環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第28講「有機汚濁と水質総量規制」
第27講「道東周遊随想と愛知万博」
第26講 「国土計画と自然保護」
第25講 「エイリアンを巡って ─外来生物法雑感」
第24講 「2005 ─地方の時代のために」
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No. 第27講「道東周遊随想と愛知万博」
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Issued: 2005.04.07
H教授の環境行政時評 (第27講 その3)
愛知万博に思う

H教授―愛知万博、通称「愛・地球博」がオープンした。テーマは「自然の叡智」だ。キミは行くの?

Aさん―ええ、もちろん行きたいです。だからエスコートしてくれる「白馬の騎士」、ホワイトナイトを探しているの。

H教授―ホワイトナイト? ホリエモンVSフジ・サンケイグループ騒動で出てきたコトバだなあ。でも意味がわかって使ってるのかなあ。

Aさん―そんなのどうでもいいんです。響きがいいじゃないですか。
ただねえ...。

H教授―うん、どうした?
Aさん―「愛・地球博」なんて言ってるけど、要は景気浮揚、地域振興のための万博誘致というのが先行して、“環境”とか“自然の叡智”なんてテーマは後から考えたものでしょう。おまけに海上の森問題だとか、跡地で考えた新住事業のインフラ整備に利用しようとしたとか、いろいろあったから、ちょっと抵抗あるんですよねえ【8】

H教授―そんなの気にする方がおかしい。自治体は地域振興を第一義的に考えるのは当然だ。民間企業が儲けを第一義的に考えるのと同じだもん。結果として環境保全に資すればいいんだ。政治家は人柄がよくても政策が悪ければなんにもならない。政治とか行政は、すべて結果責任なんだ。

Aさん―そうなんですかねえ。

H教授―そうじゃないのは趣味の世界。ボクだって環境役人になったり、大学で環境を教えているのは第一義的には食うためだもの。食うためだからこそ、プロであり、プロだからこそ、ある種の責任が生まれ、途中で投げ出すことが許されないんだ。

Aさん―そうか、信念や善意だけじゃダメなんだ。地獄への道は善意で敷きつけらめれているか...。
【8】 愛知万博について
第2講その3

H教授―お、気の利いたセリフ知ってるじゃないか、マルクスだな。
ただ、愛・地球博でボクが気にしているのは、これに投じた資源やエネルギー、オカネが長期的に見て回収できるだけの結果をもたらすかどうかなんだ。

Aさん―回収って?

H教授―この博覧会を見て、どれほどライフスタイルが変えられえるだけのインパクトが与えられたかどうかだ。

Aさん―そんなの計算できるわけないじゃないですか。

H教授―だけどほとんどの人が「ふーん」と見るだけで、なにも変わらないんだったら意味がないということになる。もちろん入場料がばんばん入って、それで結果として黒字になって、環境保全事業に充当できるならそれでいいんだけどね。
でも新聞なんかで見る限りは、技術楽観主義へ人々を赴かせる危険性があるように思う。水素化社会への過剰期待なんかだよね。

Aさん―でも技術革新は必要でしょう。

H教授―そりゃそうだけど、それに寄り掛かってしまったらダメだと言ってるんだ。物理的・経済的欲望を自制しつつ、精神的に充足した生きかたを模索する意識を醸成できるかどうかだ。

Aさん―そういう展示もあるみたいですよ。

H教授―でも一方じゃあ、弁当持込禁止だとか、コンビニでもお握りのような安価なものは売ってないらしいよ【編註】。明らかに「愛・地球」だとか「自然の叡智」とかいうテーマに逆行しているし、見直すべきライフタイルと反対方向へ行っているような気がする。

Aさん―ところでセンセイは行くんですか。

H教授―いまのところ予定はない。それに大阪万博、つくば科学博、沖縄海洋博にも行かなかったから、これだけ行くってのもなあ。


Aさん―(呆れて)えー、なんでですか。

H教授―お祭りや人ごみはあまり好きになれない。だからTDL(東京ディズニーランド)だってUSJ(ユニバーサルスタジオ)だって行ったことがないんだ。

Aさん―!!(絶句)

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【編註】 愛知万博での食べもの持ち込みについては、来場者からの苦情が殺到したため、食中毒対策などに配慮し、かつ、テロ対策として禁じているペットボトルや缶、ビン入りの飲み物を除いて、持ち込みを解禁する方針を固めたと、3月30日に万博協会より発表された。
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