環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第11講 「浄化槽と下水道 ―浄化槽法20年」
第10講 秋深し、瀬戸内法はなんのため?
第9講 夏のできごと&温暖化対策税雑感
第8講 盆休み 四方山話 
-電力雑感、読者の便りPart2、環境教育法、大気行政体験記
第7講 亜鉛の環境基準をめぐって(付:レンジャー今昔物語)
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No. 第10講 秋深し、瀬戸内法はなんのため?
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Issued: 2003.10.02
H教授の環境行政時評 (第10講 その3)
瀬戸内法の世界 ・・・その1 瀬戸内法とはなにか


H教授―わかった。じゃ、浄化槽と下水道の話はこの次にしよう。ところで瀬戸内法ってどんな法律だ?

Aさん―確か正式名称は「瀬戸内海環境保全特別措置法」ですよね。瀬戸内海の環境保全のために特別の措置をとることを定めた法律です。

H教授―どんな特別の措置?

Aさん―そんなことがすんなり答えられるようならセンセイのゼミなんて来てませんよ!

H教授―(たじたじとして)そっか。まあ、そうだろうなあ。仕方がない、ぼくのゼミに来るのはキミ程度の学生しかいなかったんだもんな。

Aさん―類は友を呼ぶだったっけ、同病相憐れむだったっけ、ムカシの人はいいことを言いますねえ。

H教授―(呆れ果てて)もういい黙っててくれ。じゃ、特別講義をはじめるぞ。
瀬戸内法はもともとは「瀬戸内海環境保全臨時措置法」といったんだ。そしてそれを執行するために、当時の環境庁に瀬戸内海環境保全室、通称「瀬戸内室」ができたんだ。
ボクはそこにいたんだけど、その瀬戸内室も瀬戸内海環境保全基本計画の改定を置き土産に一昨年、環境省誕生とともに閉鎖性海域対策室と名前を変えちゃった。

Aさん―なんでそんな法律ができたんですか。地域を特定した環境保全のための法律なんて他に例がなかったわけでしょう?

H教授―それだけ瀬戸内海の環境破壊がひどかったということだし、瀬戸内海が沿岸住民にとっていかに大事なものだったかということだろうなあ。
昭和30年代の瀬戸内海の浜(イメージ画)

昭和30年前後は大阪湾にだって至るところに浜や干潟が広がってた。堺の浜寺まで泳ぎに行ったり、地引網のなかで魚を手づかみで採りに行ったのを今でも思い出すよ。

Aさん―浜寺って、コンビナートのど真ん中じゃないですか!

H教授―そうそれくらい当時の大阪湾はきれいだったし、魚の宝庫だったんだ。だが高度成長が始まり、昭和40年代に入った頃、白砂青松を謳われた瀬戸内海は瀕死の状態になっていた。
大阪湾の自然海浜はほぼ埋め立てられ、瀬戸内海全域の各所にコンビナートが出現し、汚水を垂れ流し、赤潮が頻発していたんだ。

Aさん―ほんとですか、講釈師見てきたようなウソをつき、じゃないんですか。
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瀬戸内法制定前夜
昭和40年代の瀬戸内海の浜(イメージ画)

H教授―いい加減にしろ。ぼくは昭和43年から2年間、岡山の鷲羽山で瀬戸内海国立公園のレンジャーをしてたんだ。第7講で言っただろう!【12】
後ろに水島、前に番の洲のコンビナート。浜には黒いオイルが打ち上げられ、漁民が水上デモをしていたのを思い出すよ。

Aさん―じゃ、センセイは当事者だったんじゃないですか。瀬戸内海国立公園のレンジャーだったんだから、それを食い止めるのが仕事じゃなかったんですか!

H教授―残念ながらそうじゃなかったんだ。
瀬戸内海国立公園と言っても、実質的に開発規制などの権限があるのは、景勝地や展望台のある岬だとか小っちゃな島だけ。
当時、すでに瀬戸大橋の建設は閣議決定されていたけど、厚生省の国立公園部、つまり今の環境省自然環境局なんて一言も口が挟めなかったんだから。

Aさん―センセイ、そりゃ情けなさ過ぎます!

H教授―でも、その頃から風向きが変わり始めた。公害反対とか自然破壊反対の声が燎原の火のように全国に広がった。で、一気に公害規制が強化され、環境庁も誕生した疾風怒濤の時代だった。その最先頭を走ったのは瀬戸内海なんだ。
漁民や市民の声に押されて自治体が動き出し、昭和46年に瀬戸内海環境保全知事・市長会議が誕生、瀬戸内海環境保全憲章を制定。翌年には瀬戸内海の環境保全のための特別の法律の制定を要求したけど、政府はまったく逃げ腰だったことから、議員立法で瀬戸内海だけを対象とした環境保全の法律を作ろうとしたんだ。これが「瀬戸内海環境保全臨時措置法」で、昭和48年、全会一致で上程可決された。
【12】 
亜鉛の環境基準をめぐって(付:レンジャー今昔物語)

Aさん―でも、議員立法ってそんな珍しくないんでしょう。

H教授―ところがギッチョンチョン、ほとんどの議員立法と称するやつは立法作業などをする黒子の省庁がいるんだ。瀬戸内法だけはその黒子役をぎりぎりまで沿岸府県の環境部局が務めたそうだよ。
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