環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第17講 「SEAの必要性・可能性 ―付:S湾アセス秘話」
第16講 「環境ホルモンのいま」
第15講 「Hキョージュのやぶにらみ環境倫理考」
第14講 「BSE愚考、廃家電横流し雑考」
第13講 「都市の生理としての環境問題−花粉症・ヒートアイランド・都市景観」
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No. 第16講 「環境ホルモンのいま」
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Issued: 2004.05.06
H教授の環境行政時評 (第16講 その1)
自己責任論とエリート

Aさん―センセイ、イラク情勢がますます混沌としてきましたね。
ま、人質が無事解放されてよかったですけど。

H教授―その人質についてだけど、行くべきじゃなかっただとか、救出の費用は自己負担すべきだとかいうバッシングが「自己責任論」という形で姦しいね。キミ、どう思う。

Aさん―うーん、なんか、おかしいような、でも一理あるような気がしないこともなくもないことも...。よく、わかんない。センセイ、どう思われるんですか。

H教授―キミ、エリートってなんだと思う?

Aさん―は、なんですか、いきなり。えーと高学歴とか選良ですか。階層で言えば指導階層。

H教授―ぜんぜんちがう。エリートはもともとラテン語で「神に選ばれしもの」ということなんだ。
それが意味するものは自分の利害得失と関係なく「自分以外の人や物事のために命を捨てられる人」という意味なんだ。

Aさん―へえ、でもラテン語知らないセンセイが言っても説得力ないなあ。

H教授―昔仕えたI先生に教えてもらったんだ。で、I先生は、いまの日本では政治家も官僚も経営者にもエリートがほとんどいない、そしてエリートなき社会や国は衰亡すると嘆いておられる。もちろん、ブレヒトをもじって「エリートのいない国家は不幸だが、エリートを必要とする国家はもっと不幸だ」って言い方もできるかも知れないけど。

Aさん―それがどうかしたんですか。

H教授―人質になった3人、あるいはその後の2人。かれらはいずれも危険を承知で、支援活動をしようとしたり、官製報道に出てこない真実を探り、それを訴えようとした。そういう意味ではかれらこそエリートあるいはその卵じゃないか。

Aさん―それはそうかもしれないけど、そのおかげで沢山の費用がかかったし、多くの人に迷惑をかけたんじゃないですか?

H教授―日本の若者のなかにそういう人たちがいるってことを国際的に知らしめた。そのことのメリットの方がはるかに大きいよ。
本来かれらの活動方向に敵対的なはずのパウエル国務長官ですら「よりよい目的のため、みずから危険を冒した日本人たちがいたことを私はうれしく思う」って言い、日本の人々は誇りに思うべきだって語ってるよ。かれの方がよほど日本のトップよりわかってるよ。

Aさん―うーん、じゃ、ワタシはエリートになれそうにないな。センセイもそうでしょ?

H教授―だれしもがエリートになれるわけじゃない。ほとんどの人は自分の利害とか安全とかで自分を守ろうとするし、ボクだってそうだ。つまり、99.9%の人は凡人、俗物だ。
だからこそ、せめても足を引っ張るようなことをしちゃいけないというのが、ボクらのような凡人、俗物の矜持ってものなんだ。

Aさん―ハイ、ハイ。
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冷房は街を暖めるか―再説

H教授―ところで大学院に入ってどうだ? しっかり勉強してるか?

Aさん―専門以外に英語や数学もしっかりやらなくっちゃとがんばってますよ。

H教授―お、それはえらいえらい。

Aさん―なんせ、指導教員が英語も数学もまるでダメってきてるからたいへんなんですよ。

H教授―うるさい。ただなあ、環境問題をやるってのなら高校初級程度の理科や社会は完全にマスターしておかなくちゃだめだぞ。

Aさん―馬鹿にしないでください。入試の難関もみごとクリアしたんですよ!

H教授―受験科目に理科や社会はあったのか?

Aさん―それはないけれど...。

H教授―だから例えば 第13講のヒートアイランドのところで「クーラーなんていうけど、じつは室内の熱を外に出して外を暖めてるんだから、地域にとってはヒーターですもんね」みたいなことを言ったりする。

Aさん―えっ、ちがうんですか。

H教授―冷房を止めたらどうなる?

Aさん―だんだん暑くなり、最後は外気温と一緒になります。

H教授―ということは、時間が経つうちに部屋の冷気は外部に出てしまう、つまり結果的には外を冷やすということになる。
部屋の熱気を表に出す際、さらにエネルギーが必要だけど、そのエネルギーは大半は水を蒸発させるためのエネルギー(蒸発潜熱)となり、直接熱として出るのは一部だけ、これを差し引いても冷房は街を冷やすということになる。
こんなことは中学程度の理科をきちんとマスターしていればわかるはずだ。
ま、確かにエアコンの室外機からは、むーとした熱気が漂うから、キミのような錯覚を起しても無理はないけど。

Aさん―あのう...、でも...。

H教授―なんだ、どうした。

Aさん―冷房が街を暖めるといつか授業で言ったのはセンセイですよ。
それに何故、いまごろ言うんですか。

H教授―え、そうだっけ? ま、初期のエアコンだったら、冷房効率がよくなかったし、室外に出すエネルギーも顕熱が大半だったろうから、全体として街を暖める効果の方がおおきかったかもしれない。

Aさん―だったら、みんながみんな高効率のエアコンを持ってるわけじゃないから、いまでも全体としては暖房効果を持っているかもしれないじゃないですか。大体、センセイがそう言ったのはほんの1、2年前ですよ。街を冷やすって話だって、だれかに教えてもらったんでしょう!

H教授―ばれたか、某業界誌にそういうことが書いてあったって話を、さっき言ったI先生の随想【*】で知ったんだ。
でね、先生が言うには、高効率のエアコンだったら街を冷やすという答えで満足しちゃいけないんだって。
使用する電気のおおもとが火力発電や原発なら廃熱が出て、その周辺を暖める。火力発電の場合はCO2も出すので、その温室効果も考えなくちゃいけない。さらに水蒸気が気温に与える影響は非常に複雑でよくわからないところがある。
そうしたことすべてを考え合わせないと、軽々に冷房は街を冷やすなんて結論は出せないそうだ。

Aさん―へへ、そうか高校程度の理科社会をマスターしろってのはご自分に言いきかせてたんですね。
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*I先生の随想 
冷房は暖めるのか冷やすのか
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