環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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No. 第26講 「国土計画と自然保護」
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Issued: 2005.03.10
H教授の環境行政時評 (第26講 その1)
辺野古沖埋立ての新転回

H教授―先週、沖縄に行ってきた。

Aさん―へえ、沖縄旅行ですか、うらやましい。

H教授―うん、ゼミの卒業旅行だったんだ。以前、普天間飛行場の辺野古沖移設問題を取り上げたよね【1】。あれが急転回しそうなんだ。
辺野古に立ち寄って、反対運動を続けている人たちのテント村を訪ねてきたんだけど、ちょうど翌日の新聞誌面を賑わしていた。

Aさん―どういうことなんですか?

H教授―もともと普天間飛行場を辺野古沖に移設する計画だったんだけど、移設には、順調に行っても──まあ、行きっこないけど──10年以上の期間を要する。「冗談じゃない! そんなに待てない」と米側が言い出した。政府内部でも他の移設地がないか内々検討しだしたって記事だ。

Aさん―反対運動の結果ですか?
【1】 普天間飛行場の辺野古沖移設問題
第21講 「時評2−普天間飛行場の辺野古沖移設を巡って」

H教授―そんなこと公式に認めるわけないじゃないか。ただ現地の反対運動のほか、IUCNの勧告が出るだのといったジュゴンサンゴ礁の保護運動の広がりが影響しているのは確かだと思う。

Aさん―テント村のひとたちは欣喜雀躍していたんじゃないですか。

H教授―難しいコトバを知ってるな。10人くらいの中高年の人たちがいたけど淡々としていたよ。だって新聞に出たのはその翌朝だったもん。

Aさん―そういえば嘉手納基地の軍用機騒音訴訟の地裁判決も出ましたね。

H教授―うん、普天間は宜野湾市にあるんだけど、嘉手納基地というのは、その北の嘉手納町にあって、なんとその町の面積の83%を占めているんだ。米軍機の夜間・早朝の航行差し止めと騒音被害の賠償請求を求めた集団訴訟の判決が先月出された。飛行差し止めは権限なしということで却下されたけど、国に28億円の損害賠償を命じたんだ。

Aさん―じゃあ原告の勝訴ですか?

H教授―いや、差し止め請求が認められなかった点や、賠償の範囲が過去の判例より狭かったというので、とても勝訴という雰囲気じゃないね。沖縄の人たちの政府不信や反米感情は高まる一方じゃないかな。

Aさん―で、辺野古沖は今後どうなるんですか。

H教授―まったくわからない。在アジア米軍の再編・再配置問題の行方次第だろうな。
ただ、他の代替地を探すったって、どこへ持っていっても猛烈な反対運動は必至だ。政府財政も逼迫しているから札束でほっぺたをひっぱたくようなことも難しい。かといって、現状のまま放置するわけにはいかない。
もはやこの問題は単なる沖縄の環境保全の問題じゃなく、日本の安全保障をどう考えるかという日本全体の問題になってきているんだ。

Aさん―ふうん、いよいよ総合政策的観点が必要だってわけですね。

H教授―そうそう。キミは総合政策研究科の一員なんだから──一応はさ──、環境だけじゃなく、総合政策的視点を忘れちゃダメだ。
で、辺野古ってのは観光地じゃない寒村でね、付近に昼飯を食うところもないから、「勤労者いこいの村」っていうところに行ってきた。山頂にあって、ヤンバル照葉樹林や海岸を見渡せる絶景を楽しみながら食事したんだけど、ほとんど貸し切り状態だった。ホント閑散としていたなあ。
この「いこいの村」というのは、旧雇用促進事業団が雇用保険の掛け金から融資を受けて造った施設だけど、どこも大赤字で地方自治体に売りに出しているという代物だ。
この手の施設は、70年代から80年代にかけていろんな省庁で造り出したけど、まあまあうまく行ってるのは老舗の休暇村(環境省)【2】くらいで、あとはバブルが弾けて以来、軒並み崩壊状態だね。
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【2】 休暇村
(財)休暇村協会のホームページ
オオクチバス再論
Aさん―その話は今度ゆっくり聞きます。
それよりも前講に対する批判が何通も来ていますよ。オオクチバスの件【3】ですけど、『自分できちんと調査しないで、水域の生物を食べ尽くしてしまうなどといういい加減な発言をするな』ですって。どうやらオオクチバスの特定外来生物の指定【4】に反対している方々のようですが。
【3】 オオクチバスの件
第25講「バスに乗り遅れるな ──特定外来生物ドタバタ劇」
【4】 特定外来生物
特定外来生物等の選定について(環境省)

H教授―もちろん自分で調査したわけじゃないよ。だけど学生のレポートで『オオクチバスが、その水域の生物を食べ尽くしてしまい、共食いまでしている』というのがあったから、マサカと思ってネットで「オオクチバス 共食い」と検索したら452件ヒットした。
在来魚や漁獲量に影響を与えているという調査がいくつも出てきて、それらをざっとみて、在来種に対するインパクトは相当ありそうだと判断した。
水域の生物を食べ尽くすというのは、岩魚も悪食で共食いするから、それだけで判断したわけじゃない。東北地方の小さなため池ではブラックバス以外の魚がほとんどいなくなったという話もその中に出てきていて、信憑性もありそうだった。とはいえ、二次情報だから「という話もあるみたいだ」としたんだ。

Aさん―なあるほど。

H教授―もちろん湖なんかでは隠れ家もいっぱいあるだろうし、オオクチバスも自分の体長の半分以上になると捕食しないなんて話もあるから、完全に食い尽くすことは、まあまずないと思うけど、在来種を圧迫しているのは否定しがたい事実だと思うな。
少なくとも生態系保全という観点からはオオクチバスの放流はなに一ついいことがないのは確かだな。もちろん食糧確保だとか、全国民的観点から必要だということがあれば話は別だけど、そういうわけじゃなくて釣り人の楽しみだとか、釣り業界の振興みたいな観点から容認しろといわれてもちょっとなあ。

Aさん―センセイは釣りをやらないからなあ。ゴルフもやらないからゴルフ場開発には厳しい見方をするんですよね。
H教授―もちろん、オオクチバスはさして在来種にインパクトを与えていないというポジテイブな情報を教えていただければ、この欄で紹介するよ。
公平を期するため『皇居のお堀でブラックバスが大繁殖して全体の7割〜8割を占めるとして大問題になっていましたが、実際に水抜して調査した結果、匹数割合で全体の0.59%しかいなかったことはあまり知られていない事実です』という投書があったことも紹介しておこう。
調べてみたら環境省の調査結果【5】が発表されていた。それによると、移入種の大部分をブルーギルが占め、オオクチバスは投書の通り、全体のわずか0.59%だった。ブルーギルとブラックバスを合わせて12.6%で、残り87.4%は在来種だったという結果だ。
ただ、環境省で外来魚の駆除事業に取り組みはじめてから、根絶を目的に、水を抜いて全数捕獲したときのデータのようだから、それまでの実態調査の結果とはおのずと意味が異なる。過去に、5〜10年おきに定期的に実態調査を実施してきた結果では、ブラックバスはともかく、ブルーギルの移入が深刻で、捕獲個体の8割に上るという結果が出ていた【6】
「ブラックバスが」じゃなくて「外来魚が」とすれば、問題の深刻さは疑いようはない。

Aさん―ふうん。『ブラックバスは被害者だ』という投書もありましたが、それはどう思われますか。

H教授―そりゃそうだ。ブラックバスにはなんの罪もない。密放流する人間に罪があるだけでね。
それにブラックバスやブルーギルが生態系破壊の元凶みたいな言い方がされているけど、同等かそれ以上に、水際線をコンクリートで固めたり、水辺植生を破壊したり、排水を流入させる人間の責任があることを忘れちゃいけない。
ブラックバスだけをスケープゴートにしちゃいけないというのは、まったくその通りだ。
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【5】 皇居外苑濠の魚類調査結果について
「皇居外苑・牛ヶ淵濠における在来種保全作業に係る魚類捕獲状況(環境省皇居外苑管理事務所)」より
[関連資料]
皇居外苑濠魚類調査の結果
平成13年9月11日報道発表資料「皇居外苑濠移入種対策事業の実施について
平成12年6月14日報道発表資料「皇居外苑濠魚類フォローアップ調査の結果について」
EICネット Pick Up!「移入種(外来魚)一掃! ──皇居外苑で環境省が掻い掘り作戦を実施」
【6】 ブルーギル等の移入の実態
過年度の調査結果/環境省
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