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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第12話) レッドウッドの森のボランティア
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Issued: 2007.08.30
レッドウッドの森のボランティア[1]
 「ユー・ガイズ! まずは年輪計測の練習に行こう」
 私たちの上司のジェイソンさんが同僚のスコットさんと、さっそく私たち2人をフィールドに連れ出す。
 アメリカ国立公園での長期ボランティア研修も、2箇所目の研修地・レッドウッド国立州立公園に移り、新しい生活がはじまろうとしていた。

アメリカ横断ボランティア紀行 INDEX はこちら



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 目次
ジェイソンとスコット
レッドウッド原生林回復計画
レッドウッド二次林調査
ジェイソンとスコット
ジェイソンさんと。二次林の中には、太い切り株が散見される。

 ジェイソンさんの姓はテラオカ。日本人の血が4分の1ほど入っているが、日本語はまったく話せない。ロサンゼルス出身で、ケンタッキー州では会ったことのないタイプの人だ。
 一方、スコットさんはフロリダ州北部出身で、英語のアクセントがケンタッキー州の「なまり」にそっくりだった。
 
 事務所到着の2日目。ボランティア宿舎の片付けも一段落し、事務所の鍵の交付手続きなどを一通り終えたところだった。
 ジェイソンさんたちと近くのレッドウッド二次林に向かう。二次林に生育するレッドウッドは直径30〜40cm程度のものが多い。
 「このレッドウッドの樹齢を計ろう。伐採跡地の中には、いつ伐採されたのか、記録のないところも多い。そういうところでは、一番大きそうな樹木の樹齢から伐採年を推定するんだ」
 年輪の測定のため、外皮から木の中心部をめがけて中空の筒にスクリュー状の歯のついた器具をねじ込み、細長い木片(コア)をとる。直径5ミリほどのコアには年輪が縞状についていて、それを数える。随分乱暴なやり方だが、樹齢を調べるには最も確実なやり方だそうだ。
 「結構うまいね。ほぼ幹の中心をとらえているよ」
 おだてられながら、樹高を測定する方法とか、胸高直径の測定など一通りの調査方法を教わる。
 「それじゃ、明日は現場に行こう」
 翌日は、さっそくフィールド調査に同行することになった。

レッドウッド原生林回復計画
放置され、荒廃した二次林

 レッドウッド国立公園内には伐採跡地が含まれている【1】。特に、1978年に拡張された国立公園の区域の大部分は伐採跡地で、レッドウッドとダグラスモミの二次林が広がっている。
 この地域では、以前から、森林伐採後に一度火を入れて残渣を燃やしてから、ダグラスモミの種子をヘリコプターで空中散布する方式が採られている。公園区域内の二次林も、国立公園編入前に伐採業者によって種子散布が行われ、そのまま放置されてきた。樹木は過密になり、やせ細ったままの木も少なくない。山林は荒れ、山腹などから流出する大量の土砂は大小の河川の河床を上昇させ、洪水を引き起こした。また、サケ・マス類の生息数を激減させ、それがトド、アザラシなどの海棲哺乳類にも大きな影響を与えている。
【1】 国立公園の歴史について
第11話参照
古い切り株から萌芽したレッドウッド

 このため、レッドウッド国立公園では一部の二次林を間伐して、レッドウッドの原生林に近い森に回復させる試みが始められている。私たちが参加することになった調査は、この「原生林回復計画」に必要なデータを収集することを目的にしたものだった。調査では、ランダムに設定した調査地点付近の材積量、樹木の生育状況などを調べる。樹高、胸高直径などから、森林の材積量や生産量を推計する調査方法が採用されている。
 なお、国立公園に隣接する民有林では、現在も森林の皆伐と伐採後の焼き払いが行われており、近くの森から煙があがっているのが見えることがある。依然、ずさんな森林伐採が行われているのが現状である。
 レッドウッドは針葉樹としてはめずらしく萌芽更新する。わざわざ種子をまかなくても、伐ったあと放っておけば切り株のまわりに木が生えてくるのだ。しかも、生長が速い。
 こうした木材伐採現場を見ていると、北米材が安価に流通する理由がわかるようだった。原生林を伐採し、跡地にとりあえず種を播いてほったらかし、また育ったところで伐採する。太くていい材は輸出し、細いものはパルプ工場にまわす。特に、カリフォルニア州北部からオレゴン州にかけての森林地帯は悲惨だ。人目につく道路沿いに「巧みに」森林が残されていたりもするが、航空写真を見ればその状況は一目瞭然だ。
 こうして生産された材木によって、日本の林産業が壊滅状態に追い込まれているのは皮肉に思える。日本では、スギ・ヒノキを主体とした樹木を植え、下草刈り、間伐などの手入れを怠らず、成木になれば伐採してまた植栽する。戦後の拡大造林は別にしても、やはり日本の森づくりや林業は素晴しいと実感される。
 レッドウッド材は、現在も日本向けに輸出が続いている。このスギの御先祖様に当たる針葉樹は、「レッドウッド」という名前が示すとおり、材は赤味を帯び、木目も美しい。タンニンを多く含み、腐りにくく強度もあることから、デッキ材など屋外工作物に適している。ダグラスモミなどのいわゆる「北米材」に比べてずっと軽量だが、市場価格は2〜3倍程度高いそうだ。

レッドウッド二次林調査
 「よし、じゃあそろそろGPS(全球位置情報システム;仕組みはカーナビと同じ)の電源を入れよう」
 事務所から州道に出たところで、スコットさんが調査用具から携帯型のGPSを取り出す。GPSは、あらかじめ道路とか障害物のないところで電源を入れ、「慣れ」させておくといいそうだ。ケーブルのついた車載用アンテナを車の屋根に取り付ける。
 「この森は樹高が高いから、外部アンテナがないと電波がうまく受信できないんだ」
 私たち2人が乗ったピックアップトラックは、州道から山道に入っていく。かなり急な坂道が続く。徐々に霧が出てきた。しばらく走ると、森の中に太い柱のような樹木が並んでいる。レッドウッドとダグラスモミの原生林だ。道の両側の斜面に広がっているのだが、前後の二次林とは明らかに樹木のスケールが違う。
 原生林を抜けたところを左に折れ、砂利道に入っていく。入口にはゲートがあり、鍵かかけられている。林道はかつての伐採用道路だ。未舗装路で起伏が多く、見通しの悪いカーブが連続する。ジェイソンさんは、クラクションを鳴らしながらカーブに入って行く。道の両側には荒れた森林が続いている。
二次林の中の管理用道路。かつては伐採のための作業用道路だった。

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