環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第2講「Hキョージュ、循環型社会形成推進基本計画案を論じ、
環境アセスメントの意味を問う」
第1講「環境行政、2002年の総括と2003年の展望」
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No. 第1講「環境行政、2002年の総括と2003年の展望」
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Issued: 2003.01.09
H教授の環境行政時評 (第1講 その2)
キョージュ、温暖化対策を論じて暑く、もとい熱くなる

Aさん―まったく単純なんだから。さあ、始めましょう。やっぱり去年の最大の成果は温暖化対策の進展じゃないですか。
おととし秋のCOP7で京都議定書の実施にかかるルールが確定されましたけど、批准・発効がなされるかどうかはかなり覚束ないところがありましたよね。でも去年は飛躍的な成果がありました。
日本でも京都議定書を睨んでの温暖化対策大綱が閣議決定され、温暖化対策法も改正、そして京都議定書自体も国会で批准されましたよね。
 EUなども同じ頃批准。カナダやロシアも今年中には批准することを表明しましたから、これで京都議定書の発効要件クリアーは確実。
それに世界第二位の炭酸ガス排出大国の中国も批准の表明をしましたしね。残念ながら米国は京都議定書復帰はならなかったけど、昨年3月には独自の温暖化対策の発表も行い、炭酸ガス排出抑制に本格的に取り組むことになったじゃないですか。
8月末から9月までのヨハネサミットでも政治宣言、実施計画が出されたけど、そのなかでも温暖化対策の推進が謳われ、秋のCOP8でもデリー宣言を出すなど、ほんとうに昨年は温暖化対策元年と言っていいんじゃないですか。

H教授―単純なのはキミのほうだよ。確かに京都議定書はスタートに向けて大きく前進したけれど、米国抜きの京都議定書がどれだけ意味あるものになるかだよね。もし、米国が経済でも一人勝ちしたら、脱落するところが続出しないとも限らない。

Aさん―だって、米国だって独自の対策をとるって宣言したじゃないですか。

H教授―そう、10年後にはGDP当たりの炭酸ガス排出を18%カットするそうだ。

Aさん―すごいじゃない。えーと京都議定書では米国は7%カットだったんでしょ。

H教授―GDP当たりだといっただろう。そのGDPは毎年3%増大するそうだ。そうすると10年後には90年比で7%カットどころか、35%アップになるんだぜ。これのどこが新たな対策なんだ。大体GDPあたりの排出量は日本は米国の3分の1だ。たった18%カットなんてちゃんちゃらおかしい。

Aさん―なるほどセンセイの血圧が上がるわけよね。で、米国を京都議定書に復帰させるために米国の言い分をそのなかにいれるべきだというんですか。

H教授―冗談じゃないよ。現在の京都議定書は先進国全体で90年比5.2%の削減しかやらないんだ。一方、IPCCでは温暖化ガスの安定化のためには、いまただちに化石燃料使用を6割カットしなければいけないと言ってるんだぜ。
 その程度の削減ですら容易でないからと称して日米は柔軟性措置と称するさまざまな抜け道を主張、COP3でいわゆる京都メカニズムが定められた。
その京都メカニズムの細目をめぐって以降ずうっと日米とEUが対立。米国が離脱宣言したあとも、日本は従来の主張をそのまま繰り返し、ついにその言い分を飲ませたんだ。これ以上米国の言い分を取り入れるなんて、泥棒に追い銭だよ。

Aさん―じゃ、どうすればいいんですか?

H教授―ヨハネサミットで国務長官のパウエルがブーイングされたろう? ああいう風に国連でもWTOの場でも米国を道義的に孤立させればいいんだ。大体日本なんて米国の最大の債権国なんだからへいこらする必要なんてまるでないよ。

Aさん―センセイ、そりゃあまりにもリアルポリテイックスに無知すぎますよ。環境問題だけで国際政治は動いてるんじゃないですから。

H教授―わかってるよ。でも、そのくらいは言いたくなるじゃないか。
...(以下、テロについて、教授延々と語る)...

Aさん―センセイ、センセイ。日本の温暖化対策に話を戻しましょう。温暖化対策大綱を決めたり、温暖化対策法を改正したりして着々と進んでいるように見えるんですけど、実際はどうなんですか。

H教授―産業、民生、運輸各分野ごとに削減率を定めたり、そのメニューを打ち出したね。
つい先日ガソリンに植物系エタノールを混合させるなんて方向も打ち出しているけど、正直言って90年比6%削減に向けての担保がまるでないよねえ。やっぱり炭素税の導入しかないんじゃないかな。炭酸ガスの排出が依然増えている民生や運輸部門だってそういう経済的誘導措置の工夫次第で低減は可能だと思うよ。
そうしたほうが得で楽しいような社会システムにすりゃいいんだ。それこそがコーゾーカイカクなんだと思うよ。

Aさん―でも、国際競争に負けるからって通産省、あ、いま経産省か、とか産業界が猛反対で、環境省は力が弱いからできないんでしょう?

H教授―そうでもないと思うよ。各省にしたって産業界にしたって、表向きは反対しているけど、そうなったときの準備は水面下で猛烈にしてると思うな。

Aさん―えー、なんで、なんで?

H教授―EUは第一コミットメント期には多分90年比8%削減はできると思う。また、それだけの成算があったからCOP3のとき15%カットなんて言い出したんだ。2010年頃にはブッシュは史上最低の大統領だったって悪名だけを残してとっくに表舞台から姿を消してるにちがいないしー

Aさん―センセイ、センセイ。自信持って言うその根拠はなんですか。

H教授―因果応報。奢れる平家は久しからずって言うじゃないか。

Aさん―(がっかりして)諺だけが根拠なんですか。やっぱりセンセイって恍惚の人だ。

H教授―(きっぱり)止まなかった雨はない、明けなかった夜はない。

Aさん―(小さく)ほんと、ノーテンキなんだから

H教授―で、つづきなんだけど、日本だけが国際公約を守れないとなれば、世界のつまはじきになるから、どんな反対しようが炭素税導入は必至だと見てるにちがいない。だから、いまからそうなったときの生き残り策を練ってるよ。
その証拠にいきなり経産省がエネルギー特別会計を見直し、非課税だった石炭に課税したり、天然ガスの税率を上げたりし、増税分の半分は環境省が使えって言ってきて、環境省は目をシロクロした。つまり環境省の先手を打ってきた。
経団連も表向き反対はしても徹底抗戦の姿勢はみえない。こういうケースは他にもでてくるよ。
例えば建設省、いまの国土交通省だって、脱ダムの模索をはじめたし、自然再生事業にも積極的だ。林野庁だって緑の公共事業、つまり森林の保全再生のための雇用事業にも積極的になってきている。もちろん直接の目的・意図は別にあるんだろうけど、生物多様性というもうひとつのキーワードをうまく利用しているよね。
こんごとも環境省にイニシアチブを持たせないため、先手先手と打ってくると思うよ。
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