環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第14講 「BSE愚考、廃家電横流し雑考」
第13講 「都市の生理としての環境問題−花粉症・ヒートアイランド・都市景観」
第12講 「2004新春 環境漫才」
第11講 「浄化槽と下水道 ―浄化槽法20年」
第10講 秋深し、瀬戸内法はなんのため?
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No. 第13講 「都市の生理としての環境問題−花粉症・ヒートアイランド・都市景観」
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Issued: 2004.02.05
H教授の環境行政時評 (第13講 その2)
ヒートアイランド対策

H教授―そうかもしれない。同じように、文明化・都市化の生理現象としての環境問題にヒートアイランド現象【8】がある。ヒートアイランドって知ってるよね。

Aさん―まかしといてください。都市部の気温が周辺地域に較べて高くなる現象で、地図上に等温線を描くと都市部が島のようになる現象ですね。

H教授―そう、都市部ではエアコンだとか自動車の排熱が多いうえに、地面もコンクリートで固められてるから、その排熱が気化熱として奪われにくくなっちゃうんだ。
例えば東京都心部の気温はこの100年間で、3.8度も上昇している。いわゆる地球温暖化現象で全球平均温度の上昇が100年間で0.6度なんていわれてるから、いかに大きいかわかるよね。

Aさん―そうですよね。クーラーなんていうけど、じつは室内の熱を外に出して外を暖めてるんだから、地域にとってはヒーターですもんね。
で、表があんまり暑いから、室内に入ってますますクーラーを強くして、よけいに表を暑くしちゃって、という悪循環。それで冷房病になっちゃうんだから世話ないですよね。
でも、センセイの家だって各部屋にエアコンつけてるじゃないですか。

H教授―来客のあるとき以外はほとんど使ってないよ。ちゃんと環境のことは考えてるんだ。

Aさん―ただケチなだけでしょう。学校の研究室じゃ、遠慮なく使ってるんだから。
【8】 ヒートアイランド現象
都市部において、高密度にエネルギーが消費され、また、地面の大部分がコンクリートやアスファルトで覆われているために水分の蒸発による気温の低下が妨げられて、郊外部よりも気温が高くなっている現象をいう。等温線を描くと、都市中心部を中心にして島のように見えるためにヒートアイランドという名称が付けられている。特に、夏季においては、家屋内の熱を冷房によって外気に排出することにより、外気温が上昇し、それにより更に冷房のためのエネルギー消費を増大させるという悪循環を生み出している。環境省においては、ヒートアイランド現象を抑制するための実態調査を実施し、その対策手法について検討を行っている。


H教授―え? あれは部屋ごとに切れたんだっけ?(とぼける)

それよりも、暑いからって人の研究室に勝手に入り込んで、コーヒーを沸かして飲んでたのはどこのだれなんだ。

Aさん―(舌を出して)しまった。やぶへびだった。
ま、でも冬は過ごしやすくなったかもしれないですね。
それはそれとして、政府のヒートアイランド対策はどうなってるんですか。

H教授―ヒートアイランド現象自体はずいぶん昔から言われていた。東京とか大阪といった自治体では屋上緑化への補助だとかで、ヒートアイランド対策をはじめ出したけど、政府では、いわゆる消極的権限争い(→第5講)で、主務省庁すら長い間決らなかった。
2年前、ようやく関係府省会議が発足、当初は課長レベルだったけど、その後、局長レベルに格上げされ、昨年末には「ヒートアイランド対策に係る大綱骨子案【9】」をまとめた。
今年度中には数値目標も入れた大綱を策定するとのことだ。この大綱が将来新法制定までいくのかどうかだねえ。

Aさん―どんな内容なんですか。

H教授―人工排熱の低減、地表面被覆の改善、都市形態の改善、ライフスタイルの改善という4本柱だけどねえ、正直言って、ヒートアイランド現象自体がなくなるなんてことは到底考えられない。ヒートアイランド現象の進行が若干でも改善されればめっけもんてところじゃないかな。

Aさん―え? なんで、なんで?
【9】 ヒートアイランド対策に係る大綱骨子案
ヒートアイランド対策に関係する行政機関が相互に密接な連携と協力を図り、ヒートアイランド対策を総合的に推進することを目的に設置された「ヒートアイランド対策関係府省連絡会議」の第5回会議(平成15年12月15日(月)開催)において示された骨子案。 平成14年9月6日に第1回が開催された同会議は、当初課長級を構成員として開催されてきたが、その後、平成15年10月16日(木)の第4回会議で設置要綱を見直し、局長級会議に格上げされて、骨子案の取りまとめに至っている。
「ヒートアイランド対策に係る大綱骨子(案)」
ヒートアイランド対策関係府省連絡会議

H教授―これは長らく、消極的権限争いがつづいたことと関係あるんだけど、ほとんどの現実的に考えうるメニューは、実は別の行政目的のためにそれなりに実施されてきているんだ。例えば、有力なメニューである都市内の緑地を保全し、増やすことなんてのは、ヒートアイランド現象とは関係なく、それなりに進めてきたよね。省エネだってそうだ。
各省にしてみればヒートアイランド対策にも寄与するって名目で増額要求しやすくはなるだろう。だけど、ヒートアイランド対策の本線となる、抜本的な政策というのは考えにくいから、どの省も及び腰だったんだ。

Aさん―対策の本線になるはずの抜本的な対策って?

H教授―ヒートアイランドの真の元凶ってなんだと思う。

Aさん―え?

H教授―都市化とエネルギー消費の増大だよ。そして、これこそがいままでの日本の発展を担ってきたんだ。
都市部でのエネルギー消費はある試算では注がれる太陽エネルギーの1割にも達するという話を聞いたことがある。田舎の100倍くらいになるんじゃないかな。
でも都市を解体して、田舎へもう一度人を帰すなんて、できる話じゃないだろう?
つまりヒートアイランド現象の完全解消なんて、まず不可能なんだ。

Aさん―じゃ、なにもするなっていうんですか。

H教授―そんなこと一言もいってないよ。シジュフォスの神話じゃないけれど、人が人であろうとする限り、少しでも進行を食い止めるための最大限の努力をしなくちゃいけない。
そして同時に、都市化ということの意味をもういちど問い直さなきゃいけないんだ。

Aさん―あーあ、やっぱり将来は田舎に住もうかなあ。その方が「環境にやさしい」んですよねえ。

H教授―そんなことはない。そりゃ、田舎に住んで自給自足の生活をしてりゃそうだろうけど、クルマを乗り回して買い物したりする生活なんだから、1人当たりのエネルギー消費でみりゃ、都会人の方がぐんと少ないさ。

Aさん―センセイの話聞くと混乱しちゃうなあ。どうすればいいのかわからなくなるじゃないですか。
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