ところで、ボランティア制度と一口に言っても、国立公園では様々な業務にボランティアが活用されている。そして、それぞれの業務において、ボランティアには異なった“専門性”が求められる。
国立公園の“花形”ともいうべきインタープリテーション業務では、公園内で見られる動植物や公園の歴史文化についての専門知識と、それらを伝える話術等が求められる。さらに、小中学生の団体を迎えることも多いので、教育に関する専門知識や経験が生きる。そのため、休暇中の現役教員や退職者は大歓迎される。
ビジターセンターなどでの接客業務では、公園の自然、歴史、利用施設、ガイドツアーなどに関する幅広い知識と、温厚な接客態度が求められる。キャンプ場のホスト役についても同様で、特に、人生経験が豊富で比較的長期間滞在できる“リタイア組”の老夫婦は、このような接客業務に向いている。このようなボランティアは、キャンピングカーで全米各地から集まってくる。国立公園側も、質の高い人材を求めて、キャンピングカーの雑誌などに募集広告を載せることも多いそうだ。
これに対し、資源管理業務やメンテナンス(維持管理)業務では、上記のような“専門性”や話術、語学能力は必要とされない。多少の野外活動の知識と体力があれば、誰でも参加できる。短期間の滞在、学生、接客が得意でない人、言葉の得意でない外国人などにも広く参加の機会を提供してくれる。さらには他の業務の余剰人員についても柔軟に受け入れることができる。
また、自然管理業務は、野生生物調査、GISなどを用いたデータ管理、水質・大気環境調査などの経験を積む絶好の機会でもある。このため、学生や海外からの研修生の実習の場としても幅広く活用されている。このように、資源管理業務でのボランティアの活用は、単に公園の管理補助にとどまらず、様々なボランティアのニーズに対応するための重要なツールのひとつにもなっているようだ。