環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第16講 「環境ホルモンのいま」
第15講 「Hキョージュのやぶにらみ環境倫理考」
第14講 「BSE愚考、廃家電横流し雑考」
第13講 「都市の生理としての環境問題−花粉症・ヒートアイランド・都市景観」
第12講 「2004新春 環境漫才」
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No. 第15講 「Hキョージュのやぶにらみ環境倫理考」
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Issued: 2004.04.08
H教授の環境行政時評 (第15講 その3)
カルタヘナ議定書と遺伝子組換え
H教授―いや、そっちは知らない。ひとつはカルタヘナ議定書が発効し、それに伴い正式名称を遺伝子組換え生物のなんちゃらたら言う「カルタヘナ法」が先日施行された【2】

Aさん―カルタヘナ議定書?

H教授―うん、生物多様性条約に基く議定書で、遺伝子組換え生物の環境影響を防止するための国際的な取り決めだ。そしてそれを担保する国内法がカルタヘナ法。

Aさん―遺伝子組換え生物ってなんか不気味ですよねえ。モンスターが生じたらどうしようかって思っちゃいますよ。

H教授―遺伝子の突然変異は自然界では日常茶飯事だ。ある意味では子どもが生まれること自体、広義の遺伝子組換えといえないことはない。
生物ってのはそうした無数の遺伝子の組み合わせのバリエーションのなかから自然選択で生きのびてきたものなんだ。最適生存原理だよね。
だから、人為的な遺伝子組換え生物を自然界に放てばモンスターどころか、ほとんどがたちまち滅んでしまうだろうと言われている。
そういう意味では、それほど怖がることはないのかも知れないけど、万一ってことがあるから、それへの対応について共通のルールを定めることにしたんだ。
【2】 カルタヘナ法について
正式名称:遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
環境省生物多様性センター「カルタヘナ法関連情報」
文部科学省の同法関連ページ
同省解説資料

Aさん―別に遺伝子組換えを禁止するってわけじゃないんですね。

H教授―そりゃ、そうだよ。収量増加や害虫に強い生物を作り出すとかメリットも大きいからね。
ま、でも立花隆のように遺伝子組換え万万歳とは思わないし、慎重であるべきだとは思うよ。
人間に害はなかったけど、風が吹けば桶屋が儲かる式の、予想外の生物への悪影響がでたという例も知られているしね。

Aさん―もうひとつは?
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エイリアンをめぐって

H教授―外来生物種についての法律を国会に出している【3】

Aさん―外来生物種?

H教授―帰化植物だとか移入種だとかいわれるものだね、英語で言えばエイリアン。

Aさん―そもそもお米だってもともとはそうなんじゃないですか。

H教授―はは、ま、そりゃそうだ。でも何百年とか何千年経って定着しているものはいまさらどうしようもないじゃないか。
それにこれからだって人間の生活に役立つものはどんどん移入することになるかも知れない。
この法律は、人間に被害を与えたり、生態系を混乱させるものに関しては移入を原則禁止したり、すでに移入されているものは駆除したりしようとするものだ。それから人間に被害を与えたり生態系を撹乱させる恐れがあるかもしれないものについても一定の規制を加えようというものだ。

Aさん―そういえば和歌山の台湾ザルをどうこうという話があったですね。

H教授―うん、ニホンザルとの雑種ができ、ニホンザルの純血が撹乱されるから、駆除しようとしているものだね。
動物学の世界では違う種として扱われているようだけど、雑種ができ子孫が残せるということは、種は同じと言うことだと思うんだ。ブルーギルだとかセイタカアワダチソウのように種の異なるものが、土着種を捕まえて食べたり、環境を変えたり ──つまり生態系を撹乱して土着種を滅ぼすという話とは違うよね。
生物多様性条約の世界では種内の遺伝子も多様であるべきで、同じ種でも違う地域に棲むのは違う遺伝子を持っているからそれらを大切にしなければいけないと言っている。例えばホタルにしても岩魚にしても、河川ごとに特徴があるから、ちがう川に放流するべきじゃないという。

Aさん―センセイはどう思うんですか。

H教授―キミ、国際結婚はどう思う?

Aさん―は? なんですか、いきなり。

H教授―もちろん、野生生物の遺伝子の多様性を保全することは重要だし、それを撹乱するような人為的な持ち込みをすべきでないし、持ち込まれたものは可能ならば駆除することにも反対はしない。ただ、そういう議論が人種の混血はいけないんじゃないかなんてところに結びつかないかが心配なんだ。
たとえば、ナチスの純血主義なんかはその典型だろう。

Aさん―そりゃ、考えすぎですって。

H教授―ま、いずれにしても、人間が勝手に自分の都合で持ち込んでおいて、生態系を撹乱するからっていまさら駆除するのは、やむをえないとはいえ、持ち込まれた生物の立場にたてばあんまりじゃないかと言いたくなるだろうな。そういう意味で、せめて心に痛みを感じるべきだと思うよ。
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【3】 外来種対策法案について
環境省報道発表(平成16年3月8日)「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案」の閣議決定について
環境省自然環境局「外来種(移入種)対策について」
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