環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第26講 「国土計画と自然保護」
第25講 「エイリアンを巡って ─外来生物法雑感」
第24講 「2005 ─地方の時代のために」
第23講 「二つの山場と三位一体改革」
第22講 「環境戦線異状あり」
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No. 第25講 「エイリアンを巡って ─外来生物法雑感」
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Issued: 2005.02.10
H教授の環境行政時評 (第25講 その2)
来年度環境省予算案概括
Aさん―要は最初の年は引越し費用のせいでオカネがなかったんでしょう。
ところで来年度の政府予算案ですが、三位一体改革、中途半端に終わりましたね。マスコミでは、道路公団民営化、郵政民営化といい、結局コイズミ改革は腰砕けだという評価ですよねえ。かけ声だけでなんにもしていないって。

H教授―そりゃ、現場を知らないものの言い分だ。実際にはとんでもない混乱を招いている。それに、なんにもしてないどころか、いろんなことをしているよ。いいか、悪いかが問題なだけで。
例えば、あっというまに自衛隊のイラク派遣、そして期限がきたあとの派遣延長だってやっちゃったじゃないか。

Aさん―そりゃあ、センセイはイラク派遣反対でしょうから...。

H教授―とんでもない、ぼくは一度だって派遣反対なんて唱えたことはない。

Aさん―えっ、そうなんですか。じゃ、賛成?

H教授―もちろんだよ。イラクの混乱を放っておくわけにはいかないから、大賛成だよ。ひとつだけ条件があるけど。

Aさん―え、なんですか?

H教授―米国のイラク侵攻はとんでもない許されざる戦争犯罪だったと公然と認め、盟友が犯したその罪滅ぼしのための人道支援だと明言することだ。

Aさん―セ、センセイ。そんなことできるわけが...。
それより惨身遺体改革、もとい三位一体改革でバタバタしたんですが、環境省の来年度予算案は、結局どうなったんですか。

H教授―公共事業関係では廃棄物処理施設の整備が2割減の約1,000億円となり、従来の補助金はかなりが交付金ということになった。
自然公園施設の整備も一割減の125億円と大きく減らした。国立公園の施設整備補助については県のやることではないという、とんでもない地方分権の観点から廃止され、今後の整備は直轄でやることになる。もちろん県単独でやることは可能だけど、ま、ほとんどなくなるだろうな。
国定公園は補助金が交付金になった。
県立自然公園などの国立・国定公園以外の整備費補助は何種類かあったけど、基本的に廃止。
まあ、自然公園はハコモノ整備よりは維持管理などのソフト関係にシフトすべきで、予算額の減額よりも、県との関係がより希薄になってしまうのが痛い。
浄化槽整備だけが270億円ほどで微増だけど、これも補助金は大きく減り、そのかわりに交付金になった。
つまり公共事業関係では惨敗ということだね。こうなると道路、港湾なんていうのとひとくくりにして公共事業というのはどうかと思うなあ。

Aさん―その補助金と交付金とはどうちがうんですか。

H教授―はは、よくわからない。環境省だってどう区分けすればいいか、考え中なんじゃないかな。

Aさん―はあ? 公共事業関連以外はどうだったのですか。

H教授―環境監視調査補助金が税源委譲で廃止、26億円カットされた。その分が地方でちゃんと財源手当てができるか、どうか疑わしい。つまりモニタリングや常時監視といった環境行政におけるもっともベーシックな施策の先行きが心配なものになってきた。
一方、大きく増えたのが石油特会の環境省分で233億円となり前年度からほぼ倍増して、それなりに温暖化対策経費を中心に新規予算や増額が認められた。

Aさん―で、総額ではどうなんですか。

H教授―総額では約2,350億円で、対前年より9%ほど減額になっている。
環境の時代だとか循環型社会の形成だとかいってる割にはひどい予算になった。どうだい、これでもコイズミ改革はなにもしていないなんていうのかい?

Aさん―予算の大枠はわかりました。あと、個別になにかありますか。
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アクテイブ・レンジャー

H教授―そうだなあ。アクテイブ・レンジャー【4】というのができることが決まった。

Aさん―アクテイブ・レンジャー? それはなんですか。

H教授―国立公園のレンジャーって知ってるよね。

Aさん―センセイもそうだったんでしょう? 地区自然保護事務所やその出先で自然保護官として駐在している技術系職員の総称で、全国に200人くらいいるんじゃなかったですか。

H教授―職業としてのレンジャーはそうだね。現場に出ていない職員も含めて、レンジャー要員として採用した自然保護系技官全体を指す場合もある。この場合には、霞ヶ関などにもレンジャーがごろごろ──といってもたかが知れてるけど──いることになる。

Aさん―いずれにせよセンセイの話では、レンジャーは許認可や計画、調整などを行う行政官で、米国のような自然解説やパトロールをするというイメージとはだいぶ違うんですよね。

H教授―うん、そうした部分はボランテイアやアルバイトに頼ってきたんだけど、そこを担う任期制の職員、つまり非常勤国家公務員をアクテイブ・レンジャーとして来年度は60人採用するそうだ。
先行して2人を試行で公募したそうだけど、なんと百人以上も応募があったそうだ。

Aさん―いいことじゃないですか。

H教授―かれらのメイン業務を何にするかだね。違反行為摘発のパトロールか、ビジターセンターに拠点を置いたインタープリテーションか、と考えただけでも業務の中身は相当違うからねえ。外来生物法とリンクさせて、エイリアン(外来種、移入種、侵入種)【5】の駆除なんてのもすることができるかもしれない。
ただ、重箱の隅をつつくような違反行為を片っ端から摘発なんてして、その後始末はすべていままでのレンジャーがやるなんてなると、業務がストップしかねない。だからよっぽどよく考えなきゃいけないね。
ま、ひとつの公園で何十人という規模になれば、いろいろと分業できると思うけど。
【4】 アクティブ・レンジャー
国立公園の現地管理業務を行う環境省の自然保護官(レンジャーと言われている)の補助員。国立公園利用者の指導など主として野外の現場業務を行う。
環境省の自然保護官が会議や許認可指導などの室内業務に終われ、自然保護地域の現場で行うパトロールや利用者指導等の業務に手が廻らないため、自然保護官の補助員を特別に雇用し、現場に配属することにより国立公園の現場管理業務を充実させようとするもの。
2005年度から約60人の雇用を予定している。
アクティブ・レンジャーの試行について(平成17年1月4日 環境省報道発表資料)
環境省アクティブ・レンジャー(試行)の募集(環境省自然環境局沖縄奄美地区自然保護事務所)
環境省>国立公園等現地管理体制強化(アクティブ・レンジャー(仮称))推進費

Aさん―ね、センセイ、ワタシやりたい!やれるかなあ。

H教授―競争率は高いし、将来の身分保障はなにもないよ。そういう意味では海外青年協力隊みたいなものだ。それにどこに住むんだろう。多分宿舎なんてないだろうしなあ。
それでもこれはグリーンワーカー事業【6】とうまく組み合わせられれば、日本の国立公園行政に新たなスタートをもたらすかもしれない。正規のレンジャーだって、いまや現場管理はII種職員に任せる方向みたいだから。

Aさん―II種職員?

H教授―うん、昔はレンジャーはI種の技官が中心だったけど、7〜8年前からI種は本省要員として少数に絞り、現地要員として大量にII種技官を採用しはじめた。
II種ってのは、もともとは短大卒を対象にした試験区分なんだけど、そんなものはとっくに有名無実化し、ほぼ全員が大卒になり、レンジャーの世界ではいまや大卒どころか院卒もごろごろいるみたいだよ。時代が変わったということなんだろうなあ。

Aさん―だって、国家公務員って定員が決まっているからそんな大量採用できないんじゃないですか。

H教授―はは、大量ったって、たかが知れてるさ。90年代に入ってから部門間配転という形で赤字で苦しんでいる営林署(現・森林管理署)の職員を毎年受け入れてきたんだけど、最近ではかれらが毎年停年でやめていくから、その分、受け入れ人員にある程度の余裕ができてきたんだ。

Aさん―じゃ国立公園の将来は万々歳じゃないですか。

H教授―そうはいかない。県や市町村と一体になっての公園管理というのが昔からの国立公園のポリシーなんだけど、その根っこのところが、地方分権法以来大きくゆらぎ、今回の「惨身遺体改悪」で、息の根をとめられた。
おまけに来年度から地区自然保護事務所がなくなってしまうんだ。
だから新たな国立公園像をつくりあげられるかどうかだねえ。
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【5】 エイリアン(外来種、移入種、侵入種)
概ね、同義で用いられるが、意味の込め方などで用法が異なる場合もある。
外来種
移入種
侵入種
【6】 グリーンワーカー事業
環境省が国立公園等の現場管理作業のために雇用した地域住民等のこと。
野生生物の保護・保全や外来種対策に関する現場作業、また、清掃困難地における環境美化作業など現実の自然環境保全業務には多くの人手を要する業務が多い。
環境省では、これら人手を要する現場管理作業を効果的に実施するため、地域の実情をよく知っている地元住民等を雇用する「国立公園等民間活用特定自然環境保全活動事業(グリーンワーカー事業)」を2001年度から予算化し、従来、実施されていなかった各種の現場作業を進めている。
ツキノワグマを保護管理するための監視活動、眺望を確保するための展望地の樹木伐採、公園内の不法投棄ゴミ処理など全国で毎年100件程度の現場作業が実施されている。
グリーンワーカー事業(環境省・山陽四国自然保護事務所)
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