環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第24講 「2005 ─地方の時代のために」
第23講 「二つの山場と三位一体改革」
第22講 「環境戦線異状あり」
第21講 「Hキョージュ、環境行政の人的側面を論ず」
第20講 「喧騒の夏」
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No. 第23講 「二つの山場と三位一体改革」
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Issued: 2004.12.02
H教授の環境行政時評 (第23講 その3)
時評3 地方分権と国立公園管理

H教授―それと国立公園の施設整備から一切、都道府県が手を引くというんだけど、これも納得しがたいなあ。

Aさん―だって国立公園は国が管理するのが本来でしょう。
自然公園法でもそうなってるんでしょう。

H教授―そりゃあ、アメリカみたいな土地の所有権・管理権を公園当局(国)が持っている営造物制の公園ならそれでいいよ。
でも日本みたいな地域制の公園では、民有地がいっぱいあって、集落があったり、農林業なども営まれているんだから、国ばかりでなく都道府県や市町村、民間も含めて関係者が連携しながら、みんなでいい公園を造る努力なしではやっていけないと思うよ。
そもそも自然公園法には管理なんて言葉はないし、指定や計画策定、許認可は誰がやるか決められているけど、施設の整備や清潔の保持なんかは関係者が協力してやるように、条文にも明記されている。つまり、関係者が協働して国立公園を管理しなさい、というのが日本の自然公園制度なんだ。
日本の場合、国立公園の「国」というのはNationとかStateよりCountryの方がふさわしいと思うな。

Aさん―たしかセンセイが現役のレンジャーの頃はそうだったんですよね【6】

H教授―うん、その頃の単独駐在レンジャーは現場の最先端で職住一体。自然保護の情熱はあったし、地域と住民への愛着は深かったし、地域の自然のことはよく知ってたけど...。

Aさん―(遮って)センセイ、自然のことは知らなかったんじゃないですか!

H教授―う、うるさい。とにかく単独駐在の若いレンジャーは自然公園法以外の一般的な行政や法律の知識は乏しかった。それを補い支えてくれたのが都道府県であり、市町村だ。
とくにレンジャーが個人的な思いで突っ走ろうとするとき、都道府県の自然保護課などにレンジャー仲間の先輩やベテラン技術屋さんが係長とか補佐とかでいて、ブレーキをかけたり、サポートをしてくれた。
当時の許認可は軽易なものは都道府県知事権限、それ以外は大臣権限だったけど、都道府県知事権限のものだって、レンジャーが事実上担当してたし、大臣権限のものだって都道府県の意見進達が必要だった。さらに許認可に際しては市町村の意見を聞いたりもしてたんだ。
また施設整備は補助を受けて都道府県がやっただけでなく、当時は所管地だけだった直轄事業だって、都道府県の要望を踏まえて決定し、施工まで都道府県に委任してたから、実質的には10割補助の都道府県事業みたいなものだった。
まして、清掃だとか草刈なんかの管理行為は、レンジャーが中心になって都道府県や市町村、観光協会などの地元団体が一体となってやったものだった。

Aさん―それがどうして?
【6】 センセイが現役レンジャーだった頃の話(第7講)
第7講・その3「レンジャー私史」

H教授―地方分権法だ。あれでがらっと変わった。
国立公園に関することは全て国、と地方分権が間違って伝えられているけど、地方分権法で明確に区別したのは、指定や計画の樹立権限者、許認可の権限者だけなんだ。国や都道府県の担当者をはじめとする関係者が協働して、いい国立公園を造っていくという、自然公園法の根幹が変わったわけではないんだ。
なのに、どこかで国立公園の管理は国がやるべきだという地方分権論になっちゃった。都道府県の自然保護課のベテラン技術屋さんたちもおかしいと思っているんじゃないかなあ。
そのうえに今回の自然公園等施設整備補助金なんだけど、これも今回の三位一体改革で命運が尽きてしまいそうだ。日本の自然公園制度の本質がちっともわかっていないんじゃないかな。
ごみといい、国立公園といい、こと環境省に関する限り「惨身痛い改悪」だなあ。
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時評4 環境ホルモン再説
Aさん―お得意のお寒い駄洒落で〆るんですか(苦笑)。
ところで第16講で環境ホルモンの話をしてくれましたよねえ【7】
センセーションを巻き起こした低用量仮説(暴露が微量なほど影響が顕著なことがありうる)はありそうにないし、環境ホルモン物質の現在程度の環境濃度では人への影響は考えられないって。

H教授―うん、多くの研究者の間ではそういうコンセンサスが得られているみたいだってね。

Aさん―でも先日BSで「地球大異変」という全3回のシリーズものの第2編で「水が危ない!」という米国のドキュメンタリーが放映されてたんですけど、センセイの話とまるでちがってましたよ。

H教授―え? どういう話だったの?
【7】 環境ホルモンについて(第16講)
第16講・その3「環境ホルモンのいま

Aさん―カエルがどんどん減ってるんですって。

H教授―うん、それは事実みたいで、IUCNだかWWFが警鐘を発してた。ぼくも環境ホルモンの生態系へのリスクについて、これからも研究すべきだと以前話しただろう。

Aさん―で、ヒョウガエルとかいうカエルの減少はトウモロコシ畑に使うアトラジンとかいう農薬がオスをメス化(雌雄同一個体化)することによる生殖阻害が原因だって実験で判明したそうです【8】

H教授―ふうん、TBTの陸上版か。で?

Aさん―ところが実験では、メス化は農薬が微量な場合のみ起きたそうですよ。つまり低用量仮説は実証された! という話です。

H教授―えー?
【8】 カエルの減少と農薬の影響について
参考 アトラジンによるカエルの雌雄同体:室内研究と野外研究との連携(タイロン B. ヘイズ)
※International Symposium on Environmental Endocrine Disrupters 2001 (2001年12月17日(月)開催、セッション4「野生動物への影響」より)

Aさん―それだけじゃありません。米国の4地域―うち3地域は都市部で、1地域は農村部なんですけど─ で、そこの男性の精子を顕微鏡下で比較したそうですけど、農村部のものは明らかに活性度が低くって、その原因として考えられるのは水道中の微量の農薬だけだそうです。これって明らかに環境ホルモンですよねえ。

H教授―うーん。両方ともにわかには信じられないなあ。
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