環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第18講 「キョージュ、無謀にも畑違いの原発を論ず」
第17講 「SEAの必要性・可能性 ―付:S湾アセス秘話」
第16講 「環境ホルモンのいま」
第15講 「Hキョージュのやぶにらみ環境倫理考」
第14講 「BSE愚考、廃家電横流し雑考」
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No. 第17講 「SEAの必要性・可能性 ―付:S湾アセス秘話」
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Issued: 2004.06.03
H教授の環境行政時評 (第17講 その3)
アセスの結末

H教授―だから、やむなく、ボクはほとんど東京に張り付き、環境庁と県の企画・開発部局との隠れたパイプ役に徹せねばならなかった。

Aさん―へえ、じゃあ随分と企画・開発部局に恩を売ったんじゃないですか。

H教授―冗談じゃないよ。ボクが持って帰る情報をうさんくさげに扱うだけで、最初はほとんど無視。いやあ、辛かったなあ。
で、環境庁がこんな回答ならいつまで経っても前進しないと一喝。それからようやく、企画・開発部局でも、ボクの情報をまともに受け止めてくれるようになった。

Aさん―よかったじゃないですか。

H教授―ところが一難去ってまた一難。
最終決着へ向けて予定通り進み始めたところに、運輸大臣への環境庁長官意見の提出をなにがなんでも1ヶ月早めろという知事の、──というより知事の名を騙ったと思われる指示が、企画部局から突然下されたんだ。
で、その理由がどう考えても手前勝手過ぎて、環境庁サイドを納得させうる正当な理由がない。
企画部局が自分たちにゆとりを持たせようとして相当サバを読んだ可能性も強いんだ。
知事に直訴しようにもシャットアウトされる。
案の定、環境庁はカンカンさ。
それやこれやで、県の企画・開発部局との軋轢も絶えないし、とくに企画部局は情報を秘匿するだけでなく、平気で見え透いたうそをつくんだもん、胃の痛む思いだったよ。

Aさん―へえ、カエルのおしっこをかけられても平気そうなセンセイがそう言うんだから大変だったですね。

H教授―キミ、一言多いぞ。ま、それでも環境庁サイドもしぶしぶスピードアップに協力してくれ、なんとか目鼻が付きそうになった。
第二次質問の頃から環境庁の意図が見えてきたんだ。
環境庁はなんとか備蓄基地でS湾開発を打ち止めにするという言質をとりたかった。だから、第二次質問でS湾の海浜は自然環境保全上重要であること、そのため備蓄基地は環境保全に留意した設計で環境破壊を最小限にとどめること、といった回答を誘導していったんだ。
だが、その意図に県の企画・開発部局は気がついていない。

Aさん―オモシローイ。で、最後はどうなったんですか。

H教授―第三次質問が出た。
ただ、一問。「前回回答の...、...を総合すれば、S湾でこれ以上の埋立は自然環境保全上容認できないと解してよいか」だった。
県側の設定したタイムリミット前夜なんだ。イエスの答えでないとタイムリミットをオーバーしてしまい、知事が恥をかくことになってしまう。
ところで、県では備蓄基地は縮小した新O開発計画の一部であるというのが公式見解だったし、とくに企画部局はその看板を絶対に下ろせない立場にあったんだ。
しかし、新O開発計画は前知事時代のもので、現知事にさしたる思い入れはなく、時期未定ながら備蓄基地につづくとされていた巨大コンビナートはあきらめようとしているのではないかというのが環境庁の読みだった。
で、なんとかその本心をひきずり出したかったんだよ。

Aさん―へえ、企画・開発部局はあわてたでしょうねえ。

H教授―もちろんさ。内々にボクに打診してきた企画・開発部局の回答案は意味不明で、こんなものでは環境庁は到底飲まないと突っぱねた。
深夜になってしまったが、環境庁の担当者と長電話で、ギリギリの接点を見つけるため意見交換した。その結果、用意した回答案は「基本的には貴見のとおりである。環境保全目標の達成を困難にするような巨大な構築物のこれ以上の出現は極力避けるべきであると考える」だった。
「基本的には」「環境保全目標の達成を困難にするような」「極力」とかのような微妙な形容詞を方々にまぶしているので、環境庁サイドにはまだ異論が出るかも知れないが、なんとかこれで了解が得られるという感触だったんだ。
さっそく県で待機している上司に電話し、この回答案が環境庁が飲めるぎりぎりの案であると伝えた。上司はすぐに企画部局と談判。絶対飲めないという企画・開発部局に対し、「これが飲めないならタイムリミットを越してしまうし、環境部局は手を引く。あとはお得意の空中戦でもなんでもやってくれ」と恫喝した。

Aさん―空中戦?

H教授―有力政治家を使いごり押しすることさ。
これをやられると環境庁の事務方の反発はすさまじく、「江戸の敵を長崎で」となって、他の事業等に影響するのが必至だ。県の環境部局としては、これだけは避けたいんだ。
逆にいうとごちゃごちゃ言ってると空中戦に持ち込むぞ というのが企画・開発部局の環境部局へのこれまでの脅しだったんだよ。
で、ついにこの案で企画・開発部局は反対のまま、御前会議にかけられることになった。御前会議とは知事を含めた県の最高幹部会議の俗称だ。
知事は苦虫をかみつぶしたような顔で、じっと考え込み、ついにゴーの断を下したらしいんだ。
その報告を受けたとき、すべてが終わったとばかりに爆睡したよ。
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