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アメリカ横断ボランティア紀行(第27話)
マンモスケイブ再訪
Issued: 2010.10.07

デンバーを出発し、高速道路インターステート70号線をひたすら東へ向かう。コロラド州からカンザス州、ミズーリ州、イリノイ州などを横断する。今まで経験したことのない、内陸の大平原だ。途中、グレートプレーンズの穀倉地帯を通過する。この豊かさがあったからこそ、西部開拓前には6,000万頭ともいわれるアメリカバイソンが生息していたのだろう。
ミシシッピー川を渡れば、もうすぐケンタッキー州だ。徐々に紅葉したオークの森が多くなり、起伏の多い懐かしい石灰岩地形が現れる。
一連のインタビューを終え、次の目的地、マンモスケイブ国立公園をめざす。フォートコリンズを含め、デンバー周辺での滞在は全体で1週間ほどになった。
デンバーの市街地を出ると、道路の両側には平坦な乾燥地が広がる。マンモスケイブ国立公園はケンタッキー州にあり、そこまで、カンザス州、ミズーリ州、イリノイ州、インディアナ州の各州を東へと横断していく。
カンザス州に入ると、両側に牧草地や農地が広がってきた。小麦畑、トウモロコシ畑、牧草地と、豊かな穀倉地帯が広がる。これが農業国アメリカの穀倉地帯、グレートプレーンズなのだろうか。ちょうど東海岸と西海岸の真ん中あたりを走っているはずだ。高速道路からは集落らしきものは見えず、文字通り地平線まで農地が続いている。どこまでいっても同じ風景が続くような錯覚にとらわれる。景色が単調で眠くなるほどだ。時折、等高線に沿ったかたちで作付けが行われている畑があり、作物の列がまるで立体の地形模型の等高線のように波を打って続いている。途中ものすごい濃霧に包まれたりして、大陸内陸部の気象現象のスケールに驚かされた。
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カンザスシティーは大都市だった。早朝のうちに横断しようとしたが、運悪く通勤ラッシュに巻き込まれ、ジェットコースターに乗っているようなスリルを味わうことになった。走っている車はほとんどウィンカーを出さず「自由に」車線変更する。
「今の車の運転手、お化粧してたわよ」
妻が驚きの声を上げる。停まっている車ではない。ひどい運転をしていたので、追い越す際に見てみたのだという。雑誌を読んでいる男性ドライバーもいた。当然、運転しながら朝食を食べているドライバーはざらにいる。

少しずつオークの森が出てきた
ミズーリ州に入ると、道路脇には集落も増えてきた。地形の起伏が大きくなり、少しずつ山がちになってくる。オークの樹林も多くなってきた。セントルイスを通過するのも一苦労だった。
ようやくセントルイスの外周道路を走り抜けるとミシシッピー川が現れた。おどろくほど川幅が広い。川にかかる巨大な鉄橋をゆったりと走って米国東部に入る。昨年テキサス州の手前でこの川を渡ってから、本当に長い間旅してきたと感じる。
アメリカの国立公園の歴史は、このミシシッピー以西の広大な土地を合衆国が手に入れたことが出発点になっている。私たちの旅は、ルイスとクラークが西部を探検してから200年後、便利な自動車によるものだった。それでも、このミシシッピー川以西には、今でもすばらしい自然環境が残されていることが実感できた。

【図1】横断ルート図(カンザス州〜ワシントンDC)
ミシシッピー川を渡るとイリノイ州だ。通行する車両台数がぐっと減り、両側には鬱蒼としたオークの森が続く。一部に赤く紅葉しているのはメープルだろうか。
ケンタッキー州に入る手前でインディアナ州の南端をかすめる。地形は比較的平坦だ。黄葉したオークの林の間に石油の汲み上げ井戸がところどころにある。ケンタッキー州には西の方から入るかたちになった。雨が降っていて、道路両脇の森はいかにも晩秋のケンタッキーらしい、暗く落ち着いた雰囲気をたたえている。カントリーロードは、石灰岩地方に特有の緩やかなアップダウンを繰り返す。
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道の左右には、農場のバーン(納屋)や牧草地が見える。農場の中にあるため池は、シンクホールというすり鉢状のくぼみに水がたまったものだ。週末がハロウィーンなので、家々の玄関や庭にはカボチャや干し草で人形やデコレーションが飾ってある。一軒一軒工夫を凝らしている。
大統領選挙の直前で、(当時の)民主党の「ケリー」候補と共和党の「ブッシュ」候補への投票を呼びかける看板があちこちに立っていた。
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ハロウィーンで子供たちに配られるお菓子。アメリカの代表的お菓子の詰め合わせになっている

ホーチンズフェリーのアーバートさん
マンモスケイブ国立公園には北西端のゲートから入る。公園の南側のゲートが「正面玄関」だとすると、こちらは「勝手口」だ。周囲は石灰岩台地の景観をよくとどめており、雰囲気がいい。車が少ないので、ゆっくりと車を走らせる。
まずは、ホーチンズフェリーを訪問する【1】。あいにくその日、私たちの釣りの師匠であるアーバートさんは非番だった。久しぶりのフェリー駐車場には、以前と同様、釣り用のボートを牽引してきたトラックが停まっていた。
道路の両側はあいかわらずきれいにモーイング(芝刈り)されている。さすが“ブルーグラスステート(青草の広がる州)”ケンタッキーだ。また、それは、この国立公園がこうした管理のための予算と人員を十分に有しているということも意味している。道端の芝生では、七面鳥の一団が出迎えてくれた。
この日はビジターセンターなどには立ち寄らず、公園を通り抜けて、ホテルのあるケイブシティーへ向かう。ケイブシティーはマンモスケイブ国立公園のゲートシティーの1つで、ホテルも多い。
公園のメインエントランスは大幅に改修されていた。前所長が進めていた大規模なリニューアル工事の成果だ。驚いたことに、道路自体が付け替えられていて、それまで優先されていた通過車両より、公園内に進入する車両が優先されている。このあたりにもフィープログラム【2】の特徴がよく現れている。フィープログラムは入場料収入の一部を利用施設の整備などに充てるという制度で、これにより公園施設の整備が促進されたが、その一方で施設の過剰整備や利用促進への偏重なども懸念される。
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