環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第31講 「アスベストのすべて」
H教授の環境行政時評第30講 「リサイクル戦線、浪高し」
第29講「目に青葉、山ホトトギス、MAY(迷)時評 ──水難事故、諫早干拓、レジ袋、フロン四題噺」
第28講「有機汚濁と水質総量規制」
第27講「道東周遊随想と愛知万博」
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No. H教授の環境行政時評第30講 「リサイクル戦線、浪高し」
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Issued: 2005.07.07
H教授の環境行政時評 (第30講 その4)
温暖化対策最前線とデ・カップリング
Aさん―やぶへびだったか。ところで京都議定書が2月に発効しましたけど、その後なにか大きな変化は起きてますか?

H教授―クールビズ【6】がはじまった。ノーネクタイの軽装運動だ。

Aさん―なんか昔も似たようなことをやっていませんでしたか?

H教授―昔、省エネルックとかいって政府が音頭をとって、半袖のスーツを流行らせようとしたことがあった。歴史は繰り返すだね。

Aさん―“一度目は悲劇として、二度目は茶番劇として”って言いたいんでしょう。
【6】 クールビズ
「クールビズ(COOL BIZ)」
「チーム・マイナス6%」
エコライフガイド「カジュアルスタイルのススメ」
【7】 歴史は繰り返す、一度目は悲劇、二度目は茶番劇として...。(マルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』より)
第24講その1

H教授―ふふ、同じネタは使わないよ【7】

Aさん―官製の運動以外になんかないんですか。

H教授―温暖化対策法に基づく「京都議定書目標達成計画」【8】がゴールデンウィークの頃に閣議決定されたし、温暖化対策法が先日改正された。

Aさん―内容的には?

H教授―達成計画では削減目標の主要部門別割り当てが定められたけど、担保はなんにもない。言っちゃわるいけど、数字合わせの域を出ていない。
あと法改正で、大工場などの大発生源には温室効果ガス排出量の報告が義務付けられ、公表もされることになった。これはいいことだと思うよ。
自主努力で大幅な削減競争がはじまればいいんだけど、それが無理でも国内で排出量取引制度を設けるときの基礎データになるしね。
【8】 京都議定書目標達成計画
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の締結及び地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律について 法改正の要点
中央環境審議会地球環境部会(第27回会合)資料より
京都議定書目標達成計画に盛り込まれることが想定される対策一覧<暫定>
 京都議定書目標達成計画に盛り込まれることが想定されている対策・施策<暫定版>(エネルギー起源CO2について記述)
第26講 その2 【8】参照
Aさん環境税(炭素税)はどうなるんですか。

H教授―あまり進展はないみたいだな。

Aさん―うーん、どうなるんですかねえ。

H教授―さあなあ、とにかく日本は現状からスタートしてものごとを考える。未来から現在を照射して現状を抜本的に変えるという発想がないんだよね。
一方じゃ、日本の未来の世代への借金はついに1,000兆円を越したそうだ。日本の個人資産の総計は1,400兆円あるそうだけど、数年のうちに借金が個人資産を越してしまうのは確実だ。
だからこそ改革が必要なんだけど、それは今盛んに言われている改革とは似て非なるものだということだけは確かだな。

Aさん―笑うペシミストはいいですから、早く本題に戻りましょう。

H教授―わかった、わかった。この図をみてごらん。院に行っているゼミの卒業生に作ってもらったものだけど、日本とドイツの73年からのGDPと一次エネルギー消費量とCO2排出量の推移を73年を100として図示したものだ。
日本では一貫してエネルギー消費量が増え73年の5割増しになってるし、それに伴いCO2排出量も増えている。これが「三つのEのトリレンマ」だね。つまりEconomy, Energy, Environment の両立ならぬ三立は難しいということだ。
ところがドイツではエネルギー消費量は横這いで、CO2排出量は減少傾向にある。つまり「三つのEのトリレンマ」は解消する兆しが見え始めている。
イギリスもドイツと似たような傾向で、アメリカは日本とよく似ている。
いつかアメリカは先進国でなく巨大な途上国だと言ったけど【9】、日本もそうじゃないかと思っちゃうよ。
【9】 アメリカは先進国でなく巨大な途上国
第24講(その1)
グラフ:GDPと一次エネルギー消費量とCO2排出量の推移(日本)


グラフ:GDPと一次エネルギー消費量とCO2排出量の推移(ドイツ)


Aさん―どういうことですか。

H教授―これは国連大学の安井先生の受け売りなんだけど、豊かになる途中まで汚染物質、例えば二酸化硫黄(SO2の排出量はGDPと同じように増えていくものの、あるところからはGDPとは逆に二酸化硫黄の排出量はどんどん減っていく。これをデ・カップリングといい、日本でも昭和40年代に起こったことだ【10】
さらに豊かになると、あるところからGDPとエネルギー消費の関係もデ・カップリングがはじまらなきゃいけないし、ドイツやイギリス、北欧諸国ではこの図のようにその兆しが見えているんだけど、日本やアメリカにはその兆しがまだ見られない。
エネルギーの中長期需要の予測でも、人口が減るというのに、日本はまだ増えるとしている。確かに日本は資源生産性では世界一の省エネ大国には違いないけど、物質的欲望はとどまるところをしらない。
これじゃあ、途上国と言われても仕方ないよ。政治の世界もだ。最近、つまらないことが多すぎる。そもそも...。

Aさん―セ、センセイ、抑えて、抑えて。だんだん環境から離れるじゃないですか。

H教授―ま、いずれにせよこれからはキミの出番だね。

Aさん―え? どうして? ね、どうして?

H教授―キミはデ・カップリング、つまり「別れ」のプロじゃないか。

Aさん―ヒ、ヒッドオイ! 恋多きオンナと言ってくださいよ!!
【10】 デカップリング指標について
デカップリング(decoupling)とは、「分離」を意味する英語で、ここでは経済成長と環境悪化の分離、すなわち経済の成長が環境の悪化を引き起こす直接的な要因として結びついていない状態を指す。より厳格には、一定期間において「(環境圧力の増加率)<(経済推進力の伸び率)」が成り立つとき、デカップリングが実現していると定義される。OECDでは、2002年4月にデカップリング指標に関する報告書を取りまとめ、同年5月に公表している。一方、日本では、2003年に策定された循環型社会形成推進基本計画において、「資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)」という指標を提案している。
外務省「持続可能な開発に関するOECDの活動」
環境白書 用語解説「デカップリング指標」
持続性デカップリング(市民のための環境学)


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(平成17年6月26日執筆、7月6日編集了)
註:本講の見解はEICおよび環境省の公的見解とはまったく関係ありません。
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