環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第36講 「本時評の2年半を振り返る(その4)付:2005年環境十大ニュース」
第35講 「本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他」
第34講 「本時評の2年半を振り返る(その2)付:メディアの傲慢その他」
第33講 「本時評の2年半を振り返る(その1)付:コウノトリ放鳥その他」
第32講 「ミニミニアセスへの挑戦」
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No. 第35講 「本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他」
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Issued: 2005.12.01
H教授の環境行政時評 (第35講 その1)

Aさん―センセイ、さわやかな秋ですねえ。窓の外の紅葉が映えてとてもきれい(うっとり)。

H教授―ところが世間は騒がしくなる一方。石原産業のフェロシルト事件が起きたり、在日米軍再編成案が急遽まとまり【1】、普天間飛行場の移転先が辺野古沖から辺野古崎へ頭越しに決まった。フランスで移民の若者が暴動を起した【2】し、アジアでは鳥インフルエンザが流行の兆しを見せている【3】。今度のは毒性も強いようだし、鳥からの感染だけでなく、人からの感染というのがあるんだったら大変なことになりかねない。

Aさん―うーん、心配ですねえ。
そのほかにもブッシュさんが来日したかと思うと、プーチンさんまでやってきました【4】

H教授―ブッシュさんの来日のときは、大阪空港からヘリで京都御苑に降り立ったらしい。物々しい警備や着陸場所なども含めて、受け入れ側の対応も大変だったらしい。...と、先日京都に行った折りに、御所の所長さんが話してくれた。
【1】 在日米軍再編案(中間報告)
沖縄タイムス 社説(2005年10月30日朝刊)
閣議案件:一般案件「平成17年10月29日に実施された日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取組について」
官房長官記者発表
【2】 フランスの移民暴動
11月1日深夜にパリ郊外で起きた移民系若者らによる暴動は数日間でフランス全土に広がり、発生後約2週間で、車が6000台が放火され、1500人が逮捕されるという深刻な状況を招いた。フランス政府は11月6日に北部アミアンと中部オルレアンなど数都市で夜間外出禁止令を発動。アルジェリア戦争当時の1961年以来、44年ぶりの適用。
日本国際問題研究所「フランスの暴動 ―欧州の移民社会とフランスのジレンマ―」
耐震強度偽装事件
H教授―でも最新のお騒がせは、なんと言っても耐震強度偽装事件だな【5】

Aさん―構造計算書が偽造されたマンションに倒壊のおそれあり──という報道ですね。確かに、あれはヒドイですねえ。あの姉歯あねは某とかいう計算書を偽造した建築士もとんでもない奴ですけど、偽造を見抜けなかった検査機関もお粗末ですよねえ。建築確認を民間の検査機関にやらせるようになったからじゃないですか。センセイが以前言ってたように、なんでもかんでも官から民へというのも考えものですねえ。

H教授―うーん、でもあの件では官のほうは不幸中の幸いとホッとしているかもしれない。

Aさん―えー、なんでですか。

H教授―昔ながらの役所がやる建築確認だったら偽造を見抜けたという保証はない。見抜けなかったかもしれないぜ。
【3】 鳥インフルエンザ情報
国立感染症研究所 感染症情報センター
高病原性鳥インフルエンザ発生時の鳥獣行政担当部局の対応について(2005年11月、環境省)
鳥インフルエンザに関する情報(農林水産省)

Aさん―えー、そんなあ。

H教授―建築基準法では、ああいうとんでもないインチキはそもそも想定外だったんだ。想定外のことに対応しづらいのは官も民も同じだ。こういう想定外のことが起きるということは時代が変わった証拠なんだねえ。
それに姉歯某は実行犯だけど単なる下請け。元請けの設計会社やゼネコンがどう絡んでいるのか、全体像を早く解明してほしいね。

Aさん―これが極めて特異な事件なのか、氷山の一角なのか...。

H教授―おっかないことを言うなあ。特異な事件であってほしいよねえ。
施工業者だって問題だと思うよ。いくら設計図どおりだからって、鉄筋の量が大幅に少なかったり、柱や梁の太さがふつうより細かったりすりゃあ気付きそうなもんだ。
いい意味での職人気質っていうか、プロ意識が日本にはどんどんなくなっていってるんだねえ。
消費者も自衛のため、相場よりあまりにも廉い買い物は、一応は粗悪品じゃないかと疑うべきなんだろうな。
キミもそうだぞ。オトコはみてくれだけで選んだんじゃダメなんだ。

Aさん―ワタシはそんなオンナじゃありません。第一みてくれだけで指導教員を決めるようなオンナだったら、センセイの下に来るはずがないじゃないですか!

H教授―...(ほめられたのか、けなされたのかと複雑な表情)。
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【4】 ブッシュ大統領(米)とプーチン大統領(露)の来日
ブッシュ米大統領は11月15日夕、ローラ夫人とともに大統領専用機で大阪空港に到着、2003年10月以来2年ぶりの来日だった。16日午前、京都迎賓館で小泉純一郎首相との首脳会談。会談を行う京都迎賓館は今春完成したてで、大統領夫妻が主賓室の第1号の客となった。
一方、ロシアのプーチン大統領が11月20日、専用機で羽田空港に到着。同大統領の来日は2000年9月以来、約5年ぶり。21日午後に小泉純一郎首相と会談、22日には天皇、皇后両陛下と会見し、同日午後に帰国した。
【5】 耐震強度偽装事件
姉歯建築設計事務所による構造計算書の偽造とその対応について(国土交通省)
フェロシルト事件
Aさん―暗いニュースはさっさと片付けちゃいましょう。石原産業のフェロシルト事件。

H教授―塗料やインキに用いられる酸化チタンの製造工程で大量に出る廃硫酸を無害化し土壌埋め戻し材として再利用できるという触れ込みの製品が「フェロシルト」。
シルトとは砂より細かく粘土より粗い土のことだ。ちなみに酸化チタンTiO2は天然界にも存在していて、温度と圧力により、ルチル(金紅石)、アナテース(鋭錐石)、ブルッカイト(板チタン石)の3種類があるけど、どれもきれいな結晶をしているよ。日本では...。

Aさん―(遮って)鉱物オタクの話はいいです。
じゃフェロは? フェロモンなんていいますよね。関係あるんですか。

H教授―いや、全然関係ない。鉄のことだろう。鉄の元素記号はFeだ。チタンはチタン鉄鉱のように鉄とチタンとの酸化物から取り出すのがふつうなんだ。
このフェロシルトは、リサイクル製品として三重県が推奨していたんだが、これに基準値以上の六価クロムが含まれていた。しかも意図的に県の目を盗んで別の廃液を混入させていたらしい。
新聞によると、石原産業は子会社を通して、これをリサイクル製品として販売していたんだが、実際は購入した中間業者に売値よりはるかに高い額を運搬費として「加工費」などの名目で支払っていたらしい。つまりどうみても逆有償だから、製品じゃなくて、産業廃棄物そのものだということが発覚したんだ。産廃処理費をちょっとでも廉くあげようとしたんだね。

Aさん―石原産業って一部上場の化学会社でしょう。世間にばれないって思ったのかしら。

H教授―副工場長個人の責任ってことで切り抜けようとしているみたいだけど、そりゃあムリってもんだろう。石原産業っていえば、四日市ぜんそくの加害者企業のひとつだし、港への廃液垂れ流しを港則法【6】違反で海上保安庁の田尻さん【7】が検挙して一躍田尻さんが有名人になったのも石原産業が相手だった。
ぜんぜん懲りてないようにみえるけど、それだけ産廃の世界はどろどろした話があるということなんだろうなあ。

Aさん―センセイ、明るい話にいきましょう。ラムサール条約登録湿地が増えたそうですね。
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【6】 港則法
港則法
【7】 海上保安庁の田尻さん
三重県立図書館「海のGメン 田尻宗昭展」
田尻宗昭記念基金[PDF]
ラムサール条約登録湿地
H教授―うん、ラムサール条約の第9回締結国会議つまりCOP9が先月アフリカのウガンダで開かれ、国内20箇所が新たに登録湿地としての基準を満たしているとして登録された。これで合計33箇所になった【8】

Aさん―COP9? それって温暖化の話じゃないんですか。

H教授―COPはConference Of the Parties、単なる条約の締約国の会議という意味だ。気候変動条約の締結国会議を単にCOPと略すのは略しすぎってもんだ。

Aさん―自分だって使ってるくせに。

H教授―そりゃあ、文脈による。

Aさん―まったくご都合主義なんだから。でも、このなかにはウミガメで有名な屋久島の永田浜まで入ってるんですね。こんなの湿地というんですか?

H教授ウェットランド(Wetland)を「湿地」と訳すから誤解が起きるんだけど、Wetlandはもっと概念が広い。水環境とか水空間みたいな意味で、水田まで含まれるし、滋賀県だったら琵琶湖とその周辺の平野域が登録湿地になっている。
そもそもラムサール条約では、沼沢地、湿原、泥炭地または水域、海域でも低潮位で水深が6mより浅いところはウェットランドに含まれると定義しているんだ。だから、今回登録された中には屋久島の永田浜ばかりでなく、秋吉台の地下水系や串本沿岸海域、慶良間諸島海域など、一般的には湿地と呼ぶには首を傾げるようなところも入っている。
欧米ではWetland同様、Estuaryというのも保全の対象として大事にしている。このEstuaryを日本語ではしばしば「河口域」なんて訳しちゃうんだけど、「浅海域」というのがもっとも近い。瀬戸内海なんて全域Estuaryになる。
【8】 ラムサール条約COP9と、国内の登録湿地
ラムサール条約第9回締約国会議の結果概要について(平成17年11月18日)
パンフレット「ラムサール条約と条約湿地」(平成17年2月
ラムサール条約(外務省)

Aさん―ふうん。じゃ、これで日本の重要なウェットランドはすべて登録湿地になったんですか。

H教授―そんなことはないさ。環境省が発表した日本の重要な湿地リスト「日本の重要湿地500」って聞いたことないか? 今回の登録地を含めてもまだまだ一部だよ。
。登録湿地は自然的資質が条約に定める基準を満たしていなけりゃいけないけど、基準を満たしているからってすべて登録されるわけじゃない。
登録湿地はやはり保全するのが望ましいということになるから、基準を満たしていても開発計画が走っているところなんかは政府の提出するリストからは外されちゃう。
今回だって千葉の三番瀬は外された。やはり地元が納得しなけりゃダメなんだ。

Aさん―ところで最近、どこか登録湿地に行かれましたか?

H教授―ああ、先週の日曜(11月20日)に近江八幡に行き、ラムサール条約登録湿地の一つ、琵琶湖の畔で休暇村に泊まってきた。
環境行政学会【9】の第4回総会があったんだ。

Aさん―例の環境庁OB大学人の飲み会ですね。

H教授―こらこら。情報交換、意見交換の場なんだ。

Aさん―一番大事なのが盃交換だったりして。
【9】 環境行政学会
H教授の環境行政時評 第9回(その1)
H教授―まったくキミって奴は...。
ま、いいか。天候に恵まれたし、閑静な入り江の先には沖ノ島そして比良の山並みが望め、幽玄な雰囲気だったよ。でもねえ、休暇村はお年寄りの方々で満杯だったし、近江八幡の八幡堀界隈も観光客で賑わってたけど、高齢者が大半で、高齢化時代を実感した。
実は文化財保護法が改正されて、史跡名勝天然記念物以外に「重要文化的景観」という制度が誕生した【10】。ボクらが行った前々日にその第一号として「近江八幡の水郷」が文化審議会で答申されたんだ。

Aさん―へえ、いいなあ。フナ寿司食べたんでしょう?
【10】 文化財保護法「重要文化的景観」と、近江八幡の水郷
「重要文化的景観に係る選定の基準及び届出書等に関する規則」に関するパブリックコメント(意見提出手続)の実施について(平成17年3月2日、文化庁文化財部記念物課)
水の郷百選「滋賀県近江八幡市」

H教授―へへ、珍味だったよ。
で、翌日がエクスカーションで、京都御所の中を参観させてもらったんだ。
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