環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第13講 「都市の生理としての環境問題−花粉症・ヒートアイランド・都市景観」
第12講 「2004新春 環境漫才」
第11講 「浄化槽と下水道 ―浄化槽法20年」
第10講 秋深し、瀬戸内法はなんのため?
第9講 夏のできごと&温暖化対策税雑感
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No. 第12講 「2004新春 環境漫才」
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Issued: 2004.01.15
H教授の環境行政時評 (第12講 その1)
プロローグ

H教授―明けましてオメデトウ。今年も元気でがんばれよ。

Aさん―センセイ、気は確かですか。まだクリスマスですよ。あーあ、すっかりぼけちゃったんだ。前からその気配はあったけど。可哀想に(涙)


H教授―(あわてて)バカ、これは正月掲載予定の時評なんだ。そんなルールもわからないのか。卒業させないぞ。

Aさん―なあんだ、そうならそうと言ってくれればよかったのに。

H教授―今日は仮想新年だから、とくにテーマを決めず、四方山話と行こう。

Aさん―その前にセンセイ、先日12月13日に鹿児島でEIC主催のセンセイの講演をやったんでしたよね。
どうでした? 「なんでAさん来ないんだ!」とブーイングがすごかったんじゃないですか?

H教授―ああ、盛況だったよ【1】。鹿児島県との共催で、県の推薦したNGOの人の講演もよかった。でもキミのことなんてだれも気にしてなかったよ。

Aさん―そんなあ(ふくれる)。

H教授―今回はパワーポイントを使って講演したんだぜ。パワポデビュー第一戦だ。情報が売りのEICの講演会なんだから、それぐらいしなくちゃあな、エヘン。

Aさん―ウッソー。パワポどころかOHPもセンセイ、使えないじゃないですか。信じられなあい。センセイが作って、センセイが操作したんですか?

H教授―そんなことできるわけないじゃないか。じつはレジュメを作ったら、いつのまにか事務局の方でそれをパワポ化してて、操作もするからって、ムリヤリやらされちゃった。

Aさん―そんなことだと思ったわ。ところで、聴衆の男女比は?

H教授―そんなこと関係ないだろう!
【1】 EICの環境セミナー in 鹿児島
EICの環境セミナー in 鹿児島 〜21世紀、新しい時代の環境を考える〜

Aさん―だって、センセイ、鹿児島だったらオレの話聞きに女性が殺到するはずって言ってたじゃないですか!

H教授―...。
さ、前講以降のできごとについておさらいしておこうか。
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イラクと京都議定書


Aさん―センセイ、イラクのフセイン元大統領が拘束されました。よかったですよねえ。

H教授―(白けた表情)なにがいいんだ。ブッシュにフセインを拘束する国際法上の権利がどこにあるんだ。フセインがならず者なのは言うまでもないとしても、じゃ、ブッシュは...。

Aさん―(さえぎって)ちょ、ちょっとセンセイ。これ以上はまた編集部にカットされますよ。

H教授―わかっているよ。これ以上は言わない。でもねえ、どこの新聞にも書いてないけど、環境問題にも大きな影響が生じるかもしれないんだぜ。

Aさん―え? どうして?

H教授―だって、このまま米国が望むようにイラクの治安が回復し、親米政権ができたりしたら、ブッシュやネオコンの意気は揚がるし、今年の大統領選でも再選確実。京都議定書【2】は発効しなくなるかも知れないんだぜ。

Aさん―あとロシア一国の批准で発効でしょう。なんだかんだ言ったって、ホットエアー【3】が売れなけりゃ困るからロシアは批准するだろうって、先月センセイ言ったじゃない。

H教授―ブッシュが勢いに乗って、復興利権や石油利権をエサに、ロシアに批准を断念させることだってあるかもしれないじゃないか。

Aさん―あ、その心配はないですよ。

H教授―え? どうして?
【1】 京都議定書(Kyoto Protocol)
1997年12月京都で開催されたCOP3で採択された気候変動枠組条約の議定書。2003年12月現在で、未発効。日本は1998年4月28日に署名、2002年6月4日に批准。2003年11月現在の批准国数は、120カ国。
先進締約国に対し、2008〜12年の第一約束期間における温室効果ガスの排出を1990年比で、5.2%(日本6%、アメリカ7%、EU8%など)削減することを義務付けている。また、削減数値目標を達成するために、京都メカニズム(柔軟性措置)を導入。京都議定書の発効要件として、55カ国以上の批准、及び締結した附属書I国(先進国等)の1990年における温室効果ガスの排出量(二酸化炭素換算)の合計が全附属書I国の1990年の温室効果ガス総排出量(二酸化炭素換算)の55%以上を占めることを定めている。
The Convention and the Kyoto Protocol(UNFCCC) 英語
京都議定書の概要(環境省地球環境局)
京都議定書の締結及び地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律について (環境省地球環境局)
京都議定書の骨子(外務省)

Aさん―だって、ブッシュさんは京都議定書のことなんて、アタマの片隅にもないですよ(笑)。

H教授―もっと悪いじゃないか。

Aさん―心配ないですって。

イラクの人たちは反フセインかもしれないけど、反ブッシュ、反ネオコンでもあるんだと思いますよ。
それよりCOP9(第9回気候変動枠組条約締約国会議)の結果はどうだったんですか。

H教授―うん、12月初旬にイタリア、ミラノで開催された。森林吸収【4】にかかる細目がまとまったけど、第二約束期間【5】の話は先送りになったみたいだ。あと、COP9では条約事務局が現行対策ベースでの2010年の温室効果ガス排出予測が明らかにされた。

Aさん―へえ、どうだったんですか。
【3】 ホットエアー(Hot Air)
京都議定書で定められた温室効果ガスの削減目標に対し、経済活動の低迷などにより二酸化炭素(CO2)の排出量が大幅に減少していて、相当の余裕をもって目標が達成されることが見込まれる国々(旧ソ連や東欧諸国)の達成余剰分のこと。この余剰分の排出枠が先進国に「排出権取引」を通じて売却され、先進国の実質的な排出削減を阻害することが懸念されている。
なお、英語の"Hot Air"には、熱気、温風、暑気などのほか、くだらない話、ナンセンス、大言壮語、空手形などの意味を持つ。これらの国の余剰分は、自国の努力による削減量ではないため、「空手形」という意味を込めて揶揄され、定着していったという経緯がある。
UNFCCC COP9 Official Website(COP9 Climate Change Convention/英文)
EICネット 国内ニュース「COP9で森林吸収源CDM実施のための細則決まる」

H教授―'90年比の排出増減率と京都議定書達成目標値との比較をみてみよう。まず日本が'90年比6%増で議定書目標から12%オーバー。米国は32%増で39%オーバー。米国と同様、脱京都議定書を標榜しているオーストラリアが27%増で19%オーバー。カナダは27%増で33%オーバーで、一方、EUは'90年比1%減で7%オーバー。ロシアは11%減で11%過剰達成ということになってる。これが前講で言ったホットエアーだ。

Aさん―うーん、くっきりと分かれてますねえ。

H教授―ああ、途上国だって、米国の数字見てりゃ、ばかばかしくて、排出抑制しようなんて気なくしちゃうよねえ。
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【4】 森林吸収
2003年12月にイタリアのミラノで開催された第9回気候変動枠組条約締約国会議(COP9)では、京都議定書に定められ、COP7以降2年間かけて検討・協議してきた吸収源CDM(クリーン開発メカニズム)の定義・ルール・手続きについて確定、採択された。詳細の内容は、林野庁のホームページ上に公開されている。 京都議定書では、二酸化炭素の排出削減の達成に関して、炭素を貯蔵できる特定の土地利用の変化と林業を、排出削減分の一部として算入を認めている(いわゆる「炭素吸収源(シンク)」)。つまり、植林等により増えた森林等によって、大気中の二酸化炭素が樹木中に固定され、取り除かれたものとみなし、その分を化石燃料消費による二酸化炭素排出と相殺できるとするもの。 こうした考えに基づき、先進国と途上国が共同で温室効果ガス排出削減プロジェクトを実施し、達成された温室効果ガス削減分の一部(認証排出削減量)を先進国が自国の削減量として充当することを認める制度が「クリーン開発メカニズム(CDM)」であり、そのうち森林整備によりCO2の吸収固定を行うタイプのものを森林吸収という。
UNFCCC COP9 Official Website(COP9 Climate Change Convention/英文)
EICネット 国内ニュース「COP9で森林吸収源CDM実施のための細則決まる」
【5】 第二約束期間
京都議定書における数値目標は2008年〜2012年の「第一約束期間」に設定されており、これに引き続く2013年〜2018年を「第二約束期間」と呼ぶ。この数値目標交渉が2005年から2007年までの間に行われることになっている。 なお、第一約束期間では、温室効果ガスの削減への取り組みの第一段階として、締約国の温室効果ガス総排出量を1990年から少なくとも5.2%を削減しなければならないと規定されている。日本には、第一約束期間の5年間における温室効果ガスの平均排出量を、基準年(CO2、CH4、N2Oついては1990年、HFC、PFC、SF6については1995年)の排出量から6%削減するという目標が割り当てられている。
環境省総合環境政策局「温暖化対策税制の検討状況について」
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