環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第9講 夏のできごと&温暖化対策税雑感
第8講 盆休み 四方山話 
-電力雑感、読者の便りPart2、環境教育法、大気行政体験記
第7講 亜鉛の環境基準をめぐって(付:レンジャー今昔物語)
第6講 半年継続記念 読者の声大特集(付:コーべ空港断章)
第5講 脱ダム、自然再生、環境教育 三題噺
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No. 第8講 盆休み 四方山話 
-電力雑感、読者の便りPart2、環境教育法、大気行政体験記
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Issued: 2003.09.04
H教授の環境行政時評 (第8講 その1)
N.Y大停電―電力雑感

Aさん―センセイ、夏ももう終りですね。ほんと短かったですねえ。

H教授―うん、今年は異常な冷夏だったなあ、しかも各地で豪雨災害。諸外国じゃ熱波や旱魃で大被害を出しているところもあるというし、世界中が異常気象といっていいんじゃあないかなあ。

Aさん―原因はなんですか?

H教授―わからない、自然の変動の範囲内なのか、CO2の増加のような人為的な要素がある程度かかわっているのかどうかもわからない。科学技術の進歩は著しいものがある。でも、複雑系っていうのかどうか知らないけど、こういう話になると科学ってまだまだ無力だよねえ。
もっとも永田町じゃ熱い夏みたいだよ。民主党と自由党が合併するとか、自民党総裁選でコイズミさんがどうなるかだとかね。

Aさん―はい、ストップ。そういう話はそこまで。
ところでニューヨークでは大停電だったそうですね。日本で起こったらと考えたらぞっとしますね。

H教授―いやあ、日本でも危ないところだったんだよ。不祥事で東京電力の原発がみなストップ。かろうじて運転再開が間に合ったから停電騒ぎなどは起きなかったけどね。

Aさん―でも不景気だっていうのに電力消費って伸び続けているんですよね。だから、発電所はまだまだ必要。でも地球温暖化のことを考えれば、火力発電はもう増やせないし、風力とか太陽光発電じゃコストがかかるうえにとても需要増を満たせそうにないでしょ。やっぱりもっと原発が必要じゃないかしら。

H教授―そりゃあ、あまりに短絡的だ。電力の消費を抑制することを考えるべきだよ。

Aさん―節電しろっていうんでしょう。でもそんなモラルに訴えたって効果ないんじゃないですか。
【1】 自然エネルギー
有限で枯渇性の石油などの化石燃料や原子力とは異なり、自然現象としてのエネルギーを取り出す、資源が枯渇するおそれのないエネルギーのことで、いわゆる新エネルギーに含まれる。枯渇性と対比させて「再生可能エネルギー」とも呼ばれる。
具体的には、太陽光や太陽熱、水力(ダム式発電以外の小規模なものを言うことが多い)や風力、バイオマス(持続可能なやりかたの場合)、地熱、波力、温度差などを指す。
利用に伴って資源が減少する性質のものではなく、持続可能なエネルギーであり、地球温暖化を引き起こす化石燃料などの代替物としての期待は大きい。ただし、こうした再生可能エネルギーだけで、現在のエネルギー需要は到底まかないきれない上、コスト高、不安定性などの問題点もある。
ドイツでは2000年の4月に再生可能エネルギー法(REL)が施行され、一次エネルギー消費および電気の消費において再生可能なエネルギーの割合を2050年までに50%に引き上げることが目標として掲げられている。日本では「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(代エネ法)」、「長期エネルギー需給見通し」及び「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」がエネルギー政策として施行され、再生可能エネルギーの占める割合を増大させるとしているが、まだまだ不十分との指摘も強い。
Renewable Energy Technologies(U. S. Department of Energy)
EICネット「環境Q&A」 ドイツの再生可能エネルギーについて

H教授―もちろんそうだ。だから経済的な誘導策が必要なんだ。電力の自由化だ、規制緩和だってことで、いま電力会社はコスト削減に必死だけど、ぼくに言わせりゃ電気代が安すぎるんだ。料金体系を見直して、一定量以上の消費に対しては電気代をうんとあげることによって消費抑制を図るべきだと思うよ。

Aさん―また暴論を。いまだって日本の電気料金はアメリカの1.5倍だっていうじゃないですか。

H教授―そんなコスト削減に血道をあげるからアメリカは大停電という騒動になったんじゃないか。
それに発電所のエネルギー効率って40%以下なんだ。つまり生み出されたエネルギーの6割以上を廃熱として捨てているんだ。これを有効に使えばいいんだ。

Aさん―まさかあ。そんなもったいないことをしているんですか。

H教授―タービンを回して発電するのは、それが技術的な限界らしい。でも、その廃熱を地域冷暖房だとかで有効活用はできるし、その技術も確立している。
だけど、電力の生産地と消費地が何百キロと離れていりゃムリ。だから既存の発電所が老朽化したら、コスト高とリスクを背負うのを覚悟のうえで都市のど真ん中に発電所を作るべきだよね。

地方はバイオマスだとか小規模水力だとか風力だとかいった自然エネルギー【1】で相当程度まかなえるんじゃないかな。ま、そうなりゃいずれにせよ電気料金は高くなるだろうけど。

Aさん―そりゃ無茶苦茶じゃないですか。暴論すぎますよ。

H教授―いまは暴論に聞こえるかもしれないけど、50年後には常識になっているかもしれない。
エネルギーの長期需要予測ってやつによれば、これからも毎年GDPが2%伸びるという前提でエネルギー需要は増加するとしている。でもねえ、そんな前提自体を疑い、社会全体をエネルギー需要抑制型社会に代えていかなくちゃいけないと思うよ。
それこそがコーゾーカイカクなんだ。

Aさん―おっ、久々のH節ですね!ところでセンセイ、8月といえば、甲子園の季節。なんといっても最高の夏の風物詩ですよね。球児のさわやかな汗、とってもセクシーで、もう胸がキュンとしちゃいますよ(瞳をうるませて)。

H教授―...

Aさん―その高校野球の決勝のときが年間の電力消費のピークになっているって話を聞いたことがあるんですけど、実際はどうなんですか?

H教授―日本では、年間の電力消費のピークに合わせて、絶対に停電させないことを前提に電力の供給体制を組み立てているんだ。だから、少しでもピークの平準化を考えるという意味で、甲子園の開催時期を一ヶ月前倒しにしたらいいのにと、半ば本気で考えたこともあった。その方が、選手や観客の健康にもいいだろう?

Aさん―...なんてこと言うんでしょう! 呆れた...。

H教授―いや、まだ続きがあって、実は、高校野球の決勝が電力消費のピークというのは、どうも俗説だったらしい。
昔、テレビの消費電力が今の機械と較べてはるかに大きくて、かつエアコンが普及しはじめた頃のこと。「みんながエアコンをつけた涼しい部屋でテレビをつけて甲子園の決勝戦を見たら電力消費があがる」と、まことしやかに言われたというのが真相のようだ。
今の電力消費の構造は産業用電力をベースに、オフィスなどの業務用冷房に加えて、民生用(家庭用)の冷房などが追加されたときに最大電力となっているらしい。つまり、工場・オフィスの稼働している平日に発生しているわけだ。
一方、甲子園の決勝戦は、休日・平日に関係なく8月20日過ぎ頃に行われている。今年はちょうど8月23日の土曜日だったから、オフィスは休みのところも多く、クーラーの効いた部屋でテレビ観戦した人も多かったことだろう。いずれにしろ、平日のオフィスアワーで、高気温になったとすると、最大電力発生になる可能性はあるものの、高校野球の決勝戦が必要条件なわけでは決してないらしいよ【2】

Aさん―へえ、そうなんだ。いい加減な情報を鵜呑みにしちゃいけないってことですね。
ところで、そろそろ本題に入りましょう。今日はなんの話ですか。
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【2】 日本の電力消費構造
国内の電力消費の年間推移は、昭和40年代初頭魔では、年間を通じてほぼ一定だったとのこと。近年になって、冷暖房機器の著しい普及により、夏季および冬季に2つのピークが見られる(フタコブラクダ型とも呼ばれる)など、年間での格差が広がっている。過去5年の最大需要をみると、梅雨明け前後の7月21日の週に年間のピークを迎えている。 また、時間帯によっても格差は大きく、日中の活動量が多い時間帯(特に夏季の日中の暑い時間帯など)に消費のピークを迎え、多くの人が寝静まる夜間には消費が落ちているというパターンを示す。 電力供給においては、最大需要にあわせて供給量を調整することになる。このため、発電所の出力調整や停止を行うほか、日中や夏季などのピーク需要を減らす工夫などもされている。
EICネット「エコライフガイド」 『ピークカットについて』
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