環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第12講 「2004新春 環境漫才」
第11講 「浄化槽と下水道 ―浄化槽法20年」
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No. 第11講 「浄化槽と下水道 ―浄化槽法20年」
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Issued: 2003.12.04
H教授の環境行政時評 (第11講 その2)
トピック2 「環境省3Rプロジェクト」―環境役人生態学序説

Aさん―ほかに何かトピックはありますか。

H教授―うん、この10月、環境省のなかで「国民の期待に応えるECO行政!!」を旗印にして20代若手職員を中心に、「環境省を変える若手の会(仮称)」というのが発足した。組織名も活動内容も総称して3Rプロジェクトとしているそうだ。
彼らは環境省の現状・問題点を正確に把握するためにまずアンケートを実施、来年2月を目途に具体的な提言を打ち出すとしている。

Aさん―どんなアンケートなんですか。

H教授―ま、主として勤務実態だね。それによると、4分の1の職員が24時以降まで残業するなど、4分の3の職員の退庁時刻は20時以降になるそうだ。業務繁忙期には半数の職員の退庁時刻が24時以降になるなど、ほとんどの職員が深夜まで残業ということになっている。

Aさん―えー、休まず・遅れず・働かず、じゃないんだ。

H教授―あたりまえだよ。公務員とはいったって、その態様は千差万別だけど、休まず、遅れず、働かず、接待漬けで高給取って天下り、の各項目の大半が該当する公務員なんているわけないじゃないか。

Aさん―センセイが現役の頃も残業がすごかったんですか。

H教授―そうだよ。霞ヶ関なんて不夜城だったよ。

Aさん―じゃ、たっぷり残業手当が出たんでしょう。

H教授―なにバカなこと言ってるんだ。残業手当の予算は決っているから、課によって少しづつ配分のやり方はちがうけど、もらう残業手当の3倍とか5倍くらいサービス残業してるんじゃないかな。
大蔵の主計だけが満額取ってたって話もあったけど。


Aさん―へえ、いまのセンセイ、夜7時には確実に下校だけどねえ。

H教授―へへ、BS放送で「おしん」見なくちゃいけないから。

Aさん―気楽なものですねえ。ワタシャ卒論で泣かされてるっていうのに。

でも、そんな忙しいんですか。日本は公務員がいっぱいで、それを削減しなけりゃいけないだとか、民営化推進だとかってよく新聞に出てるじゃないですか。

H教授―公務員の数が多いかどうかは国民あたりの公務員数で決る。それで見りゃ、一目瞭然だ。
アメリカに比べれば国家公務員が多すぎる、フランスに比べりゃ地方公務員が多すぎるなどと言われるけど、アメリカは連邦国家だし、フランスは超中央集権国家だから、それはあたりまえで、タメにする議論だ。国家・地方合わせての公務員、いわゆる役人の数でいえば、日本は欧米など諸外国の半分から1/3なんだぜ。

Aさん―ウッソー!

H教授―だから、いわゆる狂牛病でも原発事故でもなんでもそうだけど、なにか問題が起きれば、米国に較べて職員の数が1割以下だとかなんとか言われるんだ。
日本はもともと役人が少なくてすむような社会システムになっていたんだ。談合や天下りがよく批難されるけど、それはこういうシステムと無縁じゃない。
もちろん、公務員が少ないという話とは別に、ろくに働きもしない公務員がいるってのは事実だけどね。

Aさん―センセ、センセイ。どんどん環境問題から外れてしまうんだけど。

H教授―そうか、じゃ、話を元に戻そう。「環境省3Rプロジェクト」のアンケートはこういう勤務実態を暴きだしているんだけど、これだけ見ればいままでの組合青年部がやってることとあまり変わらない。
だけど、このアンケートでは残業を不可避にしている要因はなにかとか、仕事内容の満足度とか、現在の環境省は国民からの期待に応えていると思うか という設問をしている。つまり、勤務実態を改善して、豊かなプライベートライフを確保するだけじゃなく、業務効率化によって生み出した時間をよりよい政策を作るための時間に充てようとしているんだ。

Aさん―で、アンケート結果は?

H教授―仕事の進め方に7割弱の職員が問題があると回答している。つまり、省内手続きの煩雑さだとか、管理職のマネジメント能力のせいでムダな仕事が多いとか、だね。

Aさん―センセイの管理職時代を振り返ると、思い当たることがいっぱいでしょう。

H教授―うるさい。そして環境省が国民からの期待に対応しているかどうかでは、ノーと「わからない」がどちらも半数弱で、「応えている」というのは1割弱という結果が出た。

Aさん―若手って言ったって、いろんな職場にいろんな人がいるんでしょう。そういう人をちゃんと網羅しているんですか。

H教授―そうそう、それを言うのを忘れてた。この若手の集まりは本省も出先も、事務官も技官も、I、II、III種職員も全部含んでいるんだ。
もちろんぼくらの頃も勤務条件の改善みたいな話は全員で組合でやっていたよ。でも、仕事の方向性だとか、自然保護行政の今後のあるべき姿だとか、そういうことに関しては、例えばレンジャーだけが集まって、ああでもない、こうでもないとやったものだけど、それらを全部結集したというのはすばらしいね。
以前のお便りで「今私の心配はむしろ若手官僚にかつての『日本の公害経験』(1991年)をまとめた人たちのような意欲や気概があるのだろうかということです。忙しい仕事に振り回されているだけで、物事の本質を見失っていないだろうかという心配です」(2003/3/7 第2講へのアンケート回答)というのがあったけど、杞憂だったみたいだね。

Aさん―ところで、いまセンセイがおっしゃったようなことは、どの役所でも共通ですよね。環境省の特殊性ってなにかあるんですか。

H教授―そうだね、他省庁からの出向者が多いってことは知ってるよね。他には2点ほど指摘しておこう。
第1点はI種試験合格者、いわゆる広義のキャリアが異常に多い集団であるということだろうな。

通常行政職(行一)ではI種以外の人、いわゆるノンキャリと言われる人たち20人にキャリア1人の割合らしいが、環境省ではほぼ1対1。つまりキャリアといえど泥臭い仕事や地味な作業を山ほどこなさなければならないということだし、またノンキャリもキャリアと1対1で接することが多いから、そういう意味ではノンキャリとの相互理解、親近感は他省より必然的に深いんじゃないかなあ。
お粗末なキャリアよりは優秀なノンキャリの方が昇進が早いという革命的な先例をつくるのに相応しい役所だと思うよ。
第2点は都道府県の環境部局との関係だ。自治体の役人が霞ヶ関に出張する場合、あらかじめアポをとって、国の課長補佐に対しては県の課長、係長に対しては課長補佐が対応、それも県の方は立ったままということが多いと聞くんだけど、環境省では通常アポなしで行っても椅子に座らせてくれるし、県の係長に対して環境省の課長が話することもいくらでもある。まあ、この辺は個人差があるけどね。

Aさん―センセイも県にいたとき、そういう経験があったんですか。

H教授―うん、某省にアポなしで行ったら、ひどく冷たかったな。
ま、逆にいうと、環境省は人手が少なく、予算も権限も小さいから、県の環境部局に指示するというより、お願いすることが多く、そういう意味では上下意識よりも仲間意識が強いと思うよ。
この点は地方分権・主権の時代、他省庁もぜひ見習ってほしいね。

Aさん―じゃ、ポストもそうすべきですね。国から県に20代の課長が行くなんてことはすべきじゃないですね。

H教授―ま、県の場合、結構いろんなしがらみがあって、しがらみがない国の役人が行った方がいいという場合もあるけど、あんまり若いのはどうかと思うな。
ボクは40歳で課長級として行った。他省庁より10歳ぐらい遅かったけど、それでも若すぎるかもしれない。
ま、この辺の役人生態学みたいな話はここまでにして、この話題を終えよう。
最後にこの3Rプロジェクトが来年2月にどういう提言をするかわからないけど、熱いエールを送っておこう。
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