環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第28講「有機汚濁と水質総量規制」
第27講「道東周遊随想と愛知万博」
第26講 「国土計画と自然保護」
第25講 「エイリアンを巡って ─外来生物法雑感」
第24講 「2005 ─地方の時代のために」
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No. 第27講「道東周遊随想と愛知万博」
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Issued: 2005.04.07
H教授の環境行政時評 (第27講 その4)
国会提出法案概説

H教授―ところで、国会で審議されている法案に少し触れておこうか。

Aさん―環境省提出法案は何本なんですか。

H教授―5本だけど、1本は前講で紹介した地方環境事務所設置に伴う環境省設置法の改正【9】だからパスしておこう。

Aさん―で、あと4本のうち、2本はごみ関連と温暖化関連ですね。

H教授―うん、温暖化対策法を改正して、事業所ごとに温室効果ガスの排出量の公表を義務付けるというものだ。インベントリー整備の一環だね。

AさんPRTRのように、自主削減措置の強化を期待するわけですね。

H教授―それだけじゃない。おそらく将来は国内の排出権取引制度もできると思うんだけど、その基礎づくりの意味があると思うね。

Aさん―「京都議定書目標達成計画【10】」とか環境税【11】の方はどうなってるんですか。

H教授―昨日(29日)達成計画案が発表されたって新聞にでてた。なんとか折り合いがついたんだね。今日からパブコメを募集して5月に閣議決定という予定らしい。ただ追加的予算措置には言及していないし、環境税については「真摯に総合的に検討を進めるべき課題」としているだけらしい。今後とも水面下で厳しい調整というか折衝がつづくんだろうな。まあ想定された内容だけど新味がないな。

Aさん廃棄物処理法【12】の改正の方は?

H教授産廃についての規制強化。2003年に発覚した岐阜市での大規模産廃投棄事件(約57万m2)、それに去年、中国・青島に「資源」として輸出した廃プラスチックに、再生できないものが混入していたという事件が起き、これに対応した改正だ。廃棄物処理法は、改正に次ぐ改正で継ぎはぎだらけになってしまい、プロ以外はわけがわからない法律になってしまった感があるね。もちろん規制強化は賛成だけど。
【9】 環境省設置法の改正
「環境省設置法の一部を改正する法律案」など(平成17年2月7日環境省報道発表)
【10】 京都議定書目標達成計画
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結及び地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律について
法改正の要点
中央環境審議会地球環境部会(第27回会合)資料より
京都議定書目標達成計画に盛り込まれることが想定される対策一覧<暫定>
京都議定書目標達成計画に盛り込まれることが想定されている対策・施策<暫定版>(エネルギー起源CO2について記述
【11】 環境税
環境税(温暖化対策税)の検討状況について(環境省)
【12】 廃棄物処理法
廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案について(平成17年3月7日環境省報道発表)

Aさん―であとの2本は、どういうものなんですか?

H教授―ひとつは湖沼水質保全特別措置法の改正【13】。都市近郊の湖沼は典型的な閉鎖性水域でなかなか水質が改善しないというので、水質汚濁防止法の特別法のような法律を20年前につくったんだ。それ以降も何回か改正して規制を強化してきたんだけど、それでも効果が捗々しくないというので、さらに規制を強化するというものだ。
今度の改正で、目新しいものとしては湖辺環境保護地区というものを導入し、水質浄化能力をもつ植物などの採取に届出義務を課そうとするものだ。公害対策にも、規制対策だけではダメで、生態系保全の視点を導入しようという動きが活発だけど、そのひとつだね。

Aさん―水質浄化能力を持った植物として代表的なのは、ですね。確か琵琶湖では条例をつくってましたね【14】

H教授―そうそう。葦は富栄養化のもとであるN(窒素)やP(リン)を吸収し成長するし、葦原は小魚の産卵や生育、避難場としても貴重な存在なんだ。でも誤解されがちなんだけど、葦は保護するだけじゃダメで定期的に刈り取らなきゃいけない。

Aさん―え、そうなんですか。

H教授―そりゃそうさ。放っておけば枯れて分解して、またNやPを放出する。だから刈り取った葦の活用法を考えないと、ごみの増大につながってしまう。昔は屋根を葺くのに使ったりしたんだけど、今じゃそんなことはしないからなあ。せいぜいヨシズくらいだろう。焼酎をつくるという話もあったけど、どうなったかなあ。

Aさん―なあるほど。ライフスタイルもかかわってくるんですねえ。

H教授―葦原だけじゃなく、藻場干潟も含めた海、湖沼、河川の水際線周辺の保全・復元を行うスキームを全国的に考えなきゃいけないと思うよ。ところで、葦(ヨシ)は、「アシ」と読むこともある。もともとはアシだったんだけど、アシは「悪し」に通じるとして、ヨシ(善し)と読み変えるようになったなんて話しも聞いたことがある。真偽のほどはしらないけど。

Aさん―へえ〜、どうでもいいような雑学だけは、よくご存知なんですね。
【13】 湖沼水質保全特別措置法
「湖沼水質保全特別措置法の一部を改正する法律案」について(平成17年3月7日環境省報道発表)
【14】 滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例
滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例

H教授―うるさい。で、最後のひとつが、特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律【15】だ。これは新法だね。
公道を走らずに、工事現場や田畑で使用される特殊なクルマの排ガス規制を行うというものだ。

Aさん―そんなの、負荷だってたかが知れてるでしょう。

H教授―そうでもないらしいよ。普通のクルマが厳しい排ガス規制で締め付けられているのに較べると、台数ベースではわずかでも、負荷量ベースでは、NOxの4分の1、粒子状物質の8分の1を占めているらしい。

Aさん―それで今国会は終わりですか。

H教授―(苦い顔で)うーん、超党派の議員立法で、例のサマータイム法案が提出されそうだ【16】

Aさん―いい機会じゃないですか。センセイも、ライフスタイルを変えなくっちゃ。

H教授―放っておいてくれ!
だけどサマータイムを導入すれば、事前準備に相当の手間と莫大な費用がかかるんだぜ。一説では公的機関だけで年間1,000億円もかかるといわれている。そこまでしてやる意味があるかどうか...。
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【15】 特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律
「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律案」の閣議決定について(平成17年3月7日環境省報道発表)
【16】 サマータイム法案について
第26講その2
読者のお便り
Aさん―(無視して)最後に、オオクチバス【17】についてお便りをいただいたので紹介しておきましょう。




「...さて、今回お便りさせていただいたのは、皇居の御濠における調査結果の解釈のことについてであります。皇居の御濠の調査結果に関しましては、『皇居のお堀でブラックバスが大繁殖して全体の7割〜8割を占めるとして大問題になっていましたが、実際に水抜して調査した結果、匹数割合で全体の0.59%しかいなかったことはあまり知られていない事実です』との指摘があったということですが、この指摘には重大な考察が2点抜けております。
 1つ目として、掻い掘りが行われる前の1年間の間に計11回の駆除事業が行われてきており、掻い掘りは取り残しのオオクチバスを駆除するために行われているのであり、個体数としては当然少なくなることが予想されることです。ですからこれが“何も手を加えない状態”でのオオクチバスと在来種の個体数の実態を反映しているものとは考えるべきではありません。
 2点目として、影響を考察するのですから個体数比で示すことに意味はなく、重量比で考察すべきでしょう。重量比に換算しますと、最後の掻い掘りの段階であるにも関わらず健全な状態であるとは言い難い結果になっています。詳しくは環境省特定外来生物選定会議第3回オオクチバス小グループ会合において...委員より提出された以下の資料に的確に指摘されておりますのでご覧いただければ幸いです。(皇居の御濠のデータだけではなく、他にもいくつかオオクチバスが問題である証拠が挙げられています)
 http://www.env.go.jp/nature/intro/sentei/fin_bass03/index.html
 http://www.env.go.jp/nature/intro/sentei/fin_bass03/ext02.pdf
 以上に示しましたとおり、(先の指摘は)オオクチバスの問題性を認める発言であると言わざるをえないでしょう。」



H教授―なるほどねえ。ボクが言うより説得力がある。

Aさん―でも最近アンケートやお便りが少ないですねえ。センセイもワタシも、もうだいぶ飽きられてきちゃったのかな。

H教授―仕方ないだろう。ボクだってキミにはもうあきあきしているよ。いまは春だけど(笑う──自分だけ)。

Aさん―それはこっちのセリフです。そういうおじんギャグにはうんざりだわ!
でもそれとこれとは話は別。読者のみなさん、アンケートに答えてくださいね。でないと、編集部から打ち切りの通達がくるかもしれません。

H教授―いいじゃないか。ネタもだんだん乏しくなってきたから、別に打ち切られたって構わないんだけど。

Aさん―だめですよ。センセイ、ますます勉強しなくなっちゃうじゃないですか。

H教授―ひとのことより自分はどうなんだ。修士論文の見通しは立ったのか。

Aさん―(聞こえないふり)ああ、もう4月ですねえ。サクラ咲くか...。
【17】 オオクチバス
オオクチバス再論(第26講その1)


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平成17年3月30日執筆 4月5日編集了
註:本講の見解はEICおよび環境省の公的見解とまったく無関係です。
筆者HP:http://www.eurus.dti.ne.jp/~hisatake/
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