Aさん―ところでアスベストはどういう風に健康への悪影響があるんですか。中皮腫とか石綿肺とか肺がんとかいろいろ言われてますけど。
H教授―アスベスト自体は毒物ではない。だから水道管にアスベストが使われていても、飲む分にはすぐ排泄されるから気にすることはない。問題は吸入なんだ。
アスベストの粉塵を恒常的に大量に吸い込むと肺機能が低下する。別にアスベストに限らず、大量の粉塵を吸入すれば肺機能は低下する。これが「塵肺」で、鉱山や炭鉱などでは昔から知られている。石英の粉を大量に吸引してかかる塵肺を「珪肺」という。同じようにアスベストによる塵肺を「アスベスト肺」とか「石綿肺」といい、アスベスト鉱山やアスベスト工場で何の対策も講じていない場合にかかる職業病だ。まあ、われわれには、そしてアスベスト工場の労働者でも近年は対策が取られているはずだから勤務年数の短い人はそれほど気にしなくていい。
Aさん―でも私たちだって少量は吸入しているんでしょう?
H教授―うん、天然起源か、石綿製品起源かは別にして、大気中には微量ながら浮遊していて、現代人の死体を解剖すると肺にはたいていアスベストの繊維があるらしい。ただ、肺に入ったアスベストは身体の防御作用が働いて天婦羅のような衣でくるんでしまい、無害にしてしまう。これを石綿小体、あるいはアスベストボディというんだ。
Aさん―癌とは直接関係ないんですね。
H教授―そもそもなぜ癌になるのかという機序がわかってないんだけど、アスベストの吸入量に応じて肺がんになるリスクが高くなることだけは確かだ。特にアスベスト関連作業に従事している喫煙者は相加的でなく相乗的にリスクが高くなるそうだ。
アスベストに関係なく肺がんになる人もいっぱいいるから、アスベストが必ずしも原因とは言い切れないけど、アスベスト関連作業従事者が肺がんになった場合は労災認定されると思うよ。
もっとも肺がんは20〜25年くらいの潜伏期間があるとされている。労災認定は5年で時効らしいから、5年以上前にアスベスト関連作業をやめていればダメらしいんだけど、これはただちに見直して労災認定すべきだね。
Aさん―やはりアスベストが肺に突き刺さるという物理的なことが原因なんですか?







