環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第31講 「アスベストのすべて」
H教授の環境行政時評第30講 「リサイクル戦線、浪高し」
第29講「目に青葉、山ホトトギス、MAY(迷)時評 ──水難事故、諫早干拓、レジ袋、フロン四題噺」
第28講「有機汚濁と水質総量規制」
第27講「道東周遊随想と愛知万博」
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No. H教授の環境行政時評第30講 「リサイクル戦線、浪高し」
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Issued: 2005.07.07
H教授の環境行政時評 (第30講 その2)
レジ袋有料化談義

Aさん―(渋々)前講で言った、レジ袋の有料化、いよいよ決まりそうですね。スーパー業界ではレジ袋有料化をきちんと法律で義務付けるべしとの意見を取りまとめた【1】し、それを受けて環境省も経済産業省もそれぞれの審議会が同じ方向を打ち出したそうじゃないですか。
でもどんな法律になるんですか。容器リ法(容器包装リサイクル法の略、以下同じ)【2】の改正ですか。

H教授―容器リ法は、それ自体が商品にならない容器包装を対象としている。今まで無償配布していたから、レジ袋にも適用可能だったんだけど、一枚5円というふうに有料にしてしまうと一応は商品ということになってしまい、最後は一般廃棄物になってしまう。

Aさん―なあるほど、じゃあ、レジ袋有料化法みたいなものを作るんですかねえ。

H教授―マサカ、それこそ憲法違反になっちゃうよ。まあ、業界団体との協定を根拠付けるような法を考え出すとか、いろいろ知恵を絞るんだろうけど、立法段階で四苦八苦するんじゃないかな。お手並み拝見といったところかな。
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【1】 レジ袋の法制度化談義
第29講
【2】 日本チェーンストア協会の要望
容器包装リサイクル法(容リ法)の見直しに対する意見について(PDF)
容器リ法見直し
Aさん―ところで容器リ法って見直しが法文に規定されているんでしたよね?

H教授―ああ、容器リ法は施行後10年で見直すって明記されていて、昨年辺りからいろんな議論をやっているらしいよ。

Aさん―最大の論点はなんなんですか。

H教授―容器リ法はもともと自治体の方から言い出したんだ。容器包装が一般廃棄物に占める割合は体積で半分ぐらいだし、ペットボトルなんてのは、空気を運ぶみたいなものだ。廃棄物処理経費の高騰に手を焼いた自治体はそんなものはメーカーが引き取って処理すべきだってね。
ま、いまでいうEPR(拡大生産者責任)を求めたんだね。

Aさん―もっともじゃないですか。

H教授―ところがメーカーや当時の通産省は真っ向から反対。これまでのように廃棄物処理法の対象なら自治体の責務になっているのに、そんなことになればメーカーサイドの負担は莫大なものになって結局は価格にはねかえって、値上げせざるを得なくなる。
バブルがはじけた不景気な時代に値上げなどすれば売れ行きが落ちるのは間違いない。景気回復が国是だというのにとんでもないという主張だ。
で、結局今のような姿に落ち着いたんだけど、結果的には自治体の負担は余計大きくなったんだ。

Aさん―どうしてですか。

H教授―自治体は分別収集して引き渡すまで保管しなければいけない。となると分別収集、選別、洗浄、保管といった経費がかかるし、ストックヤード、つまり保管場所も設けなければならないじゃないか。

Aさん―なるほど、じゃあ、せめてその経費をメーカーサイドに出させろってことですか。

H教授―うん、一方、メーカーサイドでは、自治体の負担が増えたというが、単位量当たりの回収等の費用は自治体ごとの差があまりにも大きいことを指摘している。自治体によっては数千倍の差があるから、多くの自治体は合理化などをまずするべきだって反論している。

Aさん―そうなんですか?

H教授―うーん、よくわからない。もちろん自治体ごとに事情は異なるんだけど、あまりにも差が大きすぎる。ひょっとしたら「回収等費用とは何か」の解釈が自治体ごとに違うんじゃないかな。

Aさん―ふうん、で、結論はどうなりそうなんですか。

H教授―経産省のほうもある程度は仕方がないとみている節もあるから、ま、足して2で割るんだろうなあ。例えば回収・保管経費の何割かをメーカーサイドが負担するとか。いかにも日本的だけどね。
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ペットボトルの中国流出
Aさん―容器リ法の問題点は他にもあるんですか?

H教授―今話題になっているのは、せっかく出来たペットボトルの国内リサイクルシステムが、危機に瀕していることだ。

Aさん―どういうことですか。

H教授―今、中国は急激な経済成長過程にあり、大量のペットボトルの需要がでてきた。そこで、日本の使用済みペットボトルが中国に輸出されているんだ。容器リ法の枠組みでできた国内のリサイクルメーカーより高値で引き取るから、せっかくの設備が遊休化するってわけだ。かといって赤字になるのがわかってるから、それ以上の高値で引き取るわけにはなかなかいかない。

Aさん―だって、中国まで持っていけば輸送料だってかかるじゃないですか。

H教授―結局のところリサイクルコストに占める人件費の差だろうね。輸送料込みでも中国では十分にやっていけるんだろう。

Aさん―でもそれって、ごみの輸出じゃないですか。ごみの越境移動を規制するバーゼル条約との関係はどうなるんですか。

H教授―ごみじゃないよ。立派な資源、つまり有価物として取引されてるんだから、バーゼル条約は関係ないだろう。

Aさん―え? じゃあ、自治体はペットボトルを回収して儲かっているんですか。

H教授―自治体のペットボトルの回収・選別・保管等にかかる費用は莫大なものになる。それを少しでも高く売ることによって、わずかだけどその一部が返ってくる割合が増えるということだ。
容器リ法ではまったく想定していない事態が起きているんだね。

Aさん―うーん、そのことはどう考えればいいんですか。

H教授―新たな国際的枠組みを考えなきゃいけないってことだろう。ゴールデンウィークの頃、日本で開かれた「3Rイニシアティブ閣僚会合」【3】でも話題になったらしい。
でもそれ以前に考えなきゃいけないことがあると思う。

Aさん―なんですか?

H教授―容器リ法制定以降ペットボトルの回収量や回収率はどんどん増えてきているんだ。でも、それ以上にペットボトルの生産量が伸びていて、回収量との差は開いてきている。その一部が容器リ法の枠外で中国などに輸出されているんだろうけど、実質的にごみとなるペットボトルの量は減っていないんだ。
事実、ペットボトルは容器リ法制定以前には大きさや形状は業界の方で自主規制していたんだけど、制定以降は自由化され、生産量が大幅に伸びた。
つまり容器リ法はごみの減少や資源の保全に役立っているとは必ずしもいえない。大量生産・大量消費社会から適量生産・適量消費社会に移行させるものとしては機能していないんだ。
ペットボトルに関してはデポジット制度の導入と、リサイクルでなくて、食品衛生法の見直しなどによってリターナブルビンと同じように再使用、つまりリユースを可能にすることを考えるべきじゃないかな。
もちろん、衛生上のチェックは十分なものにしなきゃいけないけどね。

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【3】 3Rイニシアティブ閣僚会合
「3Rイニシアティブ閣僚会合」(環境省地球環境局)
「3Rイニシアティブ閣僚会合の結果について」(平成17年4月30日環境省報道発表)
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