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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第23話) さよならレッドウッド
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Issued: 2010.01.21
さよならレッドウッド[4]
 目次
<妻の一言>

 10月中旬にレッドウッドを出発しましたが、引越しの準備はなかなか大変でした。特に、いろいろ増えてしまった荷物の輸送が悩みの種でした。マンモスケイブからの引越しでもそうでしたが、アメリカには日本のような宅配便はありません。距離が長いせいか料金も高く、取り扱いも乱暴です。また、何といっても期日指定配達ができないのが困りました。大陸横断に1ヶ月ほどかかる私たちより荷物の方がずっと早く到着してしまうのです。今回の引越しでも、ワシントンDCで大変ご迷惑をおかけしてしまいました。

 研修の資料は増える一方でした。レッドウッドにいる間にかなり捨てたようですが、それよりも新しくもらってくる資料の方が多いようでした。そこで、書類以外は思い切って処分することにしました。
 事務所の談話室スペースの一画を借りて、生活用品やアウトドア用品のバザーを開くことにしたのです。貯金箱を置くだけの無人販売です。値段は1ドルから10ドルくらいまでにしました。小物から下駄箱のような家具まで日替わりで出品しました。
 卓上のバーベキューグリルはあっという間に売れました。ウェットシューズなども意外と早く売れました。机とか靴箱のような大物はなかなか引き取り手がありませんでしたが、売れ残った家具は、ボランティアハウスに寄付することにしました。
 収益はそれほどでもありませんでしたが、職場へのお礼の品を購入したり、事務所のあるオリックという集落へ寄付することにしました。

 次は車の点検でした。レッドウッドにいる間にすっかり親しくなった修理工場に持ち込んで見ていただきました。いくつか不都合な箇所が見つかり、また入院です。修理後はおかげでエンジンがかなりスムーズに回るようになったような感じがします。これで何とかアメリカを横断することができそうです。

 南部オペレーションセンターでは、私たちの研修成果についてプレゼンテーションをさせていただきました。その後、持ち寄りの昼食会(ポットラック)になり、感謝状と記念品を頂きました。記念品はきれいなレッドウッドの写真と真新しいボランティアの帽子です。帽子はわざわざワシントンDCの本部から取り寄せた国際ボランティア用のものだそうです。その上、誕生日が近かった私には何とケーキまで用意されていました。最後に参加者全員で記念写真をとりました。
 こうしてレッドウッドでの生活もあっという間に過ぎてしまいましたが、いろいろな方との出会やレッドウッドでの調査からさまざまなことを学ぶことができたように思います。

頂いた感謝状とレッドウッドの写真国際ボランティア用の帽子と感謝状
頂いた感謝状とレッドウッドの写真国際ボランティア用の帽子と感謝状

大きなバースデーケーキが用意されていましたポットラックの後、皆で写真を撮りました
大きなバースデーケーキが用意されていましたポットラックの後、皆で写真を撮りました

■自然資源チャレンジプログラム

 自然資源チャレンジプログラム(Natural Resource Challenge Program)は、国立公園局による自然資源管理に関する大規模な科学・モニタリングプロジェクト。すべての国立公園ユニットに存在する自然資源を回復し維持するために1999年に設立された。このプログラムでは、設立後5年間に公園ユニットにおける自然資源管理を強化することを目標としている。
 大きく、(a)インベントリー作成とモニタリング活動の拡充、(b)移入種対策の促進、(c)協力体制の強化、の3つを目的としており、次のような具体的な項目が盛り込まれている。

(1)自然資源インベントリー(目録)作成の促進
(2)大気及び水質を含むモニタリング活動の充実
(3)在来種及び絶滅危惧種とその生息地の保全
(4)積極的な非在来種の駆除
(5)資源計画の改善
(6)専門的な職員の確保
(7)環境保護の強化
(8)科学者及びその他関係者との協力の推進
(9)科学的研究のための公園利用の促進
(10)学習目的での公園利用

[インベントリー及びモニタリング]
 チャレンジプログラムの最大の目標は、インベントリー(目録)作成とモニタリング活動の拡充にある。インベントリーは各公園の自然資源に関するベースライン情報となるものであり、現在12の基本となるインベントリーが特定されている。インベントリーは主にほ乳類、鳥類、魚類、両生類、は虫類及び維管束植物を対象としている。
 モニタリングは、各公園における資源の状況を正確に把握するためのものであるが、これはこれまで国立公園内の資源の把握が十分でないという反省に立ったものである。

[非在来種の侵入とその対策]
 2000年度の初め、国立公園局は外来植物種管理のために4つの外来植物種管理チーム(Exotic Plant Management Team)を設置した。この4チームは、それぞれハワイ諸島、フロリダ地域、首都地域、及びチフアフアン砂漠/短茎草地プレーリーにおいて活動している。

[協力体制の構築]
 米国地質調査局(USGS)など、関係する政府機関などとの新たな協力体制も現在構築中である。いくつかの地域では既に、複数の大学による共同生態系研究ユニット(Cooperative Ecosystem Studies Units: CESU)が設置され、公園に対して技術的補助、研究及び教育活動の支援などが行われている。
 CESUに参加するためには、ユーザー(公園)側が10,000米ドルの会員料金(入会時のみ)を支払った上で、一人当たり15%の人件費を負担することにより、大学との共同研究、大学教員等による協力が円滑化されるというもの。類似の枠組みに共同調査ユニット(Cooperative Research Units: CRU)がある。CRUでは一会員あたり年間5,000〜10,000米ドルの支払いが必要となる。

[研究学習センター]
 研究学習センター(Research learning centers)の設置も、チャレンジプログラム構想の重要な構成要素である。客員研究者のために実験室スペースを提供し、公園の中で研究活動を行い、得られた公園に関する科学的知見を直接一般の人々にも提供することをねらいにしている。センター施設は、公園区域外に新たに建設されるか、もしくは公園内の既存施設の再利用(adaptive reuse of existing facilities)により設置される。
 最初の学習センターは、ロッキーマウンテン国立公園、グレートスモーキーズ国立公園、ポイントレイズ国立海岸、ケープコッド国立海岸、及びキーナイフィヨルド国立公園に隣接するアラスカ州のスワードなどに設置され、現在は18箇所に設置されている。


■バイタルサイン(重要生物指標)モニタリング

 公園内の自然資源のモニタリングは、各公園における資源の状況を正確に把握することを目的としている。一方、すべての資源を監視することは困難であるため、それぞれの公園における生態系の健全性を示す基本的な指標を特定する。これらを、「生態系の維持に不可欠な構成要素(vital components of the ecosystem)」といい、その変化を示す指標(これを「バイタルサイン(重要生物指標)」と言う)についてモニタリングを実施するのが、国立公園局の「バイタルサインモニタリング」である。
 バイタルサインは、例えば受粉媒介者の存在、絶滅危惧種もしくは危急種、大気及び水質、侵食及び斜面の安定性など、公園の質及びその重要なトレンドをより的確に評価するために必要な指標であり、それぞれの国立公園ユニットごとに設定される(表1参照)。
 バイタルサイン・モニタリングの特徴のひとつは、全米32のモニタリングネットワークを設立したことである(表2及び図6参照)。モニタリングネットワークは、従来の州境などの行政区域にかかわらず、生物地理学的な特質などに基づいて設定されていることが特徴である。
 モニタリング業務には重複が多く、小さいユニットには専門の職員がいないことも多いことから、モニタリングの機能をネットワーク内の大公園に集約することによりモニタリングの効率性が大幅に向上している。また、このネットワークは、モニタリングの枠を超え、公園同士の業務提携の枠組みも提供しており、今後予算不足が進むにつれ、ネットワーク内の公園相互の業務提携が進むことが予想される。

(表1)モニタリング対象として優先度の高いバイタルサインのリスト
(表1)モニタリング対象として優先度の高いバイタルサインのリスト

(表2)バイタルサインモニタリング ネットワークリスト
(表2)バイタルサインモニタリング ネットワークリスト

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記事・写真:鈴木渉(→プロフィール

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