また、キツネもアリューシャン列島及び千島列島全域で海鳥の繁殖に大きな影響を与えている。
「ロシア人及びアメリカ人毛皮業者により持ち込まれたキツネによって、アリューシャンカナダグースが絶滅したと一時は考えられていました。ところが、奇跡的に繁殖コロニーが発見され、現在徐々に分布域を広げています。そういった保護増殖対策にも取り組んでいます」
キツネの駆除はすでに40年間の実績があり、のべ3,500〜3,600万エーカー(約1,420〜1,460万ヘクタール)の島で駆除を完了しているそうだ。駆除面積は年により異なる。2004年は職員2名、3ヶ月で20,000エーカー(約8,100ヘクタール)を処理し、前年は8名を2名ずつの4グループに分けて、180,000エーカー(約73,000ヘクタール)を処理したそうだ。
「アホウドリ保護をめぐっては、FWSと漁業関係者が数十年間敵対してきたため、保護対策も進展しませんでした」
アホウドリは、はえなわ(延縄)漁で流される釣針にかかって死んでしまうことが多い。このような混獲が個体数の減少に大きく影響している。ところが、絶滅危惧種法が施行されて、その対立関係に変化が見られたそうだ。
「法律により、アホウドリを殺傷すると漁を打ち切らなければならなくなってしまいました。このため両者は争うことをやめ、『どうすればアホウドリがハリにかからずに済むか』という課題に対して、協力して取り組むようになったんです」
検討の結果、はえなわに沿って長い吹流しを流すことが効果的だということがわかってきた。このため、FWSはこの吹流しを大量に購入し、漁船に提供することにした。その見返りとして、混獲の情報を報告することを求めた。これにより、混獲の状況がある程度正確に把握できるようになった【3】。
「アラスカ原住民との関係についても同じことがいえます。ただ単にそれぞれの島々に上陸して外来種を駆除しているだけでは、理解も協力も得られません。外来種の問題等を指摘、説明して理解を求めることが必要だということがわかってきました」
ロシア人の導入した外来のキツネは、原住民にとっては狩猟の対象になる。ところが、実はキツネは毛皮としての市場価値が低くなってきている。それに対し、カモ類は原住民の重要な収入源であり、タンパク源でもある。キツネの除去によりカモの数が増える方がメリットも大きい。この点について根気強く説明したところ、原住民の全面的な協力が得られたそうだ。
「言い換えれば、それぞれが自分の組織の中だけに閉じこもるのではなく、どうやって両者が合意できるか、どのようにそれぞれの制度ややり方を変えていくべきかを考えるようになったということですね」