環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第20講 「喧騒の夏」
第19講 「キョージュの私的90年代論」
第18講 「キョージュ、無謀にも畑違いの原発を論ず」
第17講 「SEAの必要性・可能性 ―付:S湾アセス秘話」
第16講 「環境ホルモンのいま」
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No. 第19講 「キョージュの私的90年代論」
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Issued: 2004.08.05
H教授の環境行政時評 (第19講 その1)
異常気象、ニッポンを覆う

Aさん―(研究室に入るなり)センセイ、まるで蒸し風呂だよお、なんとかしてえ。

H教授―情けないやつだなあ、心頭滅却すれば火もまた涼しって知らないのか。

Aさん―エアコンかけっぱなしで白々しいこと言わないでください。だいたい、そのエアコンも電気代もワタシたちの授業料の一部なんですよ。

H教授―わかった、わかった。それにしても今年の夏は異常な暑さだなあ、おまけに方々で豪雨災害が起きているし。

Aさん―これってヒートアイランド現象なんですか、地球温暖化なんですか、それとも単なる自然現象なんですか。

H教授―さあな、そんなのわかんないよ。
ただ熱帯夜がつづくのは、つまり夜になっても気温が下がらないのは、間違いなくヒートアイランド現象だね。それとこの暑さが地球温暖化を加速させるのは間違いない。

Aさん―センセイ、そりゃ因果関係が逆でしょう。地球温暖化が自然現象としての夏の暑さを加速させているんでしょう?

H教授―キミの言ってるのは一見マトモそうだし、また事実そうかもしれないけど、科学的なデータで論証するのは容易じゃない。
エルニーニョだとかラニーニャといった地球の脈動からくる現象も関係しているのかも知れない「複雑系」の世界だからね。
でもその逆は簡単に論証できる。

Aさん―ちょっと待ってください。「複雑系」ってなんですか。それにエルニーニョとラニーニャに人為は関係していないと言い切れるんですか。

H教授―それを説明しだすと長くなりすぎるからパス。黙って聞き流しておけばいいんだ。

Aさん―(小さく)言葉を聞きかじっただけで、中身は知らないんだ。ほんとインデックスマンなんだから。よくこれでキョージュが務まるわよねえ。あ、これだから務まるのか。

H教授―(聞こえてない)つまり猛暑がつづくと電気の使用量は鰻上りになる。エアコンが町を冷やすか暖めるかは前に議論したから繰り返さないけど、火力発電所がフル稼働しなけりゃならなくなる。
つまり化石燃料をいっぱい燃やさなきゃいけないから、温室効果ガスのCO2をいっぱい出して、長い眼でみれば温室効果を押し上げることになる。

Aさん―どうして火力発電なんですか。原発だって水力だってあるじゃないですか。

H教授―原発は臨界後の出力調整がむつかしいから、ベース電源として用いられているんだ。
水力は土台ムリだ。夏の渇水時にどうして水力発電量を増やせるんだ。

温暖化をめぐる欧米日格差

Aさん―そうか、じゃ今年もCO2削減はむつかしそうですね。京都議定書の90年比△6%なんて夢のまた夢なんじゃないですか。

H教授―でもEUは90年比ですでに3%カットに成功しているよ。

Aさん―うーん、ニッポンは90年比で11%増だったですよね。それでも経済界は温暖化対策税導入に反対しているし、えらそうなことを言ってる自称環境派のヒトも自腹を切らなくてすむとなると、目いっぱいエアコンを使っているし、やっぱりニッポンは環境後進国なんだ。

H教授―あ、そう。じゃエアコン切ろうか。

Aさん―(あわてて)ダメ、いまのセリフ取り消します。センセイはいなくなってもいいけど、エアコンだけはつけて。お願い。

H教授―わかった、わかった。でもニッポンを環境後進国と言い切るのは酷だな。
単位GDPあたりのCO2排出量でいけば、いまでもニッポンはEUよりも小さいから、世界一の省エネ大国といえる。
つまりニッポンはオイルショック以降省エネを徹底的にやった。だからこれ以上はなかなかむつかしいんだ。
からからに乾いた雑巾を絞っても一滴もでない、それに比べりゃEUはまだ雑巾に湿り気があるんだ──とは経済界の言い草だけど、ま、それなりにもっともな点はある。もちろんボクは反対だけどね。

Aさん―アメリカは?

H教授―アメリカはびちゃびちゃの雑巾だ。それでも絞ろうともしない。絞るのはイラク捕虜だけで...。

Aさん―ストップ! その話はそこまで。

H教授―わかた、わかった。アメリカは節電とか省エネとかはまるで考えてないね。ま、それでもプリウスの売れ行きが快調だそうだから、草の根では変わりつつあるのかもしれない。

Aさん―じゃあ、アメリカは論外としても、EUと比べても、ニッポンは環境先進国なのかあ。

H教授―それはどうかなあ。少なくともEUは地球温暖化対策を目的として、技術革新や再生可能エネルギーへの転換を進めてCO2の削減をしてきている。
ニッポンが省エネを徹底してやったのはコスト削減のためで、それでもって売れ行きを伸ばしてきた。つまり経済成長のための技術革新の副産物で意識的にCO2を減らそうとしたんじゃない。だから環境先進国と胸張っていえるかどうか...。

Aさん―なんかセンセイの言うこと聞いてりゃ、環境先進国だか後進国なのかわからなくなっちゃうなあ。

H教授―だから進んでいる部分もあれば遅れている部分もあるってことだよ。いとも簡単じゃないか。
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