Aさん―また<逃げ>がはいりましたね。ま、いいわ、ところでセンセイもそうだったけど、環境省からの県への出向って多いんですか?
H教授―さっきも言ったように、レンジャー関係では厚生省時代は実働部隊としていっぱい出向していたけど、環境庁になってからは激減した。やはり他省庁と同様、課長ポストでなきゃいやだって言い出し、県の方ではそこまでのメリットは乏しいからそうなっちゃった。
だから環境庁になってからは全国で課長ポストを数個持っているだけで、旧自治省だとか旧建設省とは大違いだ。なんせカネもチカラもないからなあ。
Aさん―県の仕事は面白かったんですか?
H教授―ああ、キミも含めて学生には国際公務員に憧れるのが多いけど、国際公務員はだれを見て仕事をするんだと思う?
Aさん―?
H教授―地球市民だ。だけど、それはきわめて観念的な話で、実際にはそんなもの見えないよね。国家公務員の相手は国民だけど、これもなかなか実感しがたく、相手は他省庁や団体の長ということになる。ま、レンジャーを別にしてね。
その点、地方公務員は県民の顔が見える分、仕事は面白いし、プライベートでも充実した時間が過ごせたと思うよ。
Aさん─要は公私ともども飲む機会が多かったから面白かったんでしょう。