年から硫黄分10ppmの超低硫黄ディーゼル燃料(ULSD)を段階的に導入し、2009年には全てULSDとする。アメリカでは、今年から硫黄分15ppmのULSDが導入され、2010年に全てULSDとなる。日本では、石油連盟の自主的取り組みとして、2005年1月から硫黄分10ppmのULSDの販売を全国で開始しているが、規制の導入は2007年からの予定。
第10位:フランス ピレネーにヒグマを再導入
 フランスでは、絶滅に向かっているヒグマを救うべく、4月から6月にかけて、5頭のヒグマがピレネー山脈に再導入されました。
 実は2004年に最後のメスのヒグマが誤射され、自己繁殖が困難になっていたためです。
 「再導入して住民や家畜に危害はないの?」と心配する声もありますが、フランスのエコロジー・持続可能な開発省では、放したヒグマの位置を電話やインターネットで住民に知らせるなど、地元にも細やかな配慮をしています。
 現在は冬眠中だそうですが、春には子グマを連れた姿が見られるでしょうか?


 以上、2006年にお伝えした海外環境ニュースの中から、10件を選んでみました。相変わらずの独断ですいません…。
 気候変動関係のニュースが多くなりましたが、中でも、今年、気になったのはアメリカの動きです。ブッシュ大統領が京都議定書離脱を宣言してから、温暖化防止に後ろ向きな状況が続いていましたが、11月の中間選挙では、野党民主党が圧勝。環境問題に熱心な議員も多い民主党が議会多数派となり、ブッシュ大統領への圧力も増しそうです。また、アメリカ国内では、今年、カリフォルニア州が、2020年までに温室効果ガス排出量を1990年レベルに削減する州法【3】を制定するなど、地方レベルでの取り組みも進みました。来年以降、国内・国外への対応に、さらに進展があることを期待したいと思います。
 この他、今年は、トリノ冬季オリンピック、サッカーワールドカップと大きなスポーツイベントが多かったのですが、そこでの環境対策が光っていました。大勢の人が集まるスポーツイベントは、環境に関心を持ってもらう絶好のチャンスでもあります。普段、「環境」に関心のない人でも、何気なく、「観戦に行くときに、マイカーでなくバスや電車に乗ることがエコなんだ」と思ってもらえれば大成功でしょう。様々な環境対策や普及啓発活動を周到に準備した、トリノオリンピック組織委員会、ドイツワールドカップ組織委員会に脱帽です。
 なお、トップ10に負けず劣らず重要なニュースとして、EUが2003年以降の温室効果ガス排出量取引制度について協議を開始【4】、EU 新化学物質規制(REACH)に最終合意【5】、アメリカのEPAが全ての電力を再生可能エネルギーで賄う最初の連邦機関に【6】 といったニュースもありました。
 皆様が気になったニュース、トピックは入っていましたでしょうか?
 2007年も、皆様にとって、そして、環境にとって、素敵な1年となりますように。
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【3】 カリフォルニア州のシュワルツネッガー知事は、9月27日に、この「2006年カリフォルニア地球温暖化対策法(California Global Warming Solutions Act of 2006)」に署名した。
http://gov.ca.gov/index.php?/press-release/4111/
【4】 欧州委員会 2013年からのEU排出量取引スキーム改定に向け 論点を提示(2006.11.13 更新)
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=14666&oversea=1
欧州委員会 航空業界を排出量取引制度の対象に EU指令案を提案
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=14957
【5】 欧州議会 EU新化学物質規制「REACH」を採決
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=14901&oversea=1
欧州環境閣僚理事会 REACH、海洋環境政策枠組み指令に合意
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=14955
【6】 EPAが庁舎の全電力を再生可能エネルギーに
EPA 全ての電力を再生可能エネルギーで賄う最初の連邦機関に(2006.08.31 更新)
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=14056&oversea=1
EPA 本庁舎の全消費電力を再生可能エネルギーで調達(2006.03.23 更新)
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=12898&oversea=1
(EICネット海外ニュース担当 源氏田尚子)
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