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No. 2009年環境重大ニュース
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Issued: 2009.12.25
2009年環境重大ニュース(国内編)
第1位:政権交代と、環境政策の転回
 今年、世間の話題をさらったのは、自民党から民主党への「政権交代」。環境政策の上でも、少なからずの影響がありました。特に温暖化防止対策では、2020年の中期目標として前の自民党政権での「05年比15%削減(=90年比8%削減)」を大きく上回る「90年比25%削減」という意欲的な目標を掲げて、国際社会における「架け橋」としての日本を提唱しました。
 官公庁の報道発表ではあまり出てこなかったため、国内ニュースで取り上げることはそれほどありませんでしたが、役人生態学を専門とする教授の環境行政時評では、旧来の自民党的政治──いわゆる官僚主導政治──の実情と限界や問題点、またそれを打破するために民主党政権が取り組んでいることなどについて詳しく解説しています。


第2位:新型インフルエンザの猛威
 今春、米国やメキシコでの感染・発症が認識されたことに端を発した、新型インフルエンザの流行。当初は豚インフルエンザのヒトへの感染として報道され、その感染死亡率の高さが注目されましたが、その後、致死率はそれほど高くないことが発表されています。
 季節性インフルエンザとは抗原性が大きく異なり、免疫を獲得していない人が多い新型インフルエンザ。世界的な大流行の兆しに、世界保健機関(WHO)では警戒水準をフェーズ6に設定して、パンデミック(世界的な流行病)として宣言しました。
 国内でも、今なお新型インフルエンザの流行が続いています。学校では学級閉鎖が相次ぎました。
 厚生労働省に入った報告では、夏から冬にかけて発生した集団感染の発生件数は、累計で3万件以上にのぼるとしています。


第3位:エコポイントでグリーン家電の買い替え促進
 グリーン家電製品等の買い替え促進と経済危機対策を目的とした「エコポイント」制度が大々的にはじまった、2009年春。統一省エネラベル4☆以上(またはそれ相当)の、いわゆるグリーン家電等を購入するときに付与されるポイントを貯めて、商品券や地域産品、環境寄附などに交換できる仕組みです。増加傾向にある家庭からの二酸化炭素削減を謳って、身近で手軽に取り組めるエコとして、家電量販店等でも大いに宣伝されました。やや複雑で煩雑な仕組みやカタログ不備の問題などを抱えながらも、今年を象徴するキーワードの一つとして広く世間に浸透し、認知を広げることになりました。
 このエコポイント制度、来年3月31日までのグリーン家電購入によって発行され、4月30日まで登録申請可能、2012年3月末まで交換できる予定だそうです。
 
 なお、手前味噌ですが、当EICネットもエコポイント寄附対象事業として選定されています。機会がありましたらぜひ…。


第4位:エコカー減税と高速道路1000円乗り放題 ──車をめぐる経済刺激策と環境
 各車メーカーのCM等でも話題になった「エコカー減税」。環境に配慮した自動車(エコカー)を購入した消費者に対して、自動車重量税や自動車取得税などが免除または減額される制度です。買い替え促進によって、環境負荷を軽減するとともに、世界的不況もあって販売が低迷する自動車業界に対する経済効果を目的としています。
 一方、車つながりでは、土日祝日の高速道路1000円乗り放題という景気刺激策も、大きな話題と影響がありました。自動車交通への誘導や渋滞の激化を招くため、環境政策的にはむしろ逆行するものと見なせますが、その話題性と社会への影響はよくも悪くも今年の環境重大ニュースの一つにあげて然るべきトピックスと言えるでしょう。


第5位:COP15/MOP5の折衝と、2020年の中期目標
 12月7日からデンマークのコペンハーゲンで開幕した気候変動枠組条約第15回締約国会議・第5回京都議定書締約国会合(COP15/MOP5)。
 京都議定書を引き継ぐ次期枠組のあり方について、離脱した米国や、中国・インドなどの新興国を組み入れた新議定書の採択をめざす先進国と、京都議定書の延長を求める途上国との思惑が激しく対立しました。12月16日から始まった閣僚級会合では、議長の辞任という波乱の幕開けが新聞紙上などで報じられました。はたして、次期枠組に対する合意は得られるでしょうか。また今後の地球温暖化防止対策に向けた実効ある取り決めに進展は見られるでしょうか──。年の瀬にもっともホットな環境の話題として、連日大きく報道された、COP15/MOP5の交渉劇でした。

 なお、COP15の開幕前には、交渉に先だって、各国の温室効果ガス削減に向けた2020年の中期目標が立て続けに発表されてきました。1990年比の削減率だけでなく、2005年比の削減率やGDP当たりの削減率などわかりにくい評価軸が並び、各国の思惑が見え隠れするようですが、まずは国際交渉に向けた一歩が踏み出されていると言えるでしょうか。
 また国内では、会議の周知と啓発のためのキャンペーンとして、デンマーク大使と自転車で走る「COP15サイクリングツアー」が5月から6月にかけて企画・開催されました。


第6位:京都議定書第一約束期間の初年度の集計結果と、全世界のCO2排出傾向
 次期枠組の議論が注目を集める中、現行の枠組である京都議定書の第一約束期間(2008〜2012)初年度の集計結果が公表されました。環境省発表の速報値によると、温室効果ガスの総排出量は12億8,600万トン。基準年の総排出量と較べると、初年度の結果は「+1.9%」になるそうです。
 この値、実は前年度(2007年度)に較べると、「6.2%」減少しています。原因としては、金融危機の影響による急激な景気後退に伴うエネルギー需要の減少などがあげられるとしています。
 一方、世界に目を転じると、国際研究計画「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」がまとめたレポートでは、2008年のCO2排出量は世界金融危機にもかかわらず前年比で2%増加し、一人当たり年間1.3トンと過去最高に達したと報じています。
 
 はたして、「1990年比-6%」という日本が国際社会に公約した目標は達成できるのでしょうか。とともに、地球規模の気候変動は状況改善していけるのでしょうか──。今後も待ったなしの状況が続きます。
 
 ※なお、京都議定書の定める「基準年」は、CO2CH4N2Oについて1990年、HFCs、PFCs、SF6については1995年としています。


第7位:太陽光発電の買取制度、始動
 昨年末、住宅用太陽光発電の補助制度が再開しましたが、今年は11月になって太陽光発電の固定価格買取制度が始まりました。
 この制度は、太陽光発電からの余剰電力を一定の価格で買い取ることを電気事業者に義務付けるもので、買取価格は、住宅用は48円/kWh、非住宅用は24円/kWhと発表されています。温暖化防止対策の切り札として注目を集める自然エネルギー。太陽光発電に限らず、自然エネルギーの導入や利用が進むきっかけとして、今回の買取制度はうまく定着するでしょうか。
 なお、6月に開設したEICネット「エコナビ」では、いろいろな分野の専門家がナビゲーターとしてテーマごとのトピックスを紹介するコラム記事をお送りしています。その一つとして、NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)執筆の『自然エネルギー生活』が好評連載中です。最新の記事では、グリーン電力証書の活用や市民出資による自然エネルギー設備などについてわかりやすく解説しています。ぜひご一読ください。


第8位:グリーンニューディール政策 ──経済再興と環境保全の両立をめざして
 2008年頃から提唱されだした「グリーンニューディール政策」。世界的な金融危機への経済対策として、環境・エネルギー分野への大規模な公共投資を実施することで、雇用・産業対策とすると同時に、地球温暖化防止やエネルギー危機の解決をめざした政策パッケージです。1930年代に当時のルーズベルト米大統領が世界恐慌への対応として実施した「ニューディール政策」に由来して名付けられたものです。
 
 今年、日本でも“環境を切り口とした経済・社会構造の変革を通じて、あるべき日本の姿を提示し、活力ある日本を取り戻す”きっかけとする、「緑の経済と社会の変革」が取りまとめられました。ここでは、環境ビジネスの市場規模と雇用について、2006年の70兆円・140万人から、2020年には120兆円・280万人に拡大すると試算しています。
 また、環境省の補正予算では、地域グリーンニューディール基金が創設されています。目的は、当面の雇用創出と中長期的には持続可能な地域経済社会の構築をめざした事業を実施するためのものとしています。
 
 果たして内外さまざまな規模の“グリーンニューディール政策”は、経済の立て直しと同時に、環境問題の改善に向けた“切り札”となり得るでしょうか…。


第9位:予防原則を基盤に据えた化学物質管理の潮流で
 1992年の地球サミットを契機に、それまでの対処療法的な化学物質管理は、予防原則を基盤とし、有害性情報等を常時表示・公開するとともに市民参加による意思決定をめざしたあり方へと転換してきています。アジェンダ21の合意を受けて、2001年に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」が採択、さらに2006年には、化学物質による人の健康や生態系への悪影響を2020年までになくすという画期的かつ野心的な国際的取り組みである「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)」もスタートしています。
 今年は、5月にこれら国際的枠組を進める国際会合が相次いで開催されました。5月4日〜8日の会期でPOPs条約第4回締約国会議が、引き続き5月11日〜15日にかけては、SAICMの実施状況レビューなどを目的とした第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)が、ともにスイスのジュネーブで開催されました。
 
 便利で機能的な素材として広く使用される一方で、自然界に放出されるとなかなか分解されず、人の健康や生態系に甚大な影響を及ぼすこともある化学物質。そんな“両刃の剣”とのうまい付き合い方を見出していくことが、今後とも一層、求められます。


第10位:来年に迫った、生物多様性条約COP10の成功に向けて
 来年2010年の10月に名古屋市で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)。2010年は、国連が定める「国際生物多様性年」でもあり、また生物多様性条約の「2010年目標」のターゲット年にもなっている、生物多様性にとって重要な節目の年と捉えられています。
 その2010年を目前に控えた今年、生物多様性の保全やその持続可能な利用に世界の関心と期待はますます高まっています。国内でも、少しずつ「生物多様性」という言葉に対する認知があがってきているでしょうか。
 10月には、COP10で議長国となる日本政府がそのロゴマークとスローガンの決定について発表しました。スローガンは、「いのちの共生を、未来へ」(英語では、"Life in harmony,into the future")。ロゴマークと対応するかたちで、未来に向けた人類を含む全てのいきものとの共生を表現しているとしています。
 年末の今、約10ヶ月後に迫ったCOP10が契機となって、生物多様性保全に向けた機運と取り組みが進展することを祈念しつつ、今年の環境重大ニュース(国内編)を締めたいと思います。


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(EICネット 国内ニュース編集部)
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