環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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No. 第27講「道東周遊随想と愛知万博」
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Issued: 2005.04.07
H教授の環境行政時評 (第27講 その2)

Aさん―へえ、センセイはそれを知っていて様子を見にいったんですね。

H教授―マサカ。そんな修羅場があるなんて知ってたら、「おーい、元気かあ。飲みにいくか」なんて電話できなかったよ。

Aさん―そりゃあ、電話された方はメイワクだったでしょうねえ。

H教授―で、ようやく沖合い3kmまでの海域管理計画を3年以内に策定するってことで基本合意が得られたとのことだ。夏には登録の可否が決まるらしい。
東北海道地区自然保護事務所は、知床の自然遺産問題のほか、釧路湿原の自然再生事業【7】なども所管していて、毎晩深夜まで残業でたいへんらしい。アタマが下がる思いだったよ。
でも情報公開しつつ、ひざ詰め談判で自治体や漁業者団体などの地元合意を取り付けるという手法は、今後の国立公園管理にも生かせると思うよ。

Aさん―同じ役人でも大阪市とえらい違いですね。

H教授―キミ、またマスコミの論調にそのまま乗ってるな。
【7】 釧路湿原の自然再生事業
釧路湿原自然再生プロジェクト

Aさん―だってカラ残業でしょう。それに変な手当てもいっぱいあるというじゃないですか。

H教授―残業時間管理をしてないだけじゃないの。カラ残業の人もいるだろうけど、それ以上のサービス残業しているひともいっぱいいると思うよ。
給料が高いだとか変な手当てがあるったって、新聞社やテレビ局の社員や銀行員の給料とは段違いだもんなあ。
国だって大都市は物価が高いからっていって、大都市手当てなんてのがあって、ボクも恩恵に与かったけど、これもちょっと考えるとおかしな制度だ。でも、こちらの方は誰も何も言わず、大阪市だけがスケープゴートになっちゃってる感じだな。
ま、景気の悪いときは役人叩きをしておけばいいって、庶民の劣情に媚びたって気がするなあ。もちろん役人の側もおかしなところは直さなければいけないけど、役所を叩くなら、まず垂れ流しの公共事業だとか赤字三セクだと思うよ。


Aさん―この話をしだすと止まらなそうだから、やめましょう。
で、北方四島は見ました?

H教授―ああ、吹雪の翌日からいい天気で、納沙布岬から間近に歯舞群島や国後島が見えたよ。もう半ば忘れられた存在になったムネオさんを思い出した。

Aさん―ムネオさん? あの逮捕された元衆院議員の鈴木宗男サンですか。

H教授―うん。
北方四島については一括返還か二島先行かという議論があるのは知ってるよね。

Aさん―ええ、政府の公式見解は一括返還。鈴木宗男サンは二島先行論だったんですよね。それが失脚の遠因なんですか。

H教授―ムネオさんは二島先行論者だと思われていたけど、じつはそれは単なる建前で、本音は返還無用論者だったらしい。返還そのものも不要だし、返還なんか受けたらかえってお荷物になる、それよりは漁業の安全操業という実を取った方がいいし、そのために援助するんだとオフレコで言ったのが明らかにされて、それが政府与党の逆鱗に触れたんだと思うよ。
もちろん、援助そのものでムネオさんが潤うという構造があったんだろうけどね。

Aさん―そんなこと言ったんですか。それじゃ売国奴と言われても仕方ないじゃないですか。ほんと、日本人として許せないですね。

H教授―でもムネオさんがオフレコで言ったことは傾聴すべきだと思うよ。

Aさん―センセイまでなんですか。ワタシ授業で習いました。国家の存在意義は領土の保全と国民の安全の確保だって。

H教授―ふうん、じゃ竹島とか尖閣諸島も取り返すべきだとキミは言うの?

Aさん―当然じゃないですか。なにを言ってるんですか。

H教授―別に人も住んでないし、たいした資源もないよ。

Aさん―それが国家としてのレゾンデートルなんです!

H教授―やれやれ、竹島問題も揺れてるし、中台でも反国家分裂法で揉めている。領土問題は昔から躓きの石だよね。
でもねえ、まともな政治家なら、竹島・尖閣諸島を取り戻せなんて、誰も真剣には思っていないんじゃないかな。だけどそんなことは金輪際口に出せない。「国家」という共同幻想はそれだけ根深いんだろうな。
100年前だったら、人が住んでなくて資源もないところなんて、日本も中国も韓国も関心を示さなかった。そもそも、「わが国固有の領土」なんて発想自体がなかったと思うよ。つまり、キミの言う国家概念とは近世の欧米で生まれた産物なんだ。具体的には領海とか専管水域とか排他的経済水域だとかが言われ出してからのね。

Aさん―そんなこといったって...。

H教授―沖の鳥島という小さな岩礁があるだろう。激しい波浪で崩壊して、水面下に沈んでしまう恐れがあるからといって、排他的経済水域維持のために、毎年2億円をかけてコンクリートで補強工事をしてるんだ。なんか悲しい滑稽さだね。鳥も魚も国境なんて意識してないし、それが自然なんだ。
「国家」とは、真の共産主義者なら遠い将来死滅すべきものだというし、アナーキストなら直ちに廃絶すべきものだと言う。ムネオさんが意識していたかどうかは別にして、そういう国家概念の虚妄を見事に衝いたわけだ。それが、失脚につながったとしたら、皮肉だよね。

Aさん―だけど、北方四島には人が住んでたんだし、今も住んでます。地下資源だってあります!

H教授―北方四島に関して言えば、発言権が一番あるのは日本でもロシアでもないよ。「固有の領土」なんて概念ができる前から住んでいて、追い払われたアイヌの人たちだと思うよ。彼らは先祖が眠る北方四島の自然を守ることが先決だというんじゃないかな。

Aさん―ほんとセンセイってへそ曲りですね。でも北方四島が環境行政と何の関係があるっていうんですか!

H教授―ひとつは政治と行政の関係を見るってことだね。環境行政と環境政治はいかにあるべきかを考える材料になる。
北方四島に関しては、全島を環境保全と住民のエコロジカルライフ、つまり循環、共生、参加、国際的取組という環境基本計画の4つのキャッチフレーズを実践する「日ロ・アイヌ国立公園」にする。
そして、ロシア住民と日本の旧島民、そしてアイヌの代表による委員会が管理する。
もちろん必要な資金は、無条件に日ロ両国が負担する。
──ってのは、どうかな。気宇壮大だろう。

Aさん―ばっかばかしい。いい歳をして。

H教授―キミキミ、キミの修論がパスできるかどうかはぼくの胸三寸にかかってるんだから、口は慎むように。

Aさん―アカハラじゃないですか!(編註:「アカハラ」は、アカデミック・ハラスメントの略称)
どうでもいいですけど、センセイの言ってることはリアルポリティックスから離れた、まったくの空論ですよ。

H教授―そんなのわかってるよ。現実の場面では国益が前面に出てくるのは当然だし、ボクが政治家だったらやっぱりそうすると思うよ。だけど、それだけでいいのかっていう思いを、いつもどこかで考えてべきなんじゃないかな。

Aさん―はいはい、土産話はその程度にして、ほかの話題にいきましょう。
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