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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第19話) アラスカへ(その1)
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Issued: 2008.12.11
アラスカへ(その1)[1]
写真1:キーナイフィヨルド国立公園のエグジット氷河

 “トナカイ、ジャコウウシ、ホッキョクグマの生息地”、“米国49番目の州”、“ロシアから1ヘクタールあたり5セントで購入された土地【1】”、“ハワイ以外で旧日本軍との戦場になったところ”。アラスカにはいろいろな形容詞が当てはまる。オーロラが夜空を彩り、氷河が海に崩れ落ちる「米国最後のフロンティア」は、雄大な自然と魅力がいっぱいだ。  アラスカの面積は、米国本土の5分の1にも相当する。アラスカの国立公園と野生生物保護区には、他の米国本土48州にはない課題と管理政策があるに違いない。

 目次
アラスカ州保護区調査
ホーマーへ
アラスカマリタイム国立野生生物保護区
【1】 アラスカは、1867年に720万ドル(当時)でロシアから購入された。購入金額は、1平方キロメートルあたり約5ドル。
アラスカ州保護区調査
 アラスカの冬は早い。デナリ国立公園の公園道路の大部分は9月半ば過ぎに閉鎖されてしまう。レッドウッドでの仕事をやりくりして、9月上旬に2週間弱の日程を確保した。西海岸北部にあるレッドウッドから、アラスカはそれほど遠くない。ポートランド(オレゴン州)やシアトル(ワシントン州)を経由して、アンカレッジや北のフェアバンクスに定期航空便が飛んでいる。車で40分ほどのアルカタ空港まで行ってしまえば、アラスカまで一飛びなのだ。
 ただ、行程が2週間あるといっても、アラスカは広い。見所も山ほどある。当然ながら国立公園には行ってみたい。アラスカの野生生物保護区はスケールも生き物も魅力的だ。ぜひいろいろな人から話も聞いてみたい。がんばれば北極圏にも行けるし、海に崩れ落ちる氷河も見たい。実際に日程を組んでみようとすると、とても2週間では足りないことがわかる。
米国本土からアラスカへの主な航路
米国本土からアラスカへの主な航路
アラスカの保護区位置図(訪問先のみ)
アラスカの保護区位置図(訪問先のみ)
 いろいろ考えて、まずアンカレッジに入り、南のキーナイ半島を回ることにした。キーナイ半島の先端にある町、ホーマーにある、アリューシャン列島などアラスカの海洋性の保護区を管理するアラスカマリタイム野生生物保護区事務所を訪問した後にキーナイ国立野生生物保護区に立ち寄り、スワードのキーナイフィヨルド国立公園を訪問する。その後、一度アンカレッジに戻り、野生生物局地域事務所(リージョン7:アラスカ州)と国立公園局アラスカ地域事務所を訪問し、両機関のアラスカにおける保護政策について話を伺う。
 アンカレッジから北上し、デナリ国立公園を経由してフェアバンクスに向かう。フェアバンクスには、アークティック(北極圏)国立野生生物保護区、ユーコンフラット国立野生生物保護区の管理事務所がある。これらの保護区には車道がないため、小型プロペラ機をチャーターしなければならない。現地訪問はあきらめて、インタビューのための時間を十分とることにした。
 アラスカには舗装された車道がごく限られた地域にしかない。アラスカでは航空機が住民の足代わりになっているそうだが、飛行機を使うと時間もお金もかかってしまう。自動車でどこへでも行けてしまう他の米国本土48州とは大違いだ。
キーナイ半島及びその周辺図
キーナイ半島及びその周辺図
写真2:水上飛行機は住民の足になっている。
写真2:水上飛行機は住民の足になっている。
ホーマーへ
 ポートランドで乗り継ぎ、アンカレッジには夕方5時過ぎに到着。予約していたレンタカーを借り出して市内のホテルへと向かう。
 翌朝早くホテルを出発する。広い道路にはほとんど車はない。ここがアラスカだと思えばそれほど寒くないが、外で写真を撮っていると体がすぐに冷えてしまう。最初の目的地は、アンカレッジのすぐ南にあるキーナイ半島だ。地図上では近く見えるが、半島の先端部のホーマーまでは車で5時間の道のりだ。
 市街地を出ると、右手に入り江が広がる。その奥には山並みが迫る。かつて氷河に削りだされた山の斜面は険しく、急な角度で水面とつながっている。このターナガン湾にはベルーガという小型の白いクジラやシャチ、ハクトウワシがいるそうだ。山には高い木は生えていないようだが、潅木が紅葉している。
写真3:レンタカーのナンバープレートにはゴールドラッシュでアラスカに押し寄せた人の列が描かれている
写真3:レンタカーのナンバープレートにはゴールドラッシュでアラスカに押し寄せた人の列が描かれている
写真4:ターナガン湾。写真手前にはアラスカ鉄道の線路が見える
写真4:ターナガン湾。写真手前にはアラスカ鉄道の線路が見える
 アンカレッジから南へのびる車道は、交通量も少なく走りやすい。高速道路ではないが、紅葉した山の間を縫うようにのびる道路は、「観光道路」といっても誰も疑わないだろう。高い峰と峰の間には白い氷河があり、黒い岩肌と低い雲とのとりあわせはなかなか迫力がある。あいにくの雨模様だったが、秋の雰囲気がとてもよく伝わってくるようだ。  キーナイを過ぎたあたりから、徐々に天気が回復してきた。道路の右手には、広々としたクック湾が広がる。対岸のチグミット山脈(Chigmit Mountains)は、山全体が白く雪や氷で覆われている。白く輝いているのはおそらく氷河だろう。海に近づき気候が少し温暖になってきたのか、森が多く標高も高くなってきた。
 午前中から降っていた雨がようやく上がり、きれいな青空となった。日差しが暖かい。日の光を受けて海は緑色に見えるが、少し濁った独特の色合いだ。氷河からの雪解け水が入っているのだろう。
 ホーマーは、ハリバットフィッシングが盛んで、釣り人がたくさん訪れる。ハリバットは大きなカレイのような魚で、日本ではオヒョウと呼ばれている。日本では主に切り身で流通しているのでその大きさが想像できないが、大きいものだと畳1畳分もあるものがとれるのだそうだ。
写真5:道路脇からクック湾を挟んで見渡す山脈の風景は雄大だ
写真5:道路脇からクック湾を挟んで見渡す山脈の風景は雄大だ
写真6:ホーマースピットの先端からは対岸の山並みが一望できる。写真右端には氷河が見える
写真6:ホーマースピットの先端からは対岸の山並みが一望できる。写真右端には氷河が見える
写真7:電柱のような杭の上にとまっていたハクトウワシ

 ホーマースピットという砂嘴には、そのような大物を狙う釣り客向けの、釣り船店や土産物屋、食堂などが軒を連ねる。砂嘴の先端からは、正面に雄大な山並みと氷河が広がる。海面を渡ってくる風はさすがに氷のようにつめたい。ビデオカメラで風景を撮影していたら、あっという間に手がかじかんでしまい、ボタン操作もままならなくなってしまった。
 「あれ、ハクトウワシじゃない?」
 町中に戻る途中、妻の声に目を向けると、海沿いに立つ杭の上にハクトウワシが1羽とまっている。道行く人も少なくないが、誰も気にもとめない。ここら辺では珍しくもない光景なのだろう。
アラスカマリタイム国立野生生物保護区
 アラスカマリタイム国立野生生物保護区の事務所は、町に入ってすぐ、ハイウェイの右側にある。事務所は、アラスカ島嶼・海洋ビジターセンター(Alaska Islands and Ocean Visitor Center)が併設された、かなり大規模な建物の中にある。外観は石とガラス張りで、中にはギフトショップなどもある。
 ビジターセンターには、イヌイットのカヌーやアザラシの腸でつくられたようなパーカー(カッパ)なども展示されている。また、ロシア人などによって繰り広げられた毛皮目当てのラッコの乱獲に関する展示なども大変詳しい。もちろん、様々な野生生物のジオラマや、アリューシャン列島における生態系の長期モニタリングに関する展示もある。
写真8:ビジターセンターの外観
写真8:ビジターセンターの外観
写真9:ビジターセンターの看板
写真9:ビジターセンターの看板

○アラスカマリタイム国立野生生物保護区(Alaska Maritime National Wildlife Refuge)

 アラスカマリタイム国立野生生物保護区は、2,500以上の島や岩礁、及び海岸線からなる野生生物保護区。保護区の主要な部分は、北太平洋につらなる1,100マイル(約1,770キロメートル)に及ぶアリューシャン列島。それに加え、北はチュクチ海、南は南東アラスカのカナダ国境近くの島まで保護区が点在している。  面積は344万エーカー(約140万ヘクタール)で、その64%にあたる238万エーカー(約96万ヘクタール)がウィルダネスに指定されている。  アラスカで営巣する海鳥5,000万羽の8割程度がこの野生生物保護区に生息するといわれている。
写真10:雄大なアリューシャン列島の風景(写真提供:米国内務省魚類野生生物局)
写真10:雄大なアリューシャン列島の風景 (写真提供:米国内務省魚類野生生物局)
写真11:第二次世界大戦では日米の戦場にもなった(写真提供:米国内務省魚類野生生物局)
写真11:第二次世界大戦では日米の戦場にもなった(写真提供:米国内務省魚類野生生物局)

アラスカマリタイム国立野生生物保護区のホームページ

写真12:インタビューに対応してくれたバーノン・バードさんと

 野生生物保護区事務所で対応していただいたのは、上席生物学者(Supervisory biologist)のバーノン・バードさんという方だった。紹介していただいたワシントンDCにある魚類野生生物局(FWS)本局国際課のピーターさんによれば、アリューシャン列島における生態系管理の第一人者だそうだ。
 「ようこそ。ここでは日本の研究者とも協力しあって仕事をしているんですよ」
 日本とアラスカには共通の渡りルートもあり、その保全には日米の協力が不可欠である。例えばアホウドリの場合、いくらアラスカ近くの北太平洋の餌場が守られても、繁殖場所である日本の島嶼部の自然環境が守られていなければ個体群は安定しない。アメリカと日本は「日米渡り鳥保護条約」を締結しており、その協定に基づく保護事業の代表的な例がアホウドリの保護や調査研究活動だろう。2008年2月に行われた、伊豆諸島の鳥島から小笠原諸島の聟島へのアホウドリの引越しも、日米の専門家と両国政府の協力のもと行われている【2】
 アラスカと日本は意外と近い。渡り鳥にとっては、アリューシャン列島と千島列島を介して生態系が連続している。
【2】 アホウドリ保護の取り組みについて
環境省報道発表資料「アホウドリ新繁殖地形成事業によるヒナ移送日の決定について」(平成20年2月12日)
FWSの「海鳥インフォメーションシリーズ」のアホウドリの部分
アラスカと日本の位置関係

 「それから、島嶼における外来哺乳類の侵入は大きな問題です。これは日本にも共通しているはずですよ」
 もともと陸上に棲む哺乳類が存在しなかったアリューシャン列島の海鳥はそのような捕食者に適応していない。座礁した船舶から島に侵入するネズミは、auklets(ウミスズメ)、puffins(ツノメドリ、エトピリカ)などに壊滅的な打撃を与えたそうだ。
 「対策チームが組織されていて、遭難事故が発生すると現場に急行します。少数のネズミが島に入り込むことによって何百万という海鳥が消えうせる(wiped out)こともある。その意味では、石油の流出事故などより大きな生態的インパクトがあるといえます」
 今後も、新たな船舶の座礁によって、多くのネズミの導入事故が発生する可能性は高い。外来種であるネズミの駆除対策は、駆除の容易な小さい島から開始し、現在15の島で駆除を完了しているそうだ。
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