環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第23講 「二つの山場と三位一体改革」
第22講 「環境戦線異状あり」
第21講 「Hキョージュ、環境行政の人的側面を論ず」
第20講 「喧騒の夏」
第19講 「キョージュの私的90年代論」
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No. 第22講 「環境戦線異状あり」
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Issued: 2004.11.04
H教授の環境行政時評 (第22講 その1)

Aさん―センセイ、台風23号のあと、中越大地震。被災者はほんとにお気の毒ですね。でも、今年はどうなっちゃってるんでしょう。それに台風24号も沖縄に来るそうだし。

H教授―ほんとだね。被災者のみなさん、心からお見舞い申し上げます。ところでこういう天災で家屋を失った人に対しては国家補償もできないし、保険もふつうは適用除外になっている【1】
でも国家が国民を守らなくてどうするって思うよね。補償でなく、復興支援金として、被災額に応じて支払うべきだよね。
ま、最近はある程度助成される制度ができたみたいだけど、もっと充実させるべきだよね。

Aさん―でも××先生は、そんなところに家を建てたり買ったりしたんだから、その人の自己責任だって言ってましたよ。
【1】 内閣府防災担当のホームページ
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H教授―な、なんだと!(いきりたつ)

Aさん―いや、ワタシじゃないんです。××先生が言ったんです。

H教授―あ、ゴメン。そりゃあ、××さんみたいに、実家の援助で災害なんか受けそうにない安全な豪邸を買える人はいいさ。でも、ボクなんかは29年間働いた退職金を全部はたいても、買えたのは地すべり危険区域とかなんかに指定されているいまの中古の小さな住宅なんだ。
だから身につまされて、そういうときムリしてでも義捐金をだすようにしてるんだ。政府だって自治体だってその程度のことしなくてどうする!

Aさん―でもそんなおカネ、わが政府にはもはやないでしょう?
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時評1 ─ツキノワグマの悲劇

H教授―その分は翌年の税金に特別加算すればいい。多くの国民はよしとしてくれるよ。
で、今年は酷暑に豪雨に台風と、まさに異常気象なんだけど、これがツキノワグマ騒動の引き金をひいたという話だ。

Aさん―どうしてですか。

H教授―もともとツキノワグマは果実食の臆病な動物で、人の気配がすると避けるんだ。だからふつうは人里から離れたところでドングリなんかを食べているんだ。ところが今年はドングリが不作みたいなんだ。

Aさん―えー、ドングリ? ドングリにも豊作不作があるんだ。でも、なんで?

H教授―酷暑なんかが影響しているんじゃないかな。そして不作の中、ようやくできたドングリさえも豪雨や台風でふやけたり流されたりした。だから、食い物を求めて里へ降りてきて、人間と出会ってパニックになったんじゃないかって話だ。


Aさん―ツキノワグマ絶滅の序曲にならなけりゃいいですけどねえ。

H教授―かつては中山間地域には人がいっぱいいて、里山林は薪炭の生産の場だったし、そこの落ち葉や枯れ枝なんかも畑に漉き込んだりしていたから、頻繁に人が出入りしていた。林内も明るかったから、ツキノワグマは人を避けてもっと奥山にいた。
でも、いまや中山間地域には人影はめっきり少なくなり、里山林は放置され、藪だらけになってしまってから、ツキノワグマの行動範囲は放置里山林まで広がっていたんじゃないかな。だから、今回のようなことがあると、人との接触事故も一気に増えてしまったんだろうな。

Aさん―どんぐりが山にたっぷりあればいいんですよねえ。

H教授―あるNGOが市民に呼びかけ、都会のドングリを集めて山に戻そうとしたみたいだ。

Aさん―へえ、スゴイ!

H教授―でもドングリにもいろいろあるから、地域の固有の生態系を撹乱するんじゃないかって意見やそもそも野生生物に給餌するのはよくないって意見など批判的な意見もあるみたいだねえ。それが原因かどうかしらないが、そのNGOもそれ以上のドングリ受け入れをストップしたという話だ。

Aさん―うーん、どうすればいいんですか。


H教授―わからない。かたっぱしからツキノワグマを撃ち殺せというような短絡的な意見は論外だけど、餓死するのは自然の摂理、いわば自然淘汰で、やむをえないという意見もある。里山林の放置による薮化も地域本来の自然生態系、潜在自然植生への回復過程じゃないかという見方もできる。
こうした問題は科学だけじゃなく、環境倫理とか文明観・自然観といった価値観の問題が絡んできて、絶対の正解というのはないんじゃないかな。
それに直接的な原因である異常気象は地球温暖化と関係があるという見方もあって、いろんな環境問題はどっかでつながってるんだということをよく考えてみる必要があるね。
こういう天災が起きると大量の廃棄物が出て、処理場不足になってしまうとか、ほかにもいろいろあるもんね。
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