環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第3講「Hキョージュ、水フォーラムを論じ、
ダイオキシンを語る」
第2講「Hキョージュ、循環型社会形成推進基本計画案を論じ、
環境アセスメントの意味を問う」
第1講「環境行政、2002年の総括と2003年の展望」
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No. 第2講「Hキョージュ、循環型社会形成推進基本計画案を論じ、
環境アセスメントの意味を問う」
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Issued: 2003.03.06
H教授の環境行政時評 (第2講 その2)
脱ダム宣言と淀川水系流域委員会提言について


Aさん―そう言えば1月に淀川水系流域委員会が脱ダムを提言しましたねえ【3】。あれには国土交通省も怒り狂ってるんじゃないですか。

H教授―そんなことはないよ。国土交通省も承知の上の出来レースに決まってるじゃないか、委員を選ぶのは国土交通省なんだから。つまり、国土交通省は大きな反対運動が予想できるようなところでのダム建設はあきらめるって遅まきながら宣言したんだと思うよ。   そしてこれからは人目につくところでは環境配慮型事業、さらには自然再生型事業にも軸足を置くようになるんじゃないかな。彼らだってだれからも歓迎されないようなものはもうヤーメタってことになったんだと思うよ。
自然再生推進法が1月1日に施行され、27日には基本方針案を発表した【4】し、3月には第3回世界水フォーラムが関西で開かれる【5】。こうしたものを睨んでの発表じゃないのかな。

Aさん―へえ、すごい方向転換ですね。全国的にそうなんですか?

H教授―そんなことはないよ。旧来型の首長で、住民も目立った反対をしないところでは、必要性もコストパフォーマンスも関係なくやっていくと思うよ。ただ重要なのは、かなりの住民が反対し、マスコミでもそれが大きく取り上げられるような公共事業は、もはやムリ押しが効かなくなってきたということだと思うよ。

Aさん―そのまえからもあったじゃないですか、白保空港だとか、藤前干潟、三番瀬、吉野川第十可動堰、愛知万博、中海干拓、諫早干拓(→図4)。そうしたものの教訓を学んだということですか。

H教授―そう、よく知ってるね。キミがいま挙げた例は国際的なNGOが反対してきた例が多い、なんせ日本は外圧に弱いから。でも、いまやそれにとどまらなくなってきて、環境省の先手を打って方針転換を図ったんだと思うよ。
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【3】 「淀川流域委員会と脱ダムの提言」
平成9年の河川法改正により、河川管理の目的として、従前の「治水」・「利水」に加えて、「河川環境の整備と保全」が追加されている。
これまでの「工事実施基本計画」に替わり、長期的な河川整備の基本となるべき方針を示す「河川整備基本方針」と、今後20?30年間の具体的な河川整備の内容を示す「河川整備計画」が策定されることになった。後者では、地方公共団体の長や地域住民等の意見を反映する手続きを導入。これに基づき、全国20水系で流域委員会が設置され、すでに8流域において整備計画が作成されている。
淀川水系の整備計画についての意見を聴く場として2001年2月に近畿地方整備局により設置された「淀川水系流域委員会」は、河川や防災、環境などの専門家や自然保護活動団体の代表など55人で構成。2003年1月にまとめた同委員会の提言「新たな河川整備をめざして ?淀川水系流域委員会 提言?」では、ダムについて「生活の安全・安心の確保や産業・経済の発展に貢献してきている」と評価する一方で、「地域社会の崩壊など」をもたらすことや「河川の生態系と生物多様性に重大な悪影響を及ぼしている」などと批判し、計画段階や工事中のものも含めて「原則として建設しない」と明記した。
淀川水系流域委員会
同 脱ダムの提言について
環境アセスメント私論

Aさん―だけど、環境アセスメント【6】がそういうことのためにあるんじゃないですか。そういう公共事業の必要性と環境影響のマイナス面とを比較する仕組みじゃないんですか?

H教授―ちがうよ。アセスは基本的に環境にもっとも配慮された空港だとか道路だとか港湾を作るためのツールにしか過ぎない。空港や道路、港湾の必要性や効果、コストパフォーマンスまで問うものではないよ。

Aさん―え? そうなんですか。だけどアメリカなんかじゃ、なにもしないという選択肢も含めて代替案をいくつも準備してアセスをやるんでしょう。

H教授―それはそうなんだけど、日本のアセスの制度と運用は少しちがうんだ。事業の必要性をどう判断するかについては、また後で触れるとして、日本のアセスメントがアワスメント[7]だと言われてきたのを知ってるよね。ま、これはこれでやむをえない面があった。だって、日本の場合、事業の構想・計画時点で環境部局との調整だとか非公式の各省協議があって、そこで必要なら縮小などの変更を行い、実質的な調整がついてはじめてアセスするのが通例だったからね。だから、環境部局や環境省のがんばりでやめたものだって結構あるんだけど、それは表にでないからね。いま話題になったのは調整がつかないまま事業部局、事業官庁が突っ走ったものが多い。

Aさん―センセイ、センセイも係わったものもあるんでしょう? その話をしてください。センセイのつまんない一般論より、そういう生臭い話が聞きたい。

H教授―わかった、わかった。でも、それは次回にしょう。乞うご期待だな。
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【4】 「自然再生推進法」
過去に損なわれた自然環境を取り戻すため、行政機関、地域住民、NPO、専門家等多様な主体の参加により行われる自然環境の保全、再生、創出等の自然再生事業を推進するため、2002年12月議員立法により制定された法律。所管は環境省、農林水産省、国土交通省。
自然再生の基本理念として多様な主体の連携、科学的知見やモニタリングの必要性、自然環境学習の場としての活用等が定められており、また、自然再生を総合的に推進するため「自然再生基本方針」を定めることとされている。
この他、自然再生事業の実施に当たっては、関係する各主体を構成員とする「自然再生協議会」を設置することや「自然再生事業実施計画」を事業主体が作成すること等が定められている。
自然再生基本方針案へのパブリックコメント (→2月24日まで/締め切り済み)
自然再生推進法について(環境省自然環境局)
基本方針案(PDFファイル)
【5】 「第3回 世界水フォーラム」
来る3月16日から23日に、琵琶湖・淀川流域の2府1県、京都・滋賀・大阪を会場に開催される国際大会。水問題を通じて地球の将来について考え、行動につなげていくことを目的としている。参加人数は8千人を超える見込み。
国際シンクタンクの「世界水会議」が呼びかけてはじまったもの。1997年3月にモロッコのマラケッシュで開催された第1回世界水フォーラムで「世界水ビジョン」の作成が提案され、2000年3月にオランダのハーグの第2回でビジョンが発表された。第3回では、これを実行するための方法論や問題点などについて、各地の現場での経験を分かち合いながら議論される。
会期の最後、22・23日には世界の水担当閣僚による閣僚級国際会議も行われる。フォーラムにはNGOや一般市民も参加登録できるほか、水に関するフェアや子ども水フォーラムなども開催される。
第3回世界水フォーラム
【6】 「環境アセスメント」
道路、ダムなど、環境に著しい影響を及ぼす恐れのある行為について、事前に環境への影響を十分調査・予測・評価し、結果を公表して地域住民など関係者の意見を聞き、環境配慮を行う手続を総称して「環境アセスメント」と呼ぶ。
1969年に米国で法制化されたNEPA(国家環境政策法)に環境アセスメントの沿革が求められ、環境配慮のための民主的意思決定、科学的判断形成方法として考案されたのが、もともとの意味。米国では複数の代替案から最適案を選出する手続が最大の特徴となるが、国による諸事情を反映した制度構築が試みられている。
日本における環境影響評価法に基づく環境アセスメントでは、代替案の比較検討は必須要件ではなく、環境基準等の環境保全目標の遵守や環境影響の低減に向けた方策等により評価することとしているが、評価手法、評価手続の客観性の確保、環境アセスメントの結果そのものの拘束力の確保など、多くの課題が指摘される。
【7】 「アワスメント」
形式上実施されるだけで、結果は「環境に及ぼす影響は軽微である」などと事業計画を追認するにすぎないことの多い現状の環境アセスメント制度を批判的に揶揄するもの。計画に評価を「合わす」とアセスメントの語呂合わせによる造語。
日本では事業計画立案時に環境部局と非公式に協議し、必要があればその時点で縮小や計画変更を行うなどの調整が整ってはじめてアセスメント手続きに入ることが一般的であり、アワスメント的な環境アセスメントになるのはやむをえないとの指摘もある。
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