環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
トップページへ
第26講 「国土計画と自然保護」
第25講 「エイリアンを巡って ─外来生物法雑感」
第24講 「2005 ─地方の時代のために」
第23講 「二つの山場と三位一体改革」
第22講 「環境戦線異状あり」
メルマガ申し込み 会員登録 ヘルプ サイトマップ
国内ニュース 海外ニュース イベント情報 環境Q&A 機関情報 環境リンク集 環境用語集 ライブラリ 森づくり宣言
No. 第25講 「エイリアンを巡って ─外来生物法雑感」
page 1/4 
1
234
Issued: 2005.02.10
H教授の環境行政時評 (第25講 その1)

Aさん―センセイ、まもなく春だというのに浮かぬ顔ですね。あ、前歯がない! みっともなあい。それが原因ですね。
どうしたんですか、モチを噛んだら、抜けちゃったんですか。

H教授―(苦りきった表情で)モチじゃない、パンのへただ。

Aさん―ぷっ、なっさけないですねえ。アタシャ慣れっこでいいですけど、ゼミの若い女子学生なんか気味悪がって近づいてこないじゃないですか。

H教授―ほうっておいてくれ。還暦を迎えたんだ、歯も目もなにもかも衰えるさ。
大体キミ、ボクに還暦祝いも寄越さなかったぞ。

Aさん―そんなあ、泥棒に追い銭じゃないですか。

H教授―な、なんだと!
インド洋津波災害雑感

Aさん―ま、いいじゃないですか。それにしても前講のすぐあとに起こったスマトラ沖地震の津波災害はひどかったですねえ。

H教授―うん、豪雨災害に中越地震で去年は終わりかと思ったら、最後の最後に超弩級の災害だもんなあ。死者・行方不明が30万人を越したそうだから、史上最大級の災害だ。浮かぬ顔をしていたとすればそのせいだよ。

Aさん―今度の津波の被害に比べれば人間のすることなんてたかが知れてますねえ。

H教授―そんなことはない、第一次・第二次大戦の死者はそんなものじゃないし、平時でもヒットラーやスターリン、ボルポトの大量虐殺はもう1桁上だ。アフガン、イラクの死者だって相当なもんだ。
ま、それにしても自然がいかにおそろしいか、まざまざと実感させられた。

Aさん―ところで、津波の死者をもっと減らす手立てはなかったんですか。

H教授―まあ、日本のような多発地帯ならそれなりに警戒態勢が取れたんだろうけど、インド洋ではほとんど経験がなかったみたいだから、人災だと責めるのは酷かもしれない。それにしても、もう少しなんとかならなかったのかという気がするけどねえ。

Aさん―あとイラクやアフガンでは戦争状態で、米軍がしょっちゅう大型ヘリを飛ばしてるんだから、それらを即座に、かつ大量に動員すれば、すこしは名誉挽回できたのに、時期も規模もピントはずれで、ほんとブッシュさんって視野狭窄ですよねえ。

H教授―不愉快になるからその話はやめよう。ところで津波は英語でなんというか知ってるか?

Aさん―さあ?

H教授―TSUNAMI。日本語がそのまま通用する珍しい例だ。逆に言うと日本は津波大国で、三陸地方など各地で古来から津波で甚大な被害を受けている。おかげで、警報システムもきちんとしているし、沿岸住民も津波に敏感なんだ。
ま、今回の問題はいかに国際社会が被災地のひとびとの生活再建に取り組めるかだ。
 ページトップ

京都議定書まもなく発効!
Aさん―ところで、いよいよ京都議定書発効ですねえ。

H教授―うん、2月16日には発効する。EICネットを見ればわかるけど【1】、歴史的な第一歩だというので、京都や東京など各地でいろんなイベントが催される。政府では、いままでの「温暖化対策大綱」を改定して、来年度早々には地球温暖化対策推進法の規定による「京都議定書削減目標達成計画【2】」として閣議決定することになっている。
でもねえ、各省調整のメドがまったく立たないままみたいなんだよね。まったく、浮かれている場合じゃないよ。

Aさん―やっぱり環境税炭素税)問題が原因ですか。

H教授―うん、前講で言った対立の構図はそのままみたいだ。まあ、役人のやることだから、土壇場のウルトラCで玉虫色の「達成計画」を決定することもないとはいえないけど、そんな呉越同舟の妥協の産物じゃどうしようもない。ここはやはり政治の出番だよねえ。
といっても日本の場合、大臣なんてのは基本的には各省官僚の代弁者なんだから、ソーリの出番じゃないかな。郵政民営化なんかよりよっぽど喫緊の課題だと思うんだけど、コイズミさんは関心ないのかなあ...。
 ページトップ

【1】 京都議定書の発効に関連するイベント
EICネット イベント情報コーナー
【2】 京都議定書削減目標達成計画
「京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方に関する答申」について(平成14年1月24日環境省報道発表資料)
三宅島帰島開始

Aさん―明るいニュースもありますよ。5年ぶりに三宅島島民の帰島がはじまりました。

H教授―うん、火山活動がややおさまったということなんだろうなあ。めでたいことだけど、噴火の危険性だけでなく、SO2などの火山ガスにも注目しなけりゃいけない。

Aさん―古典的公害の代表的な大気汚染物質ですね。

H教授―うん、公害物質としてのSO2は石炭などを燃焼するとき石炭に含まれている微量の硫黄分が酸化されてできる。昭和40年代前半までは、そうしてできたSO2が、工場周辺の山の木を枯らし、住民にも喘息などの呼吸器障害を引き起こした。また酸性雨の原因物質でもある。
SO2環境基準が決められ、排出規制もなされるようになり、いまではそうした工場起源のSO2は激減、全国ほとんどの地域で環境基準を達成している。「日本は公害との闘争に勝利した」という1977のOECDレポート(「日本の環境政策レビュー」)の評価はこのSO2対策の成功によっているとさえいえる。
でもボクの現役時代、唯一環境基準未達成地域があった。いまでも未達成だと思うけど、どこだと思う?

Aさん―え、え? ひょっとして鹿児島?

H教授―そう、桜島が原因だ。1年間に桜島火山から排出されているSO2は、全国の工場全体から出る年間量に匹敵するなどといわれていた。ま、毎日大量のSO2を出すんじゃなく、間欠的だし、しかも気をつけなきゃいけないのはそうしたときの風下だけだけどね。
桜島山麓ではppmオーダーに達し、臭いがすることだってあるし、風向きによっては、鹿児島市内だって環境基準値を越すことがよくある。
三宅島もそうじゃないかと思うよ。

Aさん―対策はないんですか

H教授―大気汚染防止法の世界では高濃度になったときは、発生源の工場などの操業停止要請だとか命令だとかを出さなきゃいけないんだけど、相手が火山じゃどうしようもない。ま、0.01%ぐらいは工場も寄与しているかもしれないから、法的にそうした要請や命令を出さなくていいかどうかは微妙な問題を含んでいるけど、常識的・現実的にはそんな要請や命令を出せるわけがない。つまり公害諸法では自然汚染のことを想定していないんだね。
でもねえ、その場合にも、モニタリングをしっかりやって、一定レベルを超す高濃度のときは屋内にいるようにとか、風上に避難するようにとかいうリアルタイムの情報開示とガイドラインというか、警報が必要だと思うよ。
三宅島に帰島するひとたちはたいへんだと思うけど、行政は噴火だけでなく、そうしたところにも目配りしてほしいよね。テレビで見る限りはそうしたことをやっているようだけど。

Aさん―環境基準をクリアできないような、そうしたところには本来住むべきではないんじゃないですか?

H教授―まあ、環境基準を絶対視してしまえば、そういうことになるかもしれない。
でも、そうしたところにも人は住んで歴史と文化をつくってきたんだ。ある程度のリスクを覚悟で住むという選択を拒めないし、ボクだってそこが故郷だったら、住みたいと思うよ。
そして、行政はリスクを軽減できるような現実的な対処方法を提供しなければいけないと思うな。

Aさん―でも日本は火山地帯ですよねえ。ほかにもそんなところがいっぱいあるんじゃないですか。

H教授―うん、温泉地帯なんかじゃ「地獄」なんてのもよくある。そんなところが観光地になって集落を形成している。
ま、ふつうは山間地の小さい集落だから環境基準の常時監視【3】もしてないけど、環境基準アウトのところも結構あると思うよ。SO2だけじゃなく、硫化水素なんかの危険性もあるかもしれない。
もっとも、鹿児島の場合、日常的に一番困ったのは降灰だったけどね。風の具合で夏には降灰がすごいんだ。夏でも窓を閉めっきりにしなければいけないから、クーラーの普及率が異常に高かったな。ぼくは最初の夏はなんとかクーラーなしで耐えたけど、2年目はダメだった。
 ページトップ
page 1/4 
1
234
次のページへ

【3】 常時監視
環境省環境管理局水環境部では、「公共用水域における亜鉛の常時監視結果(平成3〜12年)」を公表している。
また、同省大気環境課及び独立行政法人国立環境研究所が提供・運用する、大気汚染の広域監視システム(愛称「そらまめ君」)による常時監視結果(速報)がリアルタイムに公表されている。
大気汚染の広域監視システム(愛称「そらまめ君」)
Copyright (C) 2004 EIC NET. All rights reserved.