環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第10講 秋深し、瀬戸内法はなんのため?
第9講 夏のできごと&温暖化対策税雑感
第8講 盆休み 四方山話 
-電力雑感、読者の便りPart2、環境教育法、大気行政体験記
第7講 亜鉛の環境基準をめぐって(付:レンジャー今昔物語)
第6講 半年継続記念 読者の声大特集(付:コーべ空港断章)
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No. 第9講 夏のできごと&温暖化対策税雑感
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Issued: 2003.10.02
H教授の環境行政時評 (第9講 その1)
プロローグ


Aさん―あーあ、夏休みももう終りか。センセイ、夏休みはどっか行かれました?

H教授――うん、沖縄は八重山諸島に行ってきたんだ。向こうで台風14号にぶつかっちゃって、帰りの飛行機が欠航。2日も足止めを食らった。おかげで東京での大事な会議もキャンセル。ひどい目にあったよ。

Aさん―大事な会議って?

H教授――環境庁出身の大学人でつくった「環境行政学会」【1】のメンバーなんかとの重要な打ち合わせだ。

Aさん―なんだ、飲み会か。

H教授――(図星をつかれて)シ、シッケイな!

Aさん―(無視して)で、何しに八重山諸島まで行ったんですか。

H教授―(あきらめて)家族サービスさ。で、30年ぶりに西表へ寄ったんだけど、自然はよく保たれてたよ。でも「秘境」という感じはもうなくなってたね、道路も見違えるほど立派になってたし。あそこまで道路整備する必要があるのかなと思ったよ。

Aさん―大きな自然破壊さえなけりゃ、いいことじゃないですか。住民にとっても、観光客にとっても。

H教授―西表には、上原と大原という2つの大きな集落が3〜40km離れてあるんだ。それを結ぶ道路がセンターラインの引かれたりっぱな2車線の道路で、幅広い歩道までついてるんだ。夜、この道をドライブしたんだけど1台も対向車に出会わなかった。そりゃ、道路整備は必要だろうけど、ここまで立派な道路が必要なんだろうか。ところどころ未改修の部分があるんだけど、これだってセンターラインや歩道こそないけど、すれ違い可能な舗装道路なんだぜ。これで十分じゃないかと思うけどなあ。

Aさん―授業でセンセイがよく言ってた、道路よりも道路事業って奴ですね。

H教授――そう、調べたわけでもなんでもないけど、直感的にそう思ったね。こんなオカネがあったんだったら、道路事業じゃなくて、もっとほかのこと、例えばごみ問題だとかに使うべきだったと思うなあ。

Aさん―はいはい、今月の無責任な放言はそこまで。前講以降の環境行政でなにかトピックスはありました?
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【1】 「環境行政学会」とは?
南九研時報34号「環境行政ウオッチング」(平成14年6月発行)には、以下のような記載がある。

H教授―そうそう、いよいよ「環境行政学会」が旗上げした。環境庁出身の大学人が20人にもなったので、大同団結して、環境行政のありかたをみんなで議論しようということになった。将来は社会に発信できればいいなと思ってる。それで先日、皆生温泉でみんな集まったんだ。

Aさん―この「環境行政ウオッチング」と同じですね。

H教授―え? どういうこと。

Aさん―(ニッコリと)だって、今号は「共生社会と環境倫理」というタイトル。毎号、毎号タイトルだけは立派だけど、中身はセンセイの与太話。その学会だって、どうせ昔馴染みと飲み会やるための看板でしょう。
でも、20人ってすごいじゃないですか。センセイでも勤まるとわかったから、安心して環境庁、現・環境省も人を送り出したんですね。
昔、炭鉱では先導役でカナリアに有毒ガスの検知をさせて、大丈夫とわかってから、人間が行ったそうですね。センセイは大学に送られたカナリアだったんだ。そういえばよく囀りますもんね。あ、いけない、もう時間だ。カレが待ってる。センセイそれじゃあねえ、バイバイ!(走り出す)

H教授―(顔を真っ赤にして)お、お、おい、それが教師に対しての言い草か!(と怒鳴るが、もう彼女は去ったあと)
夏のできごと・1 ──亜鉛の環境基準決着

H教授――うん、じつは石垣島に足止めを食らわせられてる間に前講、前々講で取り上げた亜鉛の環境基準の決着が一応ついた。

Aさん―へえ、どうなったんですか。

H教授――専門委員会報告どおりで答申がなされた【2】

Aさん―じゃ、産業界は反対を引っ込めたんですか?

H教授――まだ議事録も公表されてないから経緯は知らないけど、産業界にしても問題は環境基準じゃなくて排水基準の強化だからね。環境基準を維持達成するための方策、排水基準のあり方等について別途専門委員会で検討することになったから、一歩後退して主戦場をそこに移したということじゃないかな。ま、これもぼくの憶測だけどね。

Aさん―排水基準は環境基準の10倍ということじゃないんですか。

H教授――健康項目【3】の場合は慣例として、そうなっているけど、これは一応、生活環境項目【4】という整理だから、10倍には縛られないはずと産業界は思ったのかもしれないね。
それに健康項目での10倍というのも、一種の割り切りだからねえ。だからこれからどうなるか見物だね。
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【2】 亜鉛の環境基準にかかわる話題など
中央環境審議会の水生生物保全環境基準専門委員会では、亜鉛の環境基準項目設定やクロロホルム等の要監視項目の設定(水質汚濁防止法に基づく)等についての専門委員会報告をまとめ、(紆余曲折を経たものの)平成15年9月12日付けで答申された。
ここでは、環境基準も単にヒトの健康、生活環境だけでなく、生態系保全の観点からもういちど考え直さなければならないとして議論が重ねられてきた。
...詳しくは第7講へ。
H教授の環境行政時評 第7講
環境省報道発表:「水生生物の保全に係る水質環境基準の設定について」
環境省 中環審答申について及び専門委員会報告など
【3】 健康項目
水質汚濁に係わる環境基準について1971年に人の健康の保護に係わる環境基準項目が定められ、1993年3月に改正された水質環境基準において、生活環境項目と共に、人の健康の保護に関して、各種有害物質の基準値が全国一律の示された。
カドミウム、全シアン、鉛、六価クロム、ヒ素、総水銀、アルキル水銀、PCB、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレンの23項目について環境基準が定められている。1999年硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素の3項目追加されて26項目となった。
【4】 生活環境項目
公害対策基本法(1967年)に基づき、1971年環境庁告示で「水質汚濁に係わる環境基準について」として定め、1993年の環境基本法に基づき、公共用水域の水質保全行政の目標として達成し維持されることが望ましい基準として水質環境基準が定められた。
これには、人の健康の保護に関する基準(健康項目)及び生活環境の保全に関する基準(生活環境項目)の2つがある。健康項目は全国一律の基準であるが、生活環境項目については、河川、湖沼、海域の各公共用水域について、水道、水産、工業用水、農業用水、水浴などの利用目的に応じて設けられたいくつかの水域類型ごとに基準値を決定する仕組みである。水質汚濁に係る環境基準で、生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準として設定された項目をいい、pH、BOD、COD、SS、DO、ノルマルヘキサン抽出物質、大腸菌群数、全窒素、全燐等について基準値が設定されている。
環境省「環境基準のページ」 水質汚濁に係る環境基準について
環境省「環境基準のページ」水質汚濁に係る環境基準について>別表2 生活環境の保全に関する環境基準・河川(湖沼を除く) 
環境省「環境基準のページ」水質汚濁に係る環境基準について>別表2 生活環境の保全に関する環境基準・湖沼 
環境省「環境基準のページ」水質汚濁に係る環境基準について>別表2 生活環境の保全に関する環境基準・海域 
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