環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第38講「文明崩壊」を読む
第37講 「新春呆談」
第36講 「本時評の2年半を振り返る(その4)付:2005年環境十大ニュース」
第35講 「本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他」
第34講 「本時評の2年半を振り返る(その2)付:メディアの傲慢その他」
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No. 第37講 「新春呆談」
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Issued: 2006.02.02
H教授の環境行政時評 (第37講 その2)
またまたアスベスト
H教授―う、見られてたのか...。
あとはアスベスト新法と関連法改正、そしてアスベスト騒動の行方だね。新法は今国会で決まるだろうし、建築基準法、労働安全衛生法、大気汚染防止法などの改正もなされるだろうけど、今、建材などで蓄積しているアスベストの始末をどうつけるかだ【12】
地方自治体じゃ、公共の建物で含アスベスト建材を使っていることが発覚すれば、片っ端から封じ込めて、次々と撤去していく方針らしい。そのコストは膨大なものになるよ。民間もそれに追随するとなれば、そもそも廃棄物処理ができなくなる恐れさえある。

Aさん―どうしてですか。

H教授―アスベストの累積使用量は1,000万トンくらいになるんじゃないかな。建材として使われたものでは、すでに取り壊したものもあるだろうけど、かなりの部分は未だに建物中に蓄積されていると思う。加えて、建材以外にも使われている。
撤去した吹付けアスベストは、特別管理産業廃棄物ということになって処理が大変だ。
だが、アスベストはそれ以外にスレートなどに混入されていることが多い。今までは、そうした含アスベスト建材は減量のため破砕してから安定型処分場に捨ててていたんだけど、飛散防止のため破砕ができなくなっちゃった。アスベスト量の何倍、何十倍にもなるというので、処分場が一挙にパンクしそうなんだ。高温で溶融処理するという方法もあるけど、コストがかかるし、エネルギー消費も莫大なものになっちゃうからなあ。

Aさん―どうすればいいんですか。

H教授―何度も言うけど、今の被害は遠い過去のアスベスト曝露のせいなんだ。
だけど現在のアスベスト濃度は十分に低いから、含アスベスト建材から放出される量は、ほとんどの場合無視し得るものだ。耐用年数が来て解体する場合は厳重にしなくちゃいけないけど、含アスベスト建材だからという理由だけで直ちに封じ込めたり、取り壊したりするのが、そもそもナンセンスだと思うし、解体時にはどんなに慎重にやったってある程度は飛散するだろうから、かえってリスクが大きいと思うな。
そういうことをきちんと説明せずに、すぐ「封じ込め」「解体」ということになれば、そんなにリスクが大きいのかと余計に心配されて、民間の方もそれに追随する恐れがなきにしもあらずだ。
つい先日、下関駅が全焼しただろう? あれだって、もしアスベストを使用していればそう簡単には燃えなかったはずだ。リスクとベネフィットをこういう時こそ、きちんと考量しなきゃいけないと思うな。

Aさん―ところで第31講から毎回のようにアスベストを論じていますけど、読者の反応はどうなんですか?
【12】 アスベスト騒動、新法の制定と関連法の改正など
アスベスト問題に係る政府の対策について[環境省]
アスベスト問題に関する関係閣僚による会合[首相官邸]
アスベスト(石綿)情報[厚生労働省]
「石綿による健康被害の救済に関する法律案」について(平成18年1月20日 環境省報道発表)
アスベスト問題による大気汚染防止法等の改正について
 「石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律案」について(平成18年1月20日 環境省報道発表)
アスベスト騒動に関する、本講でのこれまでの記述:
 アスベストのすべて[第31講]
アスベスト最前線[第35講(その2)]

H教授―3〜40通のお便りがあったよ。「2人の会話の中で私が疑問に思っていることが全て書いてあってとても分かりやすかったです」、「おもしろいし、環境問題素人の私にもわかりやすく読めました。H教授、長生きしてください(激励!)」「アスベスト問題は多くの死亡者が出ていること今後の長期にわたる対策が必要なことからこのような分かりやすい情報提供は貴重と思量します。」というように概ね好評だった。
それから、
アスベストに関して今の会社でもやっており教授と同じような思いでいます。担当では無いのですがこの問題発生により事業として早急に立ち上がりました。精度や教育が不十分なまま仕事だけが山のように来ています。このまま行って某建築士のような問題が起こらなければ良いのですが・・・・心配してるし、そんな会社が嫌になってます。環境大気は特に方法的には簡便ですので手を付ける会社が多いのではないかと思います、ただ結局、職人技のような部分もあり精度という面では難しく、お客様への心遣いなど人間味も出てしまいますのでどうしても・・・・そこに住む人々のことを考えると・・・・実際、自分の近所のアスベスト測定なんかがあったら自分で確かめないと不安ですよ。
思いつくまま、書いてしまい読みにくい点もございましょうがご了承くださいm(_ _)m」
──というのもあった。

Aさん―へえ、大好評じゃないですか。

H教授―う〜ん、酷評も2通あった。1通は、
H教授自身の経験をふまえての記事は大変興味深く拝読させていただいたが、現場の杜撰な使用、管理状況についてどこまで把握しているか疑問を感じた。また、弁明じみた発言もあって不快に感じた。
──というもの。どのあたりが弁明じみていたのかなあ。

Aさん―もう一通は?

H教授―これはキョーレツだよ。
今回のアスベスト問題に興味があってH教授を見るのは2回目です。1回目は最初のときで、客観性に欠けるコメントが多いと思いそれからは見ておりませんでした。工場排気の石綿濃度について、82年〜83年の頃には除外施設がついており、集塵されていたとのくだりがありますが、現実には窓などを開いた状態で操業していたでしょうし工場近隣に高濃度のアスベストが流れていたこともあったと想像が容易です。また、現在の敷地上の石綿濃度規制値は10本とのことですが、大人の安静時の呼吸量は8L/分とすると11,520L/日で、1日111,520本のアスベストを吸入することになります。この2点から、H教授の国側的立場で偏ったコメントをされており、これから日本を背負って立つ働き盛りの日本人がばたばたと石綿で死んでいくとも限らない状況を許して良いと言っている本稿は如何なものでしょうか。ご自身に責任のある事柄になると歯切れが悪くなるのですね。公共性のある行政時評には不向きのようですからご担当を変わられては如何でしょうか
環境カウンセラーをされている方のお便りだ。

Aさん―ひゃあ、イエローカードどころか、レッドカードですね。
センセイ、国側的立場にいるんですって(笑)。

H教授―(苦笑)まあ、お便りの当否は読者の判断に委ねよう。でもボクは現在の環境中濃度でこれからの、つまり数十年先の日本人が相変わらずバタバタと石綿で死んでいくなんてことは到底信じられないし、こういう言説こそが問題だと思うけどね。
ところで、話は変わって、ダイオキシンの一般環境中濃度はppt(一兆分の一)どころかppq(千兆分の一)オーダーの超超微量で、ふつうは測定限界をはるかに下回っているんだ。ところが、こんな超超微量でも、1リットルの空気中にあるダイオキシン分子の数を計算すると、結構な数になるという話を、以前、安井至先生(現・国連大学)のホームページで読んだことがあった【13】。もちろん安井先生は、「だからダイオキシンは危ないんだ」という文脈で言われたわけじゃなく、むしろその逆なんだけど、ちょっとそれを思い出したな。
ちなみにアスベストの数は5ミクロン以上の長さの繊維の数で測ってるんだけど、5ミクロン未満の微小繊維の数も含めれば、もう一桁か二桁増えるだろう。
でも、空気は吸うだけじゃなくて同量吐き出すから、ほとんどがそのまま吐き出されて、肺に突き刺さるのはごくごく一部だということ、そしてWHO【14】が1986年に出したコメントでは「世界の都市部ではおおむね1リットル中1本から10本で、その危険性は検出できないほど小さい」としたことも付け加えておこう。
もちろん、一般環境中のアスベスト濃度を現在の100分の1だとか1,000分の1にできれば言うことはないけど、それがどうすれば可能になるのか、ボクには見当もつかない。

Aさん―まあ、まあ、そうムキにならないで。
他にはなにかありますか?
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【13】 空気中のダイオキシン分子数
高校の先生のために書いたマイナスイオン 08.31.2003)[市民のための環境学ガイド]
【14】 WHO(世界保健機関/World Health Organization)
WHOのホームページ
容器リ法見直し決着!

H教授―これも今朝新聞で見たばかりのホヤホヤの話だ。詳しい内容はまだ知らないけど、容器リ法見直しの決着がついたらしい。環境省、経産省が中環審、産構審の合同部会に出した報告書が了承されて、部会の最終報告書となったみたいだ【15】。自治体と産業界の現行の費用負担割合を見直す話は最後までもつれたらしいが、結局、事業者の負担する再商品化費用の余剰分を両者で折半することで決着がついたようだ。またレジ袋有料化については直接的な法制化は断念して、事業者に発生抑制などの取り組みの実施状況に関する報告の提出を義務付けるのと、そのための指針のようなもののなかで、量販店での有料化を指導するみたいだ。一方、ペットボトルの中国流出問題は、結局これという具体的な解決策は見つからず、新たな仕組みの導入はないようだ【16】
そういう意味では、ささやかな手直しをしたというに留まってるね。
やはり個別法をちょこちょこ手直しするだけでなく、拡大生産者責任を正面から打ち出す抜本的な廃棄物・リサイクル法制の見直し、そしてそれをサポートする税制改正が必要だと思うな。

Aさん―それがやりたくてもできないからこそ、環境省も悩んでいるんじゃないんですか。「色男、金と力はなかりけり」、ですもんね。
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【15】 容器リ法の見直しに関する中環審・産構審合同部会と、最終報告書案
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会(第41回)、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会容器包装リサイクルWG(第36回)合同会合(第10回)議事要旨・資料[環境省]
「容器包装リサイクル制度見直しに係る最終取りまとめ(案)」に関する意見募集について(平成18年1月24日 環境省報道発表)
「容器包装リサイクル制度見直しに係る最終取りまとめ(案)」に関する意見募集について[平成18年1月24日 環境省パブリックコメント]
【16】 ペットボトルの中国流出問題
ペットボトルの中国流出[第30講(その2)]
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