環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第16講 「環境ホルモンのいま」
第15講 「Hキョージュのやぶにらみ環境倫理考」
第14講 「BSE愚考、廃家電横流し雑考」
第13講 「都市の生理としての環境問題−花粉症・ヒートアイランド・都市景観」
第12講 「2004新春 環境漫才」
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No. 第15講 「Hキョージュのやぶにらみ環境倫理考」
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Issued: 2004.04.08
H教授の環境行政時評 (第15講 その4)
Aさん―なんかごまかされた感じだけど、まあいいか。
他にはなんか法律が上程されていないんですか?
VOC規制導入!
H教授―うん、あと4本ある。
ひとつは海洋汚染防止法の改正で、国際条約に対応して、いままで一定程度認められてきたし尿など廃棄物の海洋投棄をより厳しく制限しようとするもの。
それから大気汚染防止法の改正で、これは固定発生源からのVOC(→第10講【4】)の濃度規制を導入しようというものだ。
【4】 VOCに関するこれまでの話題について
第10講

Aさん―センセイが昔やろうとして挫折したNMHCの法規制ですね。やっとリベンジできたんだ【5】
これでSPMや光化学オキシダントはぐんと改善するんですか。

H教授―まさか。そんな簡単にはいかないさ。

Aさん―え?

H教授―まえにも言ったけど、VOCやNMHCはさまざまな発生態様がある。例えばペンキを塗ったり、接着剤を塗ってそれが乾くということは(有機溶剤として使われている)VOC、NMHCを大気中に放出しているということなんだ。今回の法改正では屋外での塗装という大きな発生源というか発生態様は規制できないみたいだし、規制の中身は、マトモな企業ならとっくに対応している程度の規制だから短期的、直接的な削減効果はそれほどないと思うよ。
それでも、法規制されてないから、なにしてもいいんだ的な考えの企業には厳しい規制かもしれない。
とりあえず法の網をかぶせることに意義があるんだということなんだろうな。

Aさん─じゃ、なんのための規制なんですか。
【5】 NHMCについて取り上げた過去の講義
第8講

H教授―この法律は単なる規制だけでなく、というか、法規制は最小限なもので、事業者の自主的取組が重要だと法のなかで明言していることが目新しいね。さまざまな発生態様があり、規制に馴染まないものも多いことから、そうしたんだろうけど、国民も含めてVOCの排出者に対する理念規定、訓示規定もあって、直接的な効果は少ないかもしれないけど、中長期的にはとてもいいことだと思うよ。
産業界も「自主管理で減らせてみせる」と言っているみたいだから、楽しみだね。
それにボクが苦し紛れにはじめたインベントリーというかミニPRTRの試みもちゃんとは入っているみたいだ。
ま、具体的なことは政省令がまだできてないからよくわからないところもあるんだけど、今後の展開を期待したいね。

Aさん―でも屋外塗装なんかはどうなるんですか。

H教授―たしかに屋外塗装からの負荷は1/4を占めるくらいおおきいし、低VOC塗料の普及を待つしかないんだけど、たとえば公共事業での低VOC塗料の率先使用だとか、エコマークやJISとの連動だとか、規制以外のツールをいろいろ考えているらしいよ。
これからは単なる○か×か式の規制とは一味ちがう道を模索していかなければならないんだけど、貴重な試みだね。

Aさん―やむなくそうしたという面もあるんでしょうけど、うまく行ってほしいですね。
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環境配慮促進法案上程
Aさん―...で、他には?

H教授―廃棄物処理法も改正される。岩手・青森県境の産廃不法投棄問題と硫酸ピッチ問題がきっかけで、重大な不法投棄には国が関与できるようにしたり、県の権限というか責務を重くした。
後者に関しては、硫酸ピッチを基準にしたがわない方法で処理したり、従前の産廃の不法投棄や不法投棄未遂だけでなく、不法投棄目的の収集運搬などの準備行為までも処罰の対象にしようとするものだ。

Aさん―なんだか改正ばっかりですね。新法はないんですか。

H教授―あるよ、いわゆる環境配慮促進法というのができそうだ【6】

Aさん―なんですか、それ。

H教授―環境報告書って知ってる?

Aさん―ええ、もちろん。いまブームみたいですね。

H教授―この法案は環境報告書推進法案といっていいかもしれないな。
環境報告書はいろんな企業で作りだしたけど、手前味噌みたいなのも散見されるから、その仕様を揃えようとするとともに、一部上場企業だけでいえば、まだ1割弱しか作ってないみたいだから、これをもっと普及させることを意図したんだろうな。
特殊法人などの公的企業には一定仕様の環境報告書とその第三者チェックを義務付け、その他の大企業にも環境報告書作成の努力義務を課そうというもんだ。
【6】 環境配慮促進法案について
環境省報道発表(平成16年3月8日)「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律案について」

Aさん―毎回、毎回、いろんな法律改正や新法をつくる動きがあるんですね。

H教授―うん、新法つくりや法改正は役人の勲章だからな。
でも、それで環境がどれだけよくなるのか、わからないようなのが多いような気がするね。

Aさん―じゃ、センセイはどういう法律や施策が必要だと言うんですか。しかも実現可能な。

H教授―はは、それがわかってれば、キミとの環境漫才なんてやってないよ。
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(2004年3月18日執筆・同年4月2日編集終了)
 参考:南九研時報第34号(2002年6月)
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