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No. 2008年環境重大ニュース
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Issued: 2009.01.07
2008年環境重大ニュース(国内編)
 本2008年は、1997年に決まった「京都議定書」から丸10年を経て、いよいよ年初1月1日から第一約束期間に突入することになりました。この第一約束期間では、2012年までの5年間の平均排出量により、日本の目標値「マイナス6%」の達成が求められることになります。こうした流れを受けて、日本政府は7月に「低炭素社会づくり行動計画」を閣議決定。これにもとづいて準備を進めてきた「排出量取引の国内統合市場」が10月に試行的実施の決定し、「オフセット・クレジット(J-VER)制度」も11月に創設されました。なお、7月の洞爺湖サミットでは、より中長期の目標となる「2050年までに温室効果ガスの50%削減」に対する各国のビジョン共有が図られるなど、08年も地球温暖化の話題が大きく取り上げられてきました。
 一方、「生物多様性」に関わるいくつかの重大なできごとがあった年と、後にふりかえることになるかも知れません。5月にドイツのボンで開催された生物多様性条約締約国会議では、2010年の次回会議(COP10)の開催地が名古屋市に決定しました。国内では、5月末に「生物多様性基本法」が議員立法で成立した他、エコツーリズム推進法の施行(4月)や基本方針の閣議決定(5月)などもありました。7月のサミットでも、日本の豊かな自然をアピールしつつ、生物多様性保全に向けた気運を高めようといった取り組みも重ねられています。また、2月のアホウドリ聟島移送、9月のトキ放鳥など、野生生物保護の上でエポックとなるできごともありました。この他、年間を通して「国際サンゴ礁年」として、サンゴ礁に対する理解促進や保護の推進が図られてきています。
 
 洞爺湖サミットと並んで(いえ、それ以上に)世間の耳目を集めたことといえば、8月の北京オリンピック開催だったでしょうか。大気汚染をはじめとする環境汚染や民族問題などスポーツの祭典の影にある事件や問題にスポットが当たることもいくつかありました。国内ニュースでは、北京オリンピックを契機にした普及啓発の面で、いくつか関連する環境ニュースを紹介しています。
第1位:洞爺湖サミットの開催
 2008年最大の話題といえば、洞爺湖サミットの開催だったたと言えます。サミットに向けて、日本政府としても、国内各省および経済界との調整を進め、日本国としての目標が掲げられることになりました。サミットに先立つ5月には神戸市でG8環境大臣会合が開催されたことも併せて、関係市町などを中心に環境政策(特に温暖化政策)の普及啓発に大きく寄与する契機となったことでしょう。
 国内ニュースでは、洞爺湖サミット自体についての具体的なニュースはほとんど取り上げていませんが、先行したG8環境大臣会合の詳細や総括、またサミットに向けた普及啓発の取り組みなどに関するニュースを中心に、取り上げています。
 これらの記事を読み返しながら、サミットから半年を経た今、サミットのもたらしたものを思い起こしつつ、08年の環境政策についてふりかえってみてはいかがでしょうか。

洞爺湖サミット特設ページのロゴ(Copyright© : Ministry of Foreign Affairs of Japan)
洞爺湖サミット特設ページのロゴ(Copyright© : Ministry of Foreign Affairs of Japan)



第2位:排出量取引の国内統合市場、試行的実施が決定
 2008年12月、産業界から猛反発を受けていた国内排出量取引市場がいよいよ動き出しはじめました。
 05年1月にスタートしたEUの排出量取引市場。07年10月には、EU主要国と米国・カナダの数州、ニュージーランド等が、国際炭素行動パートナーシップ(ICAP)を創設。そうした状況の中で、排出量取引の日本国内統合市場の試行的実施が決定したわけです。これは、国内の省庁間調整や産業界との折衝を経て、7月29日に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」において実施が定められたものでした。いわば、洞爺湖サミットに向けた日本政府としての約束事項のひとつとして掲げられたもので、同サミットの開催が進展に一役買ったということが言えるのかも知れません。
 いずれにしろ、日本の都市名を冠した「京都議定書」の第一約束期間が開始した2008年、日本の目標「マイナス6%」を達成するためにももはや待ったなしの状況のなか、温暖化対策と企業の経営課題を結びつけていくための第一歩が踏み出されたといえるでしょう。

排出量取引の国内統合市場の試行的実施の概要(環境省提供)
排出量取引の国内統合市場の試行的実施の概要(環境省提供)



第3位:佐渡で、トキの野生復帰に向けた試験放鳥が実施される
 2008年秋、新潟県佐渡島にある、佐渡トキ保護センターの野生復帰ステーションで訓練中のトキの中から、10羽のトキが野に放たれました。Nipponia nippon という象徴的な学名を持つトキ。1981年1月に佐渡に残された野生のトキ5羽が捕獲されて、野生のトキが日本の野山から姿を消して以来、丸27年の時を経て再び朱鷺色の羽をはばたかせることになった記念すべきできごとだったといえます。12月に入って10羽のうち1羽の死骸が佐渡市内の山中で発見されましたが、佐渡海峡を越えて本州側に渡った個体も発見されるなど、トキたちの元気な姿が見守られています。
 また、今後の野生復帰の取り組みに向けて、12月には佐渡以外の分散飼育実施地の決定もありました。
 国内ニュースでは、放鳥の記念式典などのほか、放鳥後の確認情報などについて取り上げています。

新穂山中にて飛翔するNo.07(写真:環境省提供)
新穂山中にて飛翔するNo.07(写真:環境省提供)



第4位:“ゲリラ豪雨”が猛威をふるう
 2008年の流行語にもなった「ゲリラ豪雨」。ここ数年、猛暑などの異常気象が毎年の話題となっていますが、08年の夏は短時間で局所的な激しい雨を降らせた“集中豪雨”が各地で多発しました。突然の雨にずぶ濡れになった方もいらっしゃったのではないでしょうか。
 気象庁では、8月26日から31日に発生した豪雨について「平成20年8月末豪雨」と命名し、この気象現象をもたらした地球規模の大気の流に関する解析結果を取りまとめて発表しています。この他、西日本を中心にした夏の高温・少雨の異常気象についての分析検討結果についても発表しています。人為影響による地球規模の気候変動との関連性なども含めて、日々の暮らしに直接的な影響を及ぼす異常気象への関心が年々高まってきているといえます。


第5位:COP10の開催地が名古屋市に決定! 〜生物多様性条約のCOP9がドイツのボンで開催される
 5月19日〜30日の開期にドイツ・ボンで開催された生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)は、海外で開催された会議ながら、日本政府や地方公共団体、また企業やNGOなど関係者の関心を集めた注目の会議だったといえます。
 次回会議は2010年に開催されることが決まっていますが、その生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、いくつかの意味で大きな契機になることが期待されています。
 ひとつには、生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという「2010年目標」(2002年のCOP6で採択)の目標年であること。また国連が定める「国際生物多様性年」にもなっています。日本にとって重要な意味を持つのは、その節目の年に開催される記念すべき第10回締約国会議が、愛知県名古屋市において開催されることが決定したことです。日本国内および世界各国の注目が集まることで、生物多様性の取り組みに関して大きな進展が期待されます。
 
 なお、2008年は、奇しくも環境省生物多様性センターが設立10周年でもありました。「生物多様性」というわかるようでわかりにくい概念を浸透させるためにも、生物多様性センターの発信や取り組みがますます重要になってくることと期待されます。

主会場のマリティム:昼の光景(Pick Up!「シリーズ・もっと身近に!生物多様性(第11回)記事より)
主会場のマリティム:昼の光景(Pick Up!「シリーズ・もっと身近に!生物多様性(第11回)記事より)



第6位:アホウドリ、新繁殖地の聟島へヒナ10羽を移送
 2008年下半期の野生生物行政ではトキの野生放鳥が大きな注目を集めましたが、上半期の話題として、アホウドリの新天地への移送が話題になりました。
 一時は絶滅の危機に瀕していたアホウドリは、主に伊豆諸島・鳥島の燕崎と呼ばれる斜面でのみ繁殖していましたが、降雨などで火山灰が泥流となって流れ出す危険があったことなどから、より危険の少ない新たな繁殖地を形成するため、同繁殖地の裏側に位置する、火山灰の流出及び堆積が少ない初寝崎側の斜面にデコイ(アホウドリの模型)やアホウドリの鳴き声の再生装置を設置してアホウドリの繁殖個体の誘導に取り組んできていました。
 今回の移送は、鳥島以外の繁殖適地にアホウドリの繁殖地を分散させる計画として、かつて繁殖していた小笠原諸島の聟島での繁殖・定着を目的に実施されたものです。
 その後、移送ヒナの巣立ちが確認され、聟島から約3,900キロの地点(カムチャッカ半島基部の東方)まで飛来するなど、順調な成育がみられたとの報告も発表されています。
 なお、そのアホウドリは、1993年にスタートした保護増殖事業計画の結果、同年に約600羽だった推定個体数が、05〜06年のヒナ巣立ち数195羽(調査開始以来最高)、推定生息個体数(総計)約1,830羽に達したと報告されています。

衛星追跡の結果(環境省提供)
衛星追跡の結果(環境省提供)



第7位:古紙パルプ配合率の偽装事件が発覚 〜脆くも崩れ去った“環境にやさしい”の幻想
 近年はメールやインターネットなどによって年始の挨拶を済ませる人も増えてきているようですが、まだまだ年始の挨拶として年賀状が果たす役割は小さくないようです。日本郵便によると、2009年の年賀はがきの当初発行枚数は39億5000万枚。これは、2008年比で約98.2%(2008年の最終発行枚数は約40億2105万枚)だそうです。また、カーボンオフセット年賀(販売価格55円/枚)も6000万枚発行されています。
 ところで、2008年始にその年賀はがきの古紙配合率偽装事件が発覚したことを記憶されている方も少なくないことでしょう。その後、はがきのみならず、コピー用紙や一般印刷用紙など、製紙業界で広く蔓延する再生紙パルプ配合率の偽装が明らかになっています。さまざまな偽装事件が世の中に跋扈する中で、「製紙業界よ、おまえもか!」といったところでしょうか。当事者に迫られるべき責任と猛省はさることながら、一方で消費サイドのありように見直すべき点があると迫られるできごとだと言えそうです。


第8位:家庭部門の温室効果ガス削減の切り札、エコ・アクション・ポイントが事業発足
 「マイナス6%」の目標達成に向けてさまざまな取り組みがされていますが、家庭部門の温室効果ガス削減の“切り札”として導入された、「エコ・アクション・ポイント」制度。消費者による温暖化対策型の商品・サービスの購入や省エネ行動を経済的インセンティブを付与することにより誘導する仕組みと説明されます。商品・サービスの購入等によって、さまざまな業種が発行する共通のエコ・アクション・ポイントを貯めることで、商品と交換できるものです。今後、より幅広い普及と利用が期待されます。

エコ・アクション・ポイント事業発表会(環境省提供)
エコ・アクション・ポイント事業発表会(環境省提供)



第9位:世界初!ニホンウナギの成熟個体を海洋で捕獲 〜ニホンウナギの産卵生態調査で
 国内産ウナギを含め、食品の産地偽装事件が相次いだ2008年でしたが、同年に水産庁が実施したニホンウナギの産卵生態調査は大きな成果を残したと発表されています。マリアナ諸島西方の太平洋における同生態調査で、大型の中層トロール網によって、ニホンウナギ4個体とオオウナギ1個体及び仔魚が捕獲されたと報告。これは、ウナギ属の成熟個体としては世界ではじめての海洋における捕獲事例であり、ウナギの回遊や産卵生態の解明への大きな前進として評価されています。


第10位:北京オリンピックが開催 メダリストらが普及啓発に一肌脱ぐ
 世間一般のニュースとしては、2008年最大のイベントだったといえる「北京オリンピック」。北京市内の大気汚染や中国の民族問題など、新聞報道などでは環境に関わる報道もいくつかみられましたが、国内ニュースでは、あまり取り上げていません。関連する記事としては、北京オリンピック後に、メダリストを中心とした日本代表選手による環境政策の普及啓発への協力などに関する報道発表程度にとどまっています。
 この他、やや間接的ながら、スポーツつながりの関連のニュースとして、10月には「“スポーツと環境”グリーンアクションフォーラム」というイベントも開催されています。スポーツをきっかけとした環境問題の普及啓発への取り組みに、より一層の注目と期待が寄せられます。


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(EICネット 国内ニュース編集部)
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