環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
トップページへ
第3講「Hキョージュ、水フォーラムを論じ、
ダイオキシンを語る」
第2講「Hキョージュ、循環型社会形成推進基本計画案を論じ、
環境アセスメントの意味を問う」
第1講「環境行政、2002年の総括と2003年の展望」
メルマガ申し込み 会員登録 ヘルプ サイトマップ
国内ニュース 海外ニュース イベント情報 環境Q&A 機関情報 環境リンク集 環境用語集 ライブラリ 森づくり宣言
No. 第2講「Hキョージュ、循環型社会形成推進基本計画案を論じ、
環境アセスメントの意味を問う」
page 1/4 
1
234
Issued: 2003.03.06
H教授の環境行政時評 (第2講 その1)
師弟、世界情勢を憂う


Aさん―センセイ、イラク情勢は風雲急を告げてますねえ。どうなっちゃうんでしょう?卒論なんてやってる場合じゃないですよねえ。だから留年することにしました。
H教授―こらこら、他の単位を落として、留年せざるをえなくなっちゃったんだろう。まったくさぼってばっかりいるからだよ。
ま、キミのいうように確かにイラク問題はひどいねえ。石油利権のために侵攻しようとしているのがミエミエだもんなあ。無理が通れば道理が引っ込むとぼやきたくなるよねえ。
救いはここにきて、国際的な反戦の動きが大きなうねりを見せ始めたことだねえ。ま、あのブッシュがそんなことでめげるようなタマじゃないだろうけどね。このことは環境問題にも大きな影を投げかけてる。

Aさん―戦争は最大の環境破壊ってことですね。

H教授―それもそうだけど、それだけじゃないんだ。EUはいま環境問題に熱心だけど、それは環境問題をテコにEU統合をさらに推し進め、米国に軍事的にではなく、政治的・文化的に対抗し、世界での求心力を高めようとする戦略だった。それが今度のイラク対応でまっぷたつに割れそうだもんな。

Aさん―それにしても日本の対応はお粗末ですねえ。

H教授―キミもそう思うか、ぼくは...(はっと気付き)こらこら、環境行政に話を絞れって前回言ったのはキミだぞ。

Aさん―そりゃそうですけど、政治でも経済でも、一見環境に関係なさそうなことにも常に関心を払えっていったのはセンセイですよ。

H教授―そうだなあ、あれから30年か...

Aさん―センセイ、世界が戦争になるかどうかってときに、昔の思い出にひたってたんですか?

H教授―30年前、アメリカは泥沼化し、敗色濃くなったベトナム軍事介入をついに断念、平和協定を結び、地上兵力の撤退をはじめた。腐敗しきった南ベトナム政府は見捨てられ、ついにサイゴンは陥落した。アメリカもこれで理のない軍事介入の愚を悟ったかと思ったけど、全然なんにも学んでないね。人間ってほんと愚かだと思うよ。

Aさん―30年前か、ワタシの生まれる10年以上もまえのことですね。センセイはそのころ環境庁の室長かなんかやってたんでしたっけ?

H教授―こらこら年齢詐称は犯罪だぞ。それにぼくをいくつだと思ってるんだ。

Aさん―カンオケにはまってるんじゃなかったですか。確か、そんなこと言ってましたよ。

H教授―はまってるのはカンオケじゃなくて、カラオケ!。さあ、はじめるぞ!

Aさん―でも、イラクや北朝鮮問題に霞んで、環境問題なんてまったく問題にならなかったんじゃないんですか。


 ページトップ

資源生産性概念を論じる ─循環型社会形成推進基本計画案公表
H教授―そんなことはない、例えば、年度内には循環型社会形成推進基本法に基づく、「循環型社会形成推進基本計画」が制定されることになっているけど、1月末にはその案が公表されパブリックコメントが求められている【1】

Aさん―でも、世間でそれが一大話題になっているわけじゃないでしょう?

H教授―だから、それを話題にしていこうとしているんじゃないか!

Aさん―センセイ、いつもあんな基本計画なんてものはお経の文句だって言ってなかったですか。

H教授―そのお経の文句を世論が支持、歓迎すると、各省だって、予算や人員もそれにシフトさせていくよ。それが積み重なっていくと、やがてお経の文句じゃなくなるんだ。それが日本型コーゾーカイカクの真髄。だけど、世論が無関心だったら、いつまで経ってもお経の文句のままで、やがて忘れ去られていくんだ。

Aさん―はいはい。 で、その基本計画案の目新しい点はなんですか?

H教授―数量目標を明示したんだけど、最終処分量とかごみの発生量という出口だけでなく、「資源生産性」といういわば入口の指標を公表した【2】

Aさん―資源生産性?

H教授―前回、資源と環境を一体にとらえるべきだと言ってただろう? やっぱり環境省でも似たような問題意識を持っていたようだ(→第1講より)。

Aさん―センセイの場合は外国人の名刺からの思いつきだけでしょう。

H教授―うるさい。単位あたりの投入資源で生み出すGDP量をどれだけ増やすかって目標を立てたんだ。いままでの資源生産性の推移もデータとして出しているんだけど、現在でも世界一だし、バブル崩壊以降のいわゆる「失われた十年」の間も一貫して上昇していることがわかる(→図2)。したがって、これをさらに増やすとともに、その投入資源中の循環資源の割合も増やそうってわけだ(→図3)。
【1】 「循環型社会形成基本計画(案)と資源生産性」
環境省では、循環型社会形成推進法(2000年6月制定)第15条の規定に基づく同基本計画(循環基本計画)策定のための検討を行っている。
現在、中央環境審議会環型社会計画部会においてとりまとめられた循環基本計画案が2003年1月28日(火)に公開され、2月17日(月)までの期間で広く一般からの意見募集を行っている。
循環型社会の形成に向けて、経済社会におけるものの流れを全体的に把握するための「物質フローの模式図」(図1)を作成し、3つの断面を代表する指標、資源生産性(入口)・循環利用率(循環)・最終処分量(出口)と、それぞれの数値目標を設定している。
なお、循環基本計画は、2002年9月に開催されたヨハネスブルク・サミットで国際合意された実施計画に基づき、各国が策定する持続可能な生産・消費への転換を加速するための10年間の枠組みとしても位置づけている。
各国が策定する10年計画を同じ指標によって立てることで、地球全体の資源保全・有効利用に資することから、特に先進諸国の協調をめざして「資源生産性」の共通指標化をG8環境相会合などの国際会議の場で呼びかけたいとしている。
循環型社会形成基本法
循環基本計画案に対する意見募集
循環基本計画(案)(PDFファイル)
図1 平成12年度 日本における物質フローの模式図 (環境省発表資料をもとに作成)   図2 資源生産性の推移 (環境省資料より作成)      
Aさん―どういう手段で? それに環境省にそんな政策手段はあるんですか。


H教授―残念ながら担保はなにもないし、政策手段ももってない。規制的手段ではむつかしいから、税制その他で経済的に誘導していくしかないんだけど、それは財務省や経産省がどれだけこの基本計画という閣議決定に協力的かによる。それとさっきも言ったように、市民パワーがどれだけ発揮できるかにかかっている。ま、それでも意欲的なんじゃないの。
ただねえ、ぼくは結果的にはGDPは減少してもやむをえないと思っているんだけど、最終的にGDPをどこまで伸ばせるのか、伸ばせばいいのか、という点をまったく議論していないのは残念だねえ。他にはなんかなかったかい?
 ページトップ
page 1/4 
1
234
次のページへ

【2】 「資源生産性という指標」
資源資産性は、産業や人々の生活がいかにものを有効に利用しているかを総合的に表す指標として環境省が提案。有限であり、かつ、採取に伴って環境負荷が生じる天然資源やそれを用いて製造された輸入製品などは、利用後など最終的には廃棄物等となる。
このため、より少ない投入量で効率的に生産活動を生み出すことができれば、環境負荷の軽減につながると考え、国内総生産(GDP)に対する天然資源等投入量の比率として「資源生産性」を算出することを提案している。
なお、「天然資源等投入量」とは、国産・輸入天然資源および輸入製品の量を示し、直接物質投入量(DMI)とも呼ばれる。
資源生産性の推移(環境省資料より作成)
バブル崩壊以降のいわゆる「失われた十年」の間も一貫して上昇していることがわかる。

Copyright (C) 2004 EIC NET. All rights reserved.