環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第37講 「新春呆談」
第36講 「本時評の2年半を振り返る(その4)付:2005年環境十大ニュース」
第35講 「本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他」
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No. 第37講 「新春呆談」
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Issued: 2006.02.02
H教授の環境行政時評 (第37講 その3)
来年度予算案と環境政策の新たな動向

Aさん―ところで、来年度予算案はどうなったんですか?

H教授―来年度の政府予算案では廃棄物の交付金制度はなんとか維持できたようだけど、14%カットされるなどで、環境省予算は一般会計ベースでは対前年度で6%カットの2,207億円となった【17】
アスベストのほうは補正予算で各省分すべて合わせると1,805億円だそうだ。

Aさん―なにか目新しいものはありますか。

H教授―来年度予算案では「水環境保全施策枠組み再構築事業」が新規に計上された【18】。以前言ったように【19】BODCODに代わる新しい水質指標・基準の設定に正面から取り組むみたいだ。
実行ベースではすでに国立環境研究所の研究者を巻き込んでの勉強会が動いているみたいだし、単に予算獲得・消化というのでなくて、本気で取り組むようだ。結果がどうなるかは、わからないけどね。

Aさん―大気の方はどうですか。

H教授―予算面ではヒートアイランド対策でクールシティ推進事業が大幅に増額された【20】けど、ま、ヒートアイランドの抜本対策を省庁の枠を取っ払ってやる覚悟があるかどうかだね。それこそヒートアイランド防止法でも考えりゃいいと思うんだけど【21】、まだまるで聞こえてこない。
あとはVOC規制がどの程度円滑に動き出すかだね【22】

Aさん―他には、水俣病関連で新しい動きが新聞に載ってましたね。

H教授―水俣病に関わってきた医師や弁護士が、統一した診断基準を3月までに作成するという記事だね。年明け早々に第一回会合を開いたらしい。水俣病の判断基準のダブルスタンダート状態【23】を解消させるため、環境省に揺さぶりをかけようとしているんだろうけど、環境省サイドの反応がみものだね。

Aさん自然保護関係はなにかありましたか。

H教授特定外来生物の第二次指定が昨年12月に公布され、この2月1日に指定される予定だ【24】。有名なやつではウシガエルが入ってたな。
でもなあ、ウシガエルにしてもアメリカザリガニにしても、どうしてもっとポピュラーな食材にならないのかなあ。どちらも食ったことあるけど、なかなかいける味だったぜ。スーパーなんかで売り出せばいいのに。
【17】 平成18年度環境省予算案
平成18年度環境省予算(案)主要新規事項等の概要[環境省(平成17年12月)]
【18】 水環境保全施策枠組み再構築事業
平成18年度環境省予算(案)主要新規事項等の概要[環境省]
【19】 BODやCODに代わる新しい水質指標・基準の設定について
有機汚濁指標―COD、BOD[第28講(その3)]
その他の有機汚濁指標[第28講(その4)]
【20】 クールシティ推進事業
平成18年度環境省予算(案)主要新規事項等の概要[環境省]
【21】 ヒートアイランド対策
ヒートアイランド対策[第13講(その2)]
【22】 VOC規制について
VOC規制導入![第15講(その4)]
【23】 水俣病について
時評4 ─水俣病関西訴訟最高裁判決[第22講(その3)]
水俣病新救済策発表[第28講(その1)]
【24】 特定外来生物について
第2次指定特定外来生物[環境省]
バスに乗り遅れるな ──特定外来生物ドタバタ劇[第25講(その4)]

Aさん―イヤー! 気持ち悪い。

H教授―あとセイヨウオオマルハナバチについてもいよいよ指定に向けて動き出したようで、パブコメを開始した【25】

Aさん―それってなんですか?

H教授―施設園芸で主にトマトの受粉に利用されている外来の蜂だ。ハウス(温室)の中に放すんだけど、一般環境に出ていって、在来種のマルハナバチを圧迫している。雑種ができたりすると懸念されてもいるようだ。
現実に農家で使われているので、特定外来生物の指定に反対の声もあって、これまで指定を見送ってきたんだ。弱腰だと批判もあったんだけど、それは一定の周知というか準備期間が必要だという判断だったんだろうな。

Aさん―小笠原を世界自然遺産にという話もあるそうじゃないですか。

H教授―環境省のホームページには出てなかったけど、先日の新聞に出ていたね。年内に地元調整を終え、来年にもユネスコに推薦する方針だそうだ。

Aさん―地元調整って、やはり反対があるんですか。

H教授―いや、特に反対運動があるとは聞いていないが、どの島を遺産地域にしたいのか不明だし、民有地もあるからなあ。それに空港問題だって、決着がついていない。
あと、小笠原はもっと大きな問題を抱えている。外来種がめったやたら多いんだ。一番の問題はそれをどうするかだろうな。
平成15年に環境省と林野庁が合同で設置した遺産地域の候補地検討委員会【26】でも、3つの候補地の一つとされたんだけど、「外来種対策が緊急に必要」と特にコメントが付けられたくらいだ。
【25】 セイヨウオオマルハナバチの特定外来生物指定について
セイヨウオオマルハナバチの特定外来生物への指定等に係る意見の募集(パブリックコメント)について[平成18年1月11日 環境省パブリックコメント]
セイヨウオオマルハナバチの特定外来生物への指定等に係る意見の募集(パブリックコメント)について(平成18年1月11日 環境省報道発表)
外来生物法[環境省]
【26】 世界自然遺産候補地検討会(環境省・林野庁)
世界自然遺産候補地に関する検討会[環境省]
「世界自然遺産候補地に関する検討会」について[平成15年2月21日 環境省報道発表]
世界自然遺産への候補地[林野庁]
小笠原諸島の世界自然遺産登録に向けて[東京都]

Aさん―そんなに外来種が多いんですか。

H教授―もう25年くらい前になるけど、ぼくが小笠原に行った時も外来種の大きなマイマイ(アフリカマイマイ)が至るところにいたし、遺棄されて野生化したヤギも多かった。植物でも結構、外来種が多いらしいんだ。
最近の話では、なぜかアフリカマイマイはほとんど見られなくなったようだけど、さらにそれより悪玉の外来種が話題になっているらしい。グリーンアノールという20cmくらいになるトカゲで、これが貴重な小笠原固有種を食べまくっているそうだ。オガサワラシジミなどは絶滅寸前だという話も聞いているよ【27】。小笠原じゃ、アオウミガメを保護、放流する一方で、アオウミガメを使った料理を出しているんだけど、捕獲したヤギやグリーンアノールなんかも名物料理にしちゃえばいいと思うけどね。

Aさん―さっきのウシガエル、ザリガニもそうなんですけど、センセイ、よっぽど悪食なんですね。

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【27】 小笠原の外来種問題
オガサワラシジミ:シジミ蝶の仲間で、日本固有種。開発等により分布域を狭め、近年はグリーンアノールの捕食などの影響で、絶滅寸前もしくは日本初の絶滅チョウとなった可能性も指摘される。1968年に国の天然記念物に指定され、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧I類とされる。
外来生物・グリーンアノールの影響について[環境省 外来生物法]
小笠原プロジェクト「侵略的外来種グリーンアノールの食害により破壊された昆虫相の回復に関する研究」[独立行政法人 森林総合研究所]
絶滅に瀕する主な森林性チョウ類[日本チョウ類保全ネットワーク]
「小笠原の固有昆虫は今」[自然科学のとびら(Vol.8, No.3 神奈川県立生命の星・地球博物館 Sept.,2002)]
空港、食う幸
Aさん―ところで小笠原の空港建設の方はどうなんですか。

H教授―あれも石垣空港と同じで二転三転している【28】
当初は無人の兄島で計画していて、そのために国立公園指定時に予定地を特別地域から外していたんだけど、自然保護の世論が高まるとついに断念して、父島の山地部の国立公園の特別地域内に予定地を変更。その後、ここも保護問題から断念した。現在は山麓の軍用機飛行場跡など、自然保護上の問題が少ないところを考えているみたいだ。
小型の旅客用飛行機を就航して、伊豆諸島のどこかで中継してくるとか、小型でも航続距離の長い機種を選定して、短い滑走路の飛行場を造ればいいと思うんだけどね。

Aさん―なんで、そういう選択をしないんですか?

H教授―さあ。ただ、名機と言われていた国産の小型旅客機「YS11」も、今や製造されなくなっているのに加えて、観光需要を満たすにはある程度の大型の飛行機の就航が望まれるんじゃないかな。
でも、観光のために自然環境を破壊するのは止めるべきだ。住んでいる人たちのことを第一義にした航空路線が開設できればいいと思うんだけどね。数十時間の船旅も乙なものだけど、住民にしてみたら定期航空便は悲願だろうからな。

Aさん―今、その話はどこまで進んでるんですか? 石垣空港の方はもうアセスも終わったって聞いていますが。

H教授―さあ、知らない。今度聞いてみるよ。
しかし空港問題はどこも大変だな。反対を押し切ってつくった神戸空港は2月開港だけど【29】、どうも当初の予想──というより願望──通りにはならず、大赤字になる気配が濃厚だし、辺野古の話も自治体から新しい案が出てきていて、多分、新市長もその話に乗りそうだ。
今造っている静岡空港だって、閑古鳥が鳴くんじゃないかなあ。
税金がムダに使われ、空港ならぬ、<食う幸>にならなけりゃいいけどね。
【28】 石垣空港問題
新石垣空港をめぐって[第17講(その1)]

Aさん―なんか今日は言いたい放題ですね。

H教授―うん。今日、新春放談だもん。

Aさん―えー、センセイ、まだ気分は正月なんですか。

H教授―今度の日曜(29日)が旧正月だから、それが終わるまではいいじゃないか。

Aさん─ホント、オメデタイ人ですね。“放談”じゃなくて、“呆談”ですよ。
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【29】 神戸空港開港
コーベ空港・断章[第6講(その4)]
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