サガロ国立公園
【6】の名称は、サガロというサボテンに由来している。枝のつき具合によっては人にも見えるそのユニークな姿は、誰もが「ああ、これか」と認めるサボテンの「代表選手」だ。
「このくらいの大きさになるには200年ほどかかります」
砂漠の厳しい環境のため、生長速度は相当遅い。ビジターセンターには、この地域でみられる様々なサボテン、野生生物や、アメリカの砂漠の分布に関する展示などがある。
この公園で面白かったのは、入場料金が公園の入口ではなく、特定の道路で徴収されていたことだ。料金は、サガロが立ち並ぶ中をゆっくりとめぐる周回道路の入口で徴収される。有料公園というと、全ての利用者から料金が徴収されるものと考えてしまいがちだが、こういう方法だと訪れる方も気が楽だ。料金を「とれるところで」「とれる人から」徴収するという考え方がおもしろい。時間がなくてビジターセンターに立ち寄るだけなら、わざわざ入場料を支払う必要はない。
考えてみれば、公園側にしても、徴収ゲートの数が少なければそれだけ徴収のための人件費や施設を削減することができる。また、公園としての魅力が相対的に乏しい米国南部乾燥地帯の公園では、利用者の支払い意思も低くなってしまうだろう。これが現実的な選択といえなくもない。
話はそれるが、日本の国立公園でも料金を徴収すべきではないか、という議論は古くからある。確かに、有料化に値する魅力がある公園も少なくない。それでも、いろいろな理由からこれまで国立公園の有料化は行われていない。一部には、「日本は自然が豊かでどこにでもあるものなので、お金を支払ってまで自然を楽しむという意識は薄いから有料化は難しい」という意見もある。しかしながら、その点はアメリカも同じではないかと思う。これまでの開拓の歴史から言っても、木材など、お金になりそうな自然資源があればとにかく収奪的に利用して、経済的な発展を遂げてきた国だ。景色がきれいだからと言ってすんなりと入場料金を支払う利用者が多いとは思えない。むしろ、国立公園を訪れる利用者は、単に自然の魅力に対して料金を支払っているのではなく、直接的な「サービス」に対してその「対価」を支払っているように思える。パークレンジャーによる自然解説プログラム、快適な利用施設、充実したパンフレットやパークニュースなどの印刷物などのビジターサービスがあってはじめて、公園自体の持つ自然の美しさや印象的な景観が総合的に評価され、支払いの意思が生まれるのではないだろうか。
→(その3)へ続く