環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第36講 「本時評の2年半を振り返る(その4)付:2005年環境十大ニュース」
第35講 「本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他」
第34講 「本時評の2年半を振り返る(その2)付:メディアの傲慢その他」
第33講 「本時評の2年半を振り返る(その1)付:コウノトリ放鳥その他」
第32講 「ミニミニアセスへの挑戦」
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No. 第35講 「本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他」
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Issued: 2005.12.01
H教授の環境行政時評 (第35講 その4)
Aさん―次、22講です。

Aさん―昨年は異常気象で各地に台風や豪雨の自然災害が起きましたが、10月は台風23号が襲来、兵庫県豊岡市などで堤防が決壊して大被害、そして中越地震と大災害がつづきました。こういう天災時に家屋を失った人たちに復興支援金を送るのは国家の責務だと吼えてましたね。
そしてこうした異常気象のなかでツキノワグマが人里に出没する事件が相次ぎました。この原因、遠因、給餌の是非などについて論じてくれました。そのあと総合治水という考え方を紹介してくれました。

H教授―でも、手厳しいご批判もあった。
第22講の中で、以下の文章は、問題ありと考えます。*が私の意見です。
1頁
H教授―あるNGOが市民に呼びかけ、都会のドングリを集めて山に戻そうとしたみたいだ。
*「都会のドングリを集めて」は「山に戻す」ではなく、「山に持ち込む」ではないでしょうか。「野生生物の餌付けを行ってはならない」という原則と合わせ、結果的に野生生物の生存を危機に追いやり、クマを銃殺に追いやる行為であるから、多くの人々が反対したはずです。このあたりは、きちんと書いてください。
2頁
山に広葉樹を植えて侵食を抑えるとともに保水力を高め、都市や町の舗装を透水性にして雨水を地下浸透させたり、それに山に広葉樹を植えることは保水力アップだけでなく、炭酸ガスの吸収源にもなって、温暖化対策になる。クマのためにもいいと思うよ。
*何との比較で言っておられるのでしょうか?ハゲ山と比較するような場所は、現在の日本にはほとんど無いはずです。広葉樹のみが侵食を抑え、保水力を増加させるという事実は何処にもありません。明治以来、多くの比較実験が行われ、ことごとく失敗しています。崩壊、保水力というのは土壌の厚さ、性質の問題であって、植生は、土壌の保持に関係しています。
*温暖化対策も同様で、成長の良い針葉樹造林地の二酸化炭素吸収量が多いという説と同様の間違いと言えるでしょう。(http://www.ffpri-skk.affrc.go.jp/co2/index.html 参照)。また、「炭酸ガス」という呼称は、現在は用いられません

Aさん―前段はご指摘どおりですね。後段はコトバ足らずで、「放置林化した人工林をそのままにせずに手入れして針広混交林などに」という意味だとお応えし、もう少し調べてからきちんと書くとおっしゃってましたよね。

H教授―忘れてました。ゴメンなさい。

Aさん―そのあとロシアがようやく京都議定書の批准を決めたことに言及、ちょうど米国大統領選たけなわの頃でした。また、関西水俣病訴訟では国敗訴の最高裁判決が出たんですけど、水俣病の歴史と教訓を振り返りました。

H教授―でも、未だに環境省は水俣病の認定基準は変えてないみたいだ。ダブルスタンダードといわれても仕方がないね。

Aさん―あとは混迷する廃棄物問題をさらっと触れたあと、共著の宣伝。共著たってセンセイが書いたのは序文だけだったんですけどね。
そして、いよいよ去年の今ごろ、ちょうど一年前の第23講です。

Aさん―ブッシュさんが再選されてだいぶふくれてましたね。そのうっぷん晴らしか、環境省の環境税の提案に対してもシビアで、道路特会をガラポンしろとか言ってました。結局またもや先送りになりましたけど、一年後思わぬ形で道路特会の話が出てきました。
そして話題の三位一体改革について手厳しい批判。“惨身痛い改革”だなんて言ってました。日頃は地方主権論者だとかおっしゃってたのに。

H教授―仕方ないだろう。官邸・財務省は財政の論理からの地方切り捨てが見え見えだったし、自主財源がほしいっていう地方側も開発の論理を丸出し。そんな中で、環境が犠牲になるのは目に見えてたもの。
ただ、このときは党内力学から中途半端に終わり、いくつかの補助金は切られたものの、ごみ処理施設は交付金という形で延命。
勢いにのったコイズミさんが今年はどこまでやるかだね。

Aさん―センセイの評価は?

H教授―道路特会のガラポンはいいことだけど、あとのものは、やはりネガテイブなもののほうが多いなあ。郵政民営化会社の社長に民間人を登用したって評判になったけど、元銀行頭取なんて特権官僚など比べ物にならないほどのカネと権限を持った人たちだぜ。

Aさん―はいはい、そういう話はその程度でおしまい。で、メインディッシュは国立公園と地方分権の話。レンジャーとしての自己史を振り返って国立公園は国、県、市町村、住民など関係者すべてでつくっていく「くに=country」の公園なのに、国=環境省だけが管理するという誤った地方分権論が、国立公園をガタガタにしてしまうんじゃないかと嘆いておられました。
それから環境ホルモンについては前提になる低用量仮説自体が学会では否定的だと第16講で言ったばかりなのに、低用量仮説を裏付けるかのようなTV放映に目をシロクロ。研究者はコメントを発表しろと喚いていました。
H教授―さっそく琉球大学の山口先生がお便りをくださって、23講に載せさせてもらった。最後で中西準子先生の著書に対する疑問を述べた。
これに対しては、
「従来の環境行政には、環境リスクに対する費用対効果の視点が薄い。」と言う批判は的を得ているとしても、費用対効果からのみ環境リスクを論ずることの方がよりリスキーであると思っており、H教授の中西批判は全面的に支持したい。とくに中西先生の発言に誰が喜んでいるのかと考えると、昔の中西先生を知るものには悲しくさびしいものがある。
──というお便りがあった。
だけど、実はぼくの批判というか疑問は誤読だったことが先生のホームページ【16】を読んでて判明しちゃった。ただ、同じようなお便りが中西先生のところに多数寄せられたそうだから、誤読した人がたくさんいたみたいだ。

Aさん―ふう、やっとこれで去年の分が終了。そしてわれわれも今年はお役ゴメンですね。

H教授―連載の都合上はね。実際には年末にもう一回あるけどね。

Aさん―クリスマスのときはやめてくださいよ。アタシャ、今年こそ素晴らしいイブを...。

H教授―(遮って)去年も最初はそう言ってて、結局行くところがないからイブの日に漫才したんじゃないか。

Aさん―(赤面)...。
【16】 中西先生の生態系リスク論を誤読
第24講(その4) 読者のお便り&訂正


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(平成17年11月25日執筆、同月末日編集了)
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