環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第23講 「二つの山場と三位一体改革」
第22講 「環境戦線異状あり」
第21講 「Hキョージュ、環境行政の人的側面を論ず」
第20講 「喧騒の夏」
第19講 「キョージュの私的90年代論」
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No. 第22講 「環境戦線異状あり」
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Issued: 2004.11.04
H教授の環境行政時評 (第22講 その2)
時評2 ─総合治水
Aさん―ま、それはともかくとして、今回のように各地で洪水がおきると、堤防をもっと嵩上げしたり、ダムをいっぱい作ったり、これまで以上に治水に力をいれなきゃいけないんじゃないですか。

H教授―たしかにそういう箇所もあるとは思うよ。でもどんな災害も防止できるような治水なんてどだいムリだし、どれだけカネがあっても足りないよ。
いまですら800兆円も未来の世代に借金しているんだから、できるだけカネを使わずに災害を起きにくくするソフトな工夫をしたり、起きても軽微な被害ですむようなことを考えた方が大事だと思うな。
そういう意味ではダム云々よりは総合治水ってことを考えた方がいい。

Aさん―総合治水?

H教授―いままではゆったり流れる川の川幅を狭め直線にして、土地の有効活用を図ろうとし、その代わり川の堤防を高くし大雨のときはできるだけ早く海に流すようにしてきた。そして砂防堰堤やダムをいっぱい作ってきた。でもそういうやり方はとうに限界にきている。
山に広葉樹を植えて侵食を抑えるとともに保水力を高め、都市や町の舗装を透水性にして雨水を地下浸透させたり、冠水の危険があるような場所は農地としておいていざという場合遊水地となるようにしておくことだ。

Aさん―そんなこと言ったって現に人が住んでるのをどうしようもないじゃないですか。

H教授―宅地化しているところまで、いますぐ農地に戻せといってるわけじゃない。ボクだっていま住んでるところを出て行けといわれたら困っちゃうよ。
でもね、ある試算じゃ、キミに曾孫ができるころは人口は半減しているそうだから、そうなれば土地にはだいぶゆとりができるから可能だろう。そうした100年先を見据えたビジョンを持つことが必要なんだ。

Aさん―曾孫どころか子どもを作る相手がいません。そっちの方をなんとかしてください。

H教授―可哀想に。キミには絶対だれにも負けないいいところが一つあるのにねえ。

Aさん―(思わずニッコリ)え? それはなんですか。

H教授―だれの先生よりもキミの先生がいい(笑)。

Aさん―(憤然と)もう帰ります。ホント、愛想が尽きたわ。

H教授―(慌てて)ジョ、ジョーダンだよ。
それに山に広葉樹を植えることは保水力アップだけでなく、炭酸ガスの吸収源にもなって、温暖化対策になる。
クマのためにもいいと思うよ。
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時評3 ─ロシア、京都議定書批准に
Aさん―そうだ、温暖化といえばロシアが京都議定書批准を決めたそうですね【2】。センセイ、たしか前講でロシアは批准しないんじゃないかといってたですよねえ。その数日後にロシアは批准を閣議決定したんですよ。ほんと、センセイの言うこと、あてにならないんだから。

H教授―そういうなよ。悪い予測をしておく方が、外れたらハッピーだし、当たったらオレの予測はあたったと自慢できる。どっちにしたっていいじゃないか。
それに、ボクの言ってることは誰でも知ってることだとか、受け売りにすぎないなんて言われたこともあるけど、そうじゃないことがはっきりしたじゃないか。ボクだって、自分のアタマで考えてるんだ。
【2】 ロシア、京都議定書批准へ
EICネット国内ニュース「ロシア上院の京都議定書可決を歓迎する環境大臣談話を発表」
環境省大臣談話

Aさん―そして、その部分は全部外すんですね(笑)。

H教授―う、うるさい!

Aさん―でもねえ、ロシアの閣議決定は前講が掲載される前でしょう。いっくらでもその間に直せたのにどうしてそうしなかったんですか。そうすれば満天下に恥を晒さずにすんだのに。

H教授―そんな姑息なマネはしたくない。これがボクの矜持なんだ。

Aさん―ホントかなあ。ただ、面倒くさかっただけなんじゃないですかあ。

H教授―ま、それもあるけどね。
もっとも手放しで喜べない。ロシアは要するにホットエアーっていうカネ欲しさに批准するんで、第二約束期間についてはどう転ぶかわからない。

Aさん―それより日本の対応の方がもっとたいへんじゃないですか。
炭素税(温暖化対策税)【3】はどうなりそうですか?

H教授―政府税調の会長は時期尚早みたいなこと言ってたし、むつかしいんじゃないかなあ。
来年早々に京都議定書発効は確実みたいだから、導入を前提に1年かけて制度設計しろって言うならわかるけど、そうじゃないみたいだしねえ。
ま、温暖化対策大綱の改定がどういう決着をみるかだねえ。
産業界は京都議定書に冷たく、経団連は炭素税猛反対の姿勢を崩していないけど、経済同友会の方はロシアの批准を歓迎するようなことをいってたから、産業界の方も必ずしも一枚岩じゃないみたいだ。

Aさん―来週の米国大統領選挙の結果もおおきく響くんでしょうねえ。

H教授―うん、ただ、ケリーが勝っても京都議定書にただちに戻るなどの劇的な政策変換はできないと思うよ。ま、少なくとも欧州などとの協調路線には戻るとは思うけどね。

Aさん―どっちが勝つんでしょう?

H教授―さあ、大接戦みたいだけど、どっちにしろ本講が掲載される頃には決まってるだろう。

Aさん―センセイはどっちの、あ、言うまでもないですよね。

H教授―ふふ、いずれにせよ、温暖化問題は自然エネルギーだとか燃料電池みたいな技術的なブレークスルーだけではダメで、同時にエネルギー総体の抑制に転じるような社会的ブレークスルーが必要だろうな。

Aさん―ムリですよ。快適さを追及するのは人間の本能なんですから。

H教授―そんなことはないよ、快楽を追求するのは本能だけど快適さはまた別。快適さとは逆の、はたからみれば苦痛しかないようなスポーツに身を焦がす人は沢山いるじゃないか。それは価値観の問題なんだ。
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【3】 炭素税
地球温暖化防止のための税の論点(環境省)
政府 税制調査会 平成12年7月「わが国税制の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択−」答申 環境問題への対応
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